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第100話 レティアの実家

記念すべき第100話目です。

100話記念として2本更新します。

本日1本目

 レティアの故郷にやってきていきなり捕まったキルスであったが、もちろんキルスにはとがめられることは何もないので、すぐに助け出された。

 その助けた人物は、シュレリーという冒険者受付嬢をしているありえないほどの美女であった。

 その姿に、キルスはレティアやエミルに匹敵する美女がいるんだなと思うが特にそれに見とれるということもなかった。

 最初、普段からレティアやエミルといった同様の美女の家族であるために感覚が麻痺しているのかと思った。

 しかし、それは違った。

 なにせ、シュレリーとビルドに向かう途中話をしてわかったことだが、なんとシュレリーはレティアの弟であるアレンの1人娘であったのだ。

 つまり、キルスにとっては母方の従姉ということだった。

 それがわかった後、一応という意味でキルスは自身の市民証を取り出して、自身の母親の名前の項目を見せた。

 そこには、はっきりとレティアと書かれており、ここでシュレリーもまた、キルスがレティアの息子であり、自分にとっては従弟に当たると確信した。


「従姉だったんだな。そりゃぁ、どおりで、どこかで見たことあるなぁと、思ったんだよな。そうか、姉さんや母さんによく似ているからだな」


 匹敵する美女ではなく、同じような美女であった。


「そうなの、確かにわたし、よくレティア伯母さんに似ているって言われるわ」


 キルスが従弟であるとわかった時点で、シュレリーも受付嬢としての言葉遣いから親戚のそれへといつの間にか変わっていた。


「だろうね。ほんとよく似てるよ。特に年齢も近いからだろうね。姉さんの方が似てるかな」

「へぇ、お姉さんか、キルス君のお姉さんって、年は?」


 自分によく似ているというキルスの姉エミルの年齢が気になった。それは自分より上か、それとも下かということだ。


「今19だよ、来年で20」

「へぇ、じゃぁ、わたしの1つ下かな」

「そうなんだ」


 キルスもシュレリーを見たときからそのぐらいとあたりを付けていただけに驚くことはなかった。


「他にも……ああ、ギルドについちゃったわ。後で聞かせて、ああ、後、少しえっと、20分ぐらい待っていてくれたら、休憩時間になるから、家まで案内するけど、どうする」


 家までの道順を今すぐ教えてもいいけれど、せっかく尋ねてきた従弟ともう少し話をしたいし、自ら案内したい、祖父母に紹介したいという思いからの提案であった。


「それは、助かる。それぐらいなら待つよ」

「そう、それじゃ、待っていてね」


 そういって、ギルドの中で別れたわけだが、もちろんそこには他の冒険者たちがたむろしていたわけで、その連中にとっては、シュレリーはアイドルであった。

 そのシュレリーが親し気に話す、知らない少年、しかも、ニーナのように獣人と人族ではなく人族同士となれば、嫉妬もふつふつと湧いてくるのも致し方ないことだろう。


「おい、クソガキ、てめぇ、俺のシュレリーちゃんとなに、親し気に話してんだ。おぉぅ」


 キルスを威嚇するようにいうキルスより頭1つでかい大男であった。


「おいこら、何勝手にお前のものにしてんだよ。だがよ。そのガキが気に食わねぇのは認めるぜ」


 シュレリーはレティアとエミルのようにありえない美しさを持つ、そのため冒険者たちのアイドル的な存在であった。

 そのシュレリーがなぜか見知らぬ少年と親しげに話ているのをみれば誰であろうと嫉妬していただろう。

 実際、キルスもシュレリーが従姉でなければ、同じように嫉妬の心を燃やしていただろう。だが、だからと言って、この男たちのように明らかに年下の少年に対いてこのような感情を持ったかはわからない。


「お前らには関係ないだろう」


 キルスはそっけなくそう答えた。実際に男たちには関係のない話ではあるが、ここはあえて挑発してみることにした。

 その理由は、ぶっちゃけ暇つぶしである


「てめぇ」

「このガキャァ」


 案の定男たちは挑発に乗り、キルスめがけて殴りかかってきた。

 ここで、腰の武器を抜かないあたり、ちゃんと冒険者としての自覚というものがあったのだろう。

 ギルド内での争いはギルドは関与しないが、それはあくまでも武器を使わない、死者を出さないという規則の中でのことである。

 そんな男たちの猛攻をキルスは軽やかによけ、足をかけて1人を転ばした。


「ぐわぁ」

「はっ、何してやがる。おらよ」


 キルスが転ばしたとは全く思わず、1人は自身に背を向けていたキルスめがけて鋭い突きを放つ。

 しかし、これに気が付いていたキルスによって、そのぶっとい腕を取られてその勢いのまま投げ飛ばされた。


「ごはぁ」


 この時、男は自身に何が起きたのかはわからなかった。


「てめぇ」


 他の男は、キルスが投げたことは見えていたこともあり、警戒しながらも次々に攻撃をキルスに放つ。

 それらをよけつつ、キルスは1人1人と、自身に襲い掛かってくる男達、4人を床にたたきつけた。


「おまたせ、って、なにこれ?」


 キルスが男たちを倒して1息ついていると、そこにシュレリーがやって来たが、キルスの周りに倒れている冒険者を見て一瞬きょとんとした。


「いい、暇つぶしになったよ」

「……はぁ、そうみたいね」


 シュレリーはキルスの1言で大体の予想を付けたのか、男たちにあきれた顔を見せながら1つ、ため息をついた。


「えっと、行きましょうか」

「ああ」


 キルスとシュレリーは男たちを放置してギルドを出ていった。

 それでいいのかと思わなくもないが、彼らはどこかしらのパーティーに所属し、ギルド内にはそんな仲間たちがいたことをシュレリーは知っていたことや、受付嬢の仕事ではないと判断して放置したのであった。

 実際、倒された男たちはそれぞれのメンバーによって回収されたようだ。


 そうして、ギルドを出たキルスとシュレリーはまっすぐシュレリーやレティアの実家であり、双方にとっての祖父母の家に向かって歩き出した。


「ここから、近いのか」

「ええ、歩いての10分程度かな」


 道中キルスとシュレリーは、お互いの話を多少しつつ歩いていた。


 そして、ついにキルスは祖父母の家にたどり着いた。


「ここよ。シルヴァ―ちゃんは、そこから庭に入ってね」

「アウ」


 家にたどり着くと、シュレリーはすぐにシルヴァ―に庭に入るように指示を出した。


「じゃぁ、どうぞ、入って」

「ああ」

「ただいまぁ、おじいちゃ~ん、おばあちゃ~ん、お客さ~ん」


 シュレリーは家に入ると途端にこれまでのキルスに対する精いっぱいの姉的な顔から、孫の顔となり、自身の祖父母を呼んだ。


「おお、おかえり、なんだ、客って」

「おかえり、シュレリー、お客さんって、誰?」

「あら、仕事は?」


 キルスを引き連れたシュレリーがリビングに顔を出すと、祖父母と母親が順に返事をした。


「うん、驚くわよ。キルス君入って」


 シュレリーは祖父母と母親にそういってからキルスをリビングに招き入れた。


「客って、そいつか」

「どなた?」


 キルスとは初対面である祖父母は、キルスが誰なのかシュレリーに尋ねた。


「うん、この子はキルス君って名前で、なんと、驚くことにレティア伯母さんの息子さんなの」

「はっ」

「えっ」

「……」


 キルスの正体を聞き、3人はそれぞれ驚愕の表情をしたのち固まった。

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