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異世界殺し  作者: Tetsuさん
旅の途中⑬
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789:悪の組織の活動

「いや、あの、突然そんな事言われても……。」


ボロボロの布を着たスケルトンは、もう一度両手を大きく開く。


「君を!我が組織の一員にしてあげよう!!」


スケルトンの両脇にいる三人も、また拍手する。

……が、すぐ拍手は鳴り止むと後には気まずい沈黙が訪れる。


(え?ちょっと待って、彼ノリノリだったんじゃないの!?)

(いやそんな話はしてませんって!ちゃんと説明してって言ったじゃないですか!!)

(でもオマエ、行ける、言ってた。)


俺の目の前でヒソヒソと内緒話を始める3人。

その会話に参加できないのか、首無し甲冑騎士だけはオロオロしている。

ただ、部屋が静かだったからか皆の声が大きいからか、会話は俺に全て筒抜けだった。


「あの、まぁ、なんですかね、情報量多すぎるので1つずつ確認なんですが、皆さんのその、容姿とか組織とか、一体何の事ですかね?」


「キミィ、このご時世に容姿の事をとやかく言うのはよろしくないぞぉ?」


そんな事言っとらんわ。

ってか骨に容姿の事を注意されるとは思わなかったわ。


ともあれ、彼等が何でどういう存在なのか説明してもらったところ、彼等は自分達を「悪の組織」と名乗った。


「悪の組織……ねぇ?」


「その通り!

魔王が倒れた後、その意思を引き継ぎ世界統一を為すのは我が組織だ!!

手始めにこの街を手中に収め、勢力を拡大してゆく予定だ!!

そのためにも、今は有力な仲間が一人でも多く欲しい!!

だから君をこのサキュバスのサっちゃんがスカウトしてきたのだ!!」


何だか腰から崩れそうになる。

んん?いや、聞き間違いか?


「あの、皆様のお名前は……?」


「おぉ、自己紹介がまだだったな!

君をスカウトしたのがサキュバスのサっちゃん!

そしてこのイカツイのが上位猪男(ハイオーク)のイノ君、そしてこの甲冑騎士が首無し騎士(デュラハン)のデューだ!!

サっちゃんは見かけ倒しだし、イノ君は小心者だし、デューはこの間兜を無くしちゃったちょっとオッチョコチョイだぞ!!」


「ちなみに、この人は私達のリーダーの死者魔導師(エルダー・リッチ)のスケさんよ。

魔法はたくさん知ってるけど体の維持で魔力を使い過ぎてて、魔法は撃てないわ。」


ツッコミどころが多すぎて手に負えない!?

ダメだ、考え出したら負ける!


<何に負けるんですか?

とりあえず聞いていて勢大も感じているとは思いますが、脅威度は低めで良いのではないですかね?>


マキーナも若干呆れ気味だ。

俺としても、別にここから抜けて帰っても良いのだが、この時は何となく“コイツ等、こんな事を言っているが本当に脅威度は低いのだろうか?”と少し気になっていた。


「ま、まぁ、とりあえず解りました。

組織に参加しても良いんですが、組織の人間はここにいる人間で全てなのですか?」


「ククク……、やはり我等の志に賛同してくれるか。

良い、実に良いぞサっちゃん。

良い人材を見つけてきた。」


スケルトンは上機嫌にカラカラと笑う。

そしてドサリと椅子に座ると、威厳を出そうと足を組んで頬杖をつく。


「ククク、もちろん、ここに居るのは私にとって最も信頼の置ける忠臣達だが、組織のメンバーはまだまだ他にもいる。

明日はそいつらにも引き合わせてやろう。

明日も世界征服に向けた活動を行うしな、ククク。」


どれくらいのメンバーがいるのか、それを把握してやるのも良いだろう。

本当に驚異となるようであれば、いつか彼の前に立ちはだかるかも知れない。

そうなる前に、俺が殲滅しておくのも悪くはない。

この世界がせっかく手に入れた、束の間の平和だ。

不穏の目は摘んでおく必要があるだろう。




「ククク、さぁ諸君。

今日はこの街を不浄の海に沈めてやろうではないか。」


よく朝早く、それこそ日が昇る前から俺達は集まり、道具を準備する。

俺も作業着に着替え、スコップを持っている。


「ククク、セーダイ、ちょうど良い機会だ。

紹介しておこう、彼が我等組織に協力する、下部組織と言うやつだ。」


「へぇ、今日は新しい方もいらしてらっしゃいますだか。

スケさんの所もようやく人が増えてきて、よござんしたなぁ。

それじゃ、今日の作業、よろしくお願いしますだ。」


杖をついたおじいさんがスケルトンに何かを渡す。

資金か何かかと思ったが、スケルトンはそれを俺達に配り始める。


「よし、皆の者、作業中はその腕章をしっかりと見えるように取り付けておくこと。

汚水が目に入ったり、怪我をした者はすぐに言って洗い流すように。

また、作業中注意事項をサっちゃん、読み上げて。」


「はい、本日は区画8から区画10までが担当地域になります。

通勤時間に交通量が増えます、また、学童の通学路も一部通過しますので、必要以上の騒音、機材の放置は厳禁でお願いします。

また、作業中にデューの兜を見つけたものにはデューから自腹で金一封が出ます。

こちらも合わせ、探すようにしてください。」


「それでは、作業開始!今日もご安全に!!」


ガサガサと猫車の上に道具を置き、そのまま運び始める。


「イノ君、この一面のブロック全部はがしちゃって!」


道路脇に整備された下水道。

それのメンテを行うために作業に就いているのだ。

ハイオークのイノが力を込めて次々とブロックを剥がしていく。

その下にたまっている汚泥をスコップですくい出し、猫車に乗せる。

ある程度溜まると、大型の袋に入れて車両に積み込む。

デューが猫車を持つと、スイスイとまるで見えているように進んで袋に入れ、そして車両に積み込んでいく。

実に手際の良い動きだ。


「セーダイ!少し遅れているぞ!」


スケさんは骨だからか早い。

サクサクとドブさらいを進め、あっという間に一区画終わっていた。


「よし、次の区画ちょっとやって、昼にしよう!」


悪の組織初日の活動は、こうして街のドブさらいをし、下水道の整備を行なっていた。


<……勢大、彼等は本当に……。>


皆まで言うな。

だが、気になる。


「あの、……スケさん、この活動、本当に世界征服の足がかりなんですか?

もっとこう、大量虐殺とか……。」


俺の言葉に悪の集団達がザワザワし始める。

スケさんも、心なしか慌てているように見える。


「せ、セーダイさん、何をそんな危ない事を!

ほら、イノ君泣いちゃったじゃないですか!!

と、ともかく、そんな物騒な事はもっと力をつけてからです!

今は、こうして下部組織と連携して、市民の生活に浸透していくのです!」


泣く豚顔の大男、慰めるサキュバス。

ウロウロするデュラハン。

呆れているエルダー・リッチ。


……なんだこいつら?

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