第117話 従弟妹達とのふれあい
「か、可愛いぃぃぃぃ」
幼い従弟妹達にシュレリーは思わず叫んでしまった。
「気持ちはわかるけど、落ち着きなさいシュレリー」
リミルファもシュレリーと同じく可愛いと叫びそうになったが、娘が先に叫んでいたので、何とかこらえシュレリーを窘めることができた。
「ああ、そっか、ごめんね」
「はははっ」
シュレリーの様子にキルスは思わず笑みがこぼれた。
「ね、ねぇ、キルス君」
「ん、なんだ」
「この子たち、抱きしめてもいいかな」
突然、そんな衝動に駆られたシュレリーは兄であるキルスに尋ねた。
「ふふっ、みんな、シュレリーお姉ちゃんがギュってしたいって」
ちょうどその時お茶を持ってきたエミルがキルスの代わりに応えた。
「ギュ? するー」
「ルニアもー」
「ぎゅー」
六女であるアルエを筆頭にその場にいたファーレス、ルニアが一斉にシュレリーに突撃した。
「わっ、わっ、わぁぁ」
自分から抱きしめたいと行ったシュレリーであったが、従弟妹達から来てくれたので戸惑いつつも満面の笑みで受け止めた。
「ああ、なにここ、天国?」
シュレリーの気分はまさに天にも登る気持であった。
「ふふっ、うらやましいわね」
「あははっ、シュレリーも喜んでいるみたいだな」
そんな娘の様子にこちらも微笑むリミルファとアレンであった。
「どうぞ、粗茶ですが」
「ああ、ありがとう」
「ありがとう。それにしても、ほんと、可愛いわねみんな」
「ありがとうございます。自慢の弟と妹ですから」
「そう、それで、他の子は? 遊びに行っているのかな」
「そうですね。でも……」
「もうすぐ帰ってくると思うぞ」
リミルファとアレンとしては下の4人やエミル、キルス以外の甥や姪にも会ってみたいと考えてそう質問した。
それを受けたエミルとキルスはすぐに帰ってくるという、どういうことかと2人が首を傾げていると。
「ただいまー」
「ほらな」
ちょうどよく帰ってきたようだ。
「どうして、わかったんだ」
なぜ、帰ってくるのがわかったのか、エミルならまだしも、自分たちと一緒だったキルスではわからないはずだと不思議に思ったアレンはキルスに尋ねた。
「ああ、やっぱり、気が付かなかったか」
「?」
キルスの発言にますます首を傾げるアレンとリミルファであった。
「ロイタだよ。俺たちが帰ってきたとき、食堂にいたんだ。っで、ロイタが知らせに行ったんだよ」
「ロイタ君、あれっ? 居た?」
キルスの発言にリミルファは少し前のことを思い出そうとしたが、そこにレティアとサーラン以外はいなかったと思った。
「えっと、いなかったと思うけど……それに、やっぱりって、どういうことだ」
アレンもまた、同じくわからなかった。
「それは、ロイタの特殊能力? みたいなもので、ロイタはとにかく、存在感がないっていうか、気配がないんだ。俺と母さんでも、時々ロイタがどこにいるのかわからなくなるからなぁ」
キルスは時々突然現れる弟を思いながらしみじみとそういった。
「気配がない、それと、姉さんが気が付かないって、それって」
「相当よね」
アレンとリミルファはレティアが相当な強さと気配察知能力があることを知っている。そのうえで気が付けないロイタの能力に衝撃を受けたようであった。
「俺と母さんは、ロイタがそういう奴だってわかっているから、気が付けるけど知らない2人が気が付かないのは当然だとおもう」
「あ、みんなずるい、キャシアもー」
「ミレアも」
キルスとリミルファ、アレンがそんな会話をしていると、リビングにやって来たキャシアとミレアが下の3人がシュレリーに抱きついているのを見て、自分たちもと突撃した。
「わぁ、わぁ」
突然抱きしめる相手が増えたシュレリーは驚きながらも、かなり嬉しそうにしていた。
その後、四男ロークと五男オーレルが帰ってきて、一瞬自分たちもシュレリーに抱きつこうかと考えるも、恥ずかしさやすでにシュレリーがうまっているのを考えやめることにした。
「ただいま、姉さん、キルス兄さん帰って来たって、あっ、えっと、初めまして、その、次女のキレルです」
最後にロイタと一緒に帰ってきたキレルがリビングに駆けこんできたところで、不意にアレンとリミルファに気が付き、慌てて2人に挨拶をした。
「ええ、初めまして、えっと、キレルちゃん、リミルファよ、よろしくね」
「アレンだ、君のお母さんの弟だよ。よろしく」
キレルに対して微笑みつつ、2人は笑顔で挨拶を返したのであった。
こうして、キルス兄弟が全員揃い、その後リビングへとやって来たレティアと、サーランを抱いたレーラとコルスが集まったところでエミルの号令によりそれぞれが順番に並び自己紹介をしていくことになった。
その1人1人の自己紹介を5人は満面の笑みで受けるのであった。




