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第114話 招待

 コルネリとキルスの模擬戦の翌日。

 キルスとコルス一家は出かけようとしていた。


「忘れ物ない?」

「うん、大丈夫」

「レーラ戸締りをしておけよ」

「わかってるわ」

「ちょっと、トイレ」


 リミルファが忘れ物の有無を確認し、それにシュレリーが周囲や自分の手持ちを確認してから応え、コルスがレーラに指示し、それに答えるレーラ、アレンは緊張しているのか、これから出かけるというのに最後にトイレに行くといって再び家の中に入っていく。

 なんとも、騒がしいことであるが、こればっかりは仕方ない。何せ、今日から約2週間ほど、コルス一家は初めての家族旅行をする。

 以前にも語ったがこの世界において旅行というものは難しい、何せ街から一歩でも出ればそこは魔物が闊歩する危険地帯、そのような場所に戦闘力がないものが出るのは自殺行為、また、移動の際に使う馬車などの値段も高額となるために普通は生まれた町から一生出ることなく過ごすことも当たり前の世界なのだ。

 そんな、コルス一家がどこに向かうのか、それは言うまでもなくキルスの故郷、バイドルである。


「お父さん。行くよ」

「まって、今行く」


 ようやくトイレから帰ってきたアレンに対して焦れた様子でそういったのはシュレリーである。


 シュレリーとしては、少しでも早く可愛い従弟妹達に会いたいのであった。


「ふぅ、ごめんごめん、じゃぁ、行こうか」


 全員がそろったところでいよいよ出発であった。


 そうして、街を全員で歩き、6人はついにトーライドの街をでるのである。


「うーん、緊張するなぁ」


 早く従弟妹達に会いたいと思うも、初めて街を出たことで緊張を隠せないシュレリーだった。


「そうね。お母さんも、初めてだからちょっと怖いわね」

「大丈夫よ。何があっても、私たちがまもってあげるから」


 普段と違い冒険者としての装備を身に付けているレーラが怖がる孫と嫁を勇気づけた。


「そうだね。いざとなれば、俺も闘うから、大丈夫だよ」

「いや、アレンでは、無理だろう」


 気合を入れている息子の出鼻をくじくコルスだった。


「あははっ、じゃぁ、行くよ」


 がっくりと肩を落とす叔父を苦笑いしながら見つつ、キルスは街道を歩き始めた。


「へぇ、街の外って、こうなっているのね」

「あら、あそこの花、綺麗ね」


 少し歩いたところで、緊張もほぐれてきたのかリミルファとシュレリー母娘が周囲を見て嬉しそうにしていた。


「キルス、どのあたりまで行くんだ」

「ああ、あそこを抜けたところにいい空き地があるから、そこでシルヴァ―に戻ってもらうつもりだよ」


 ということで、キルスたち一行は、街道からはずれ森の中に入っていく、すると、少ししたところで木々が終わり草原となった。


「わぁ、こんなところがあるんだ」

「ほんとだねぇ」

「シルヴァ―、頼む」

「バ、バウン」


 キルスが縮小化スキルを解くようにシルヴァ―に指示を出すと、シルヴァ―は嬉しそうに一吠えして、縮小化スキルを解除、元の大きさに戻った。


「うわぁ」

「……おっきい」

「これほどまでとは」

「……」


 シルヴァ―の本来の大きさとなったことで、コルス一家は口々に驚いた。


「まぁ、乗ってくれ、といっても、叔父さんと叔母さん、シュレリーは無理だろうから、俺と爺ちゃんと婆ちゃんで運ぶしかないけど」

「そうだな。では、リミルファはレーラが運んであげると良い」

「ええ、そうね」

「お願いしますお義母さん」

「任せて」

「それで、あとはアレンとシュレリーだが、アレンは、俺が運んだ方がいいか」


 コルスとしても息子より、孫娘を抱えた方がいいし、アレンも父親に運ばれるのはちょっと嫌なものがある。しかし、だからといって、さすがに母親はないし、甥であるキルスに頼むのも気が引ける。ということでコルスしかないのである。

 ということで結果、シュレリーはキルスが抱えることとなった。


「それじゃ、シュレリーしっかり捕まってろよ」

「う、うん、お願い」


 シュレリーをいわゆるお姫様抱っこに抱えたキルス、それに抱きつくシュレリー、それにより、キルスの顔面には柔らかい感触が押し当てられるが、悲しいかな従姉相手であるために、少々顔を赤らめるだけのキルスであった。


 こうして、無事6人がシルヴァ―の背に乗ると、シルヴァ―は空駆けのスキルを用いて空に飛び上がった。


「わぁ、たかーい」

「あわわぁ」


 初めての空に感動するシュレリーにたいして、リミルファは祈っていた。

 これは、やはり、シュレリーにはレティア同様、コルスとレーラという元冒険者の血が流れているからだろうか、実際アレンも感動していた。

 一方で、リミルファは、兄が冒険者ギルドのギルマスではあるが、普通の女性とあって、空を怖がっている。



 こうして、旅立った6人と1匹は、テントが人数分ないことや、アレン親子が揃って旅慣れていないことを加味して、街に泊まりながらのものとなった。

 それでも、ちょうどいいタイミングで街が配置されていたことや、シルヴァ―が頑張ったことで、予定より少し早めの3日目の午前中にはバイドルを眼下に収めるまでになった。


「あっ、ねぇ、あれが、バイドル」

「ああ、そうそう、俺の故郷だよ」

「へぇ、なんか、可愛い街だね」

「まぁ、小さい街だからね」


 シュレリーが可愛いと表現したのは、彼女の故郷トーライドに比べると半分にも満たない大きさしかないからである。

 それはそうだろう、トーライドは領都だが、バイドルは地方の小さな街でしかないのだから。


 それから、少しして、シルヴァ―はいつの物ように町近くの空き地に降り立った。


「ここからは、歩くから」

「ええ、もう慣れたわ」

「そうだね」

「うん、早くみんなに会いたいなぁ」


 この3日で旅に慣れたアレン親子は意気揚々と歩き出した。

 そうして、ついに6人と1匹はバイドルにたどり着いたのであった。

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