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第110話 緊急対策会議

 スキルの種類は能力系ののものと技術系のものに大別される。


 まず、能力系のスキルというのは、キルスの持つ翻訳スキルや鑑定スキル、以前出会ったカテリアーナが持っているような占いスキルのように、特殊な能力を得られるスキルのことだ。

 一方、今回の話題に上がっている技術系のスキルは、剣術、格闘術、槍術といったような戦闘技術、鍛冶、料理、といった職人技術となる。

 ちなみに、キルスは剣術スキルを獲得しているし、ファルコやオルクは料理スキルを獲得している。


 そうして、これらのスキルの習得方法は、能力系であれば、ある条件をクリアすることで発現する。

 例えば、翻訳スキルは、3つの言語の習得と5つの言語を学ぶという条件があり、キルスはこの世界でトラベリン語を習得したところでこの条件を満たしたことで発現した。

 また、鑑定スキルのようにエリエルが用意したスキルの石碑というものを翻訳スキルを用いて読み解くことで習得する特殊で、強力なものもある。


 技術系スキルの習得には、とにかくその技術を研鑽し磨き続けることとある。

 つまり、剣術であれば、ひたすらに剣術を学びその訓練をし続けることで発現するのだ。

 もちろん、そのものが剣術の才能が一切無ければ、いくら訓練を重ねても習得できない場合もある。

 鍛冶などの職人技術も同じで、ひたすらに修行あるのみである。

 実際、シーブルト工房初代と2代目の主は必死の修行により、発現していた。


 そんななか、能力系にも技術系にも共通して、生まれつきそのスキルを持っている場合がある。

 それが、今回のドーロンであった。


 ドーロンは鍛冶屋の息子でありながら、鍛冶スキルを生まれつきに持つという幸運に恵まれた。

 それを受けた父グノブは大いに喜んだ。



「それで、どうするんだ」


 先ほどの男の行為は明らかな嫌がらせだ。それも営業妨害というものであった。

 キルスもそれが明らかにわかったためにドットにどうするか聞いたのだった。


「どうすると聞かれてもな。あいつは、ちゃんと修行すればいい鍛冶師になれると思うんだよなぁ」


 本来なら、あそこまでされれば警備隊に訴え出ることもできるだろう、もちろんそれで、ドーロンが逮捕されるには相当な捜査が必要になるだろう。

 今回も、結局キルスが持つ鑑定スキルで、シーブルト工房作であるということがわかっただけであったからだ。


 しかし、ドットとしては、シーブルト工房とは初代からの付き合いがあり、ドット自身も先代のグノブにはかなり世話になっている。

 そういった事情から、警備隊に訴えるというのははばかられた。


「どうしたもんかなぁ」


 ドットは悩んだ。


「んー、要は、ドーロンだっけ、そいつに自分の打った剣がなまくらだって気づかせればいいんだよな」

「ああ、そうすれば、さすがにちゃんと修行するだろうな」


 キルスのつぶやきにドットは悩みながらも応えた。

 実はそこが厄介であった。

 というのも、鍛冶のように職人スキル、最大の落とし穴が立ちふさがっているからだ。


 先にも説明したが、技術系のスキルを持っていると、修行をしていなくても表面だけは完璧なものを作ることができる。

 もし、これが剣術であれば、実際に模擬戦などをやれば、実戦経験がないためにあっという間に敗北し痛感する。

 ファルコやオルクが持っている料理であれば、食べれば味で判断できる。

 しかし、鍛冶のように素人ではものの良し悪しがわからないようなものとなるとべつだ。

 そもそも、鍛冶職人たちが自分が打ったものがいい出来か悪い出来かを判断するのは、長年修行をしてきたことによる鍛冶師の目、つまり経験則によるものとなる。

 そして、この鍛冶師の目は鍛冶スキルには宿っていない。

 ということは、ドーロンのように修行をしていない場合、その目が養われておらず、自分が打った見た目が完璧の剣を見てもそれがなまくらの張りぼてだということに気が付かないのだ。

 実に厄介な、落とし穴である。


 もちろん、グノブもそのことを幾度となくドーロンに話した。

 しかし、本人にその目がないことや、グノブが修行によって鍛冶スキルを得ていた。つまり、自分のように生まれつき持っていたわけではないことから、自分の才能に嫉妬しているからそういっているんだと判断してしまった。

 その結果、修行をサボり続けたということになる。


「となるとだ、実際に使ってみるしかないんじゃないか」


 ここで、キルスが提案をした。


「使う? どうやってだ」


 悩んでいたドットもこのキルスの提案の意味がわからず尋ねた。


「模擬戦をするんだよ。一方がドーロンが打った剣、もう一方が、そうだなぁ、見習いの剣とか?」

「模擬戦ねぇ、確かに、それならわかりやすいが、それと見習いか、悪くはないがなぁ」


 ここで、ドットは難色を示した。

 それは、一体誰がその模擬戦をするのかということだ。

 武器は自分の命を預けるものだ、もしなまくらを使い、事故でも起きた日には最悪だ。

 多少のけがで済めばいいが、最悪再起不能のけがとなる可能性もあった。

 そうなると、誰も引き受けてはくれないだろうとドットは考えた。


「まぁ、誰も引き受けないだろうけどな」


 キルスも自分で提案しておいて同じ意見であった。


「だよな」

「なんで?」


 ドットが同意したところで、ノーマが純粋な疑問として2人に尋ねた。

 ということで、キルスとドットはノーマに説明をしたわけだが、それを聞いていたシュレリーに妙案が浮かんだ。


「ねぇ、それって、中途半端な実力の人だから、危ないんだよね」

「んっ、ああ、そうだな。それなりの実力者同士でやれば、問題ないと思う」


 シュレリーの疑問にキルスが応えた。


「だったら、コルネリ兄さんなら、大丈夫でしょ」

「ああ、コルネリか」

「そうね、兄さんなら、大丈夫ね」

「コルネリ?」


 3人が出したコルネリそれがだれかキルスにはわからなかった。


「私たちの従兄で、ほら、キルス君も昨日会った、警備隊長のことよ」

「ああ、あの」


 ここでようやくキルスも誰のことかわかった。


「コルネリ兄さんはこの街一番の強さだからね」

「へぇ、強いとは思っていたけど、この街1かぁ」

「そうよ。それと、2番目はおじいちゃん、というか、コルネリ兄さんに剣を教えたのがおじいちゃんなのよ」


 どうやら、コルネリとキルスの祖父コルスは師弟の関係にあるようだ。


「なるほど、その2人に頼むってことか」

「うん、2人なら、引き受けてくれると思うわ」

「そうだろうな」

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