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第106話 手紙と提案

「……ということなの。ごめんね、キルス君」


 実家に帰るなり、シュレリーはキルスに謝った。

 というのも、夕方考えの足りない冒険者によりシルヴァ―が襲撃されるという事件が起きた。

 シュレリーはこのことを当然キルスに報告し謝罪したのである。


「ああ、なるほど、まぁ、シュレリーが気にすることじゃないって、悪いのはそいつらだろ」

「その通りだな。しかし、ギルドの厩舎にいたシルヴァ―を攻撃するなぞ、そいつら一体何を考えていたんだ」

「多分、何も考えてないんじゃない」


 コルスとレーラはシルヴァ―を攻撃した奴らをどうして教育してやろうかと怪しく笑みを浮かべている。


「まぁ、そういうことだから、シュレリーは気にすることじゃないって、それより、これでも読んで元気出してくれ」


 そういって、キルスはマジックストレージから手紙を12通取り出してシュレリーに渡した。


「手紙? どこから?」


 突然何もないところから出てきた手紙に驚愕しながらもシュレリーはキルスから手紙を受け取った。


「それに、これは?」

「それは、兄弟たちから、シュレリーにって」

「えっ、わたしに? あっ、ほんとだ……あれ?」


 キルスから自分宛と聞かされたことでシュレリーは手紙に書かれた宛名を見た。すると、そこにははっきりとシュレリーさんへとエミルの字で書かれていたのだ。

 だが、そこで新たな疑問が浮かぶ。


「どういうこと、なんでわたしの名前が書いてあるの。というか、キルス君もわたしがいること知らなかったよね。あれ、もしかしたら、知ってたの!」


 マジックストレージとマジックバックの存在を知らないシュレリーにとっては混乱するしかない事実であった。

 その様子を見た、すでにマジックストレージにつて聞いていたコルスとレーラ、リミルファはドッキリが成功したみたいに微笑んでいた。


「いや、母さんからイトコがいるかもしれないとは聞いていたけれど、本当にいるかもわからなかったよ」

「えっ、だったら、なんで?」

「その答えは、これだよ」


 そういって、キルスは腕に付いたマジックストレージを見せた。


「腕輪? えっと、それって、魔道具、よね」

「さすがはギルドの受付嬢だな。これがすぐに魔道具だってわかったんだな」

「う、うん、それで、それはどういうものなの」

「これは、マジックストレージといって……」


 キルスはマジックストレージとマジックバック、その関係性などを話した。


「……それ、ほんと?」


 シュレリーは先に聞いていたであろう祖父母と母を見た。


「信じられんかもしれないがな」

「本当であることは間違いないわね」

「お母さんたちも最初は信じられなかったけれどね。色々証明してもらったからね」

「そういうこと、それで、俺が姉さんに手紙にシュレリーのこと書いたからね。姉さんが兄弟たちを集めて手紙を書いたらしい」

「そ、そうなんだ。そうなんだね。ありがと、キルス君。わぁ、なんてかいてあるんだろう」


 キルスからの説明と、自身が信頼している祖父母や母から間違いないと説明され、ほっとしつつイトコ達からの手紙に一喜一憂するシュレリーであった。


「わぁ、見て、シュレリーお姉ちゃんへだって」

「ふふっ、そりゃぁ、あなたが一番年上だもの」


 それから、シュレリーは手紙の宛先に書いてあるお姉ちゃんという言葉を嬉しそうに母リミルファに報告するのであった。


「ただいま」


 その時、ようやくコルスとレーラの長男であり、レティアの弟、シュレリーの父アレンが帰ってきた。


「ただいま、なんか、庭に大きな狼がいるんだけど……」


 アレンは家に帰るなり庭にいるシルヴァ―を見て何だと思いながらリビングにへとやって来た。


「えっと、その子は?」


 そして、リビングでくつろいでいる見知らぬ少年、キルスを発見して妻に尋ねた。


「キルス君、レティアお義姉さんの息子さんよ」

「はっ、姉さん? ほんとに」

「本当だ。信じられんがな」


 姉の息子と聞き、アレンは真意をコルスに尋ねた。


「えっと、初めまして、叔父さん」

「う、うん、はじめまして、えっと、本当に姉さんの……」

「次男、3番目の子供になるよ」

「3番目、それはまた……」

「キルス君の兄弟は、全部で13人いるんですって」

「はっ、えっ、13!!」


 思わぬ甥の登場に驚いていたアレンに追い打ちをかけるように、シュレリーがキルスの兄弟の数を言ったためにアレンは思考停止になった。


「あら、あら」

「まぁ、気持ちはわかるな」


 そんな息子の姿をみたレーラとコルスはうなずきながら笑っていた。


「……え、えっと、キルス、君だっけ、姉さん、君のお母さんは元気なのかな」


 ようやく思考が戻ったアレンはまずレティアの安否を確認した。


「ああ、元気過ぎるぐらいだよ」

「そうだろうね。13人か、すごいね」

「まぁね。俺も多すぎると思う」

「だよね」


 その後、キルスとアレンは叔父と甥として会話を続けたのであった。


「……ああ、そうだ、叔父さんとシュレリーに相談というか提案があるんだけどいいかな」

「なに」

「なんだい」


 エミルたちからの手紙を読んでいたシュレリーはふと顔をあげてキルスを見た。


「だいだい一週間ぐらいはこの街にいるつもりだけど、そうしたら、バイドルに帰るつもりなんだけれど」

「うん」


 帰ると聞きシュレリーは心底悲しそうな顔をした。


「それで、その時みんな一緒にバイドルに来ないかっていうものなんだ」

「えっ、なんだって」

「いいの」

「もちろん。馬車だとかなりかかるけど、シルヴァ―なら3日で着けるから大丈夫だと思う、まぁ、どのくらいの期間向こうに居るかは任せるよ。帰りもここまで送るしね。ちょっと、考えてみてよ」

「わかった……えっと、あれして、……言っておけば……」


 シュレリーはさっそく休む日取りを考え始めた。


「そうだね。久しぶりに姉さんにも会いたいし、甥や姪にも会ってみたいからね。ああ、あとは、義兄さんにも会ってみたかな。考えてみるよ」


 それから、シュレリーとアレンは考え始めたのである。

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