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異世界殺し  作者: Tetsuさん
旅の途中②
71/832

70:経験の差

「どうした?その銃で撃ってみるといい。

私は遠距離武器への完全防御を持っている。

そんな豆鉄砲、全て防いで見せよう。」


両手足は装甲のような機械で覆われているが、胴体はビキニの巨乳美女がゆっくりと近付いてくる。


背中のブースターが他の女の子達と違い、天使の羽のように柔らかく動いている。

きっと一番お気に入りのキャラなのだろう。


俺は思いついた事もあり、特に何も考えずに銃を撃ってみた。


何も考えずに撃鉄を親指で起こす。

“カチャ!”という軽い音と共に撃鉄が引き起こされて弾倉が回る。

そのまま撃つと、“ズキューン!”という昔の西部劇で聞いた様な音と共に、光に包まれた弾が飛び出る。

しかも飛び出た弾は薬莢付きでだ。

当然、そんな面白弾は巨乳美女が展開している見えない壁にはじかれる。

それを見て、“なるほどなぁ”と心の中で思う。

先程の武器屋では、若干だが俺の意志が入っていたのだろう。

マキーナが解析した世界のルール、それを把握した。


「ハハハ!所詮銃などそんなモノだ!!

選ぶ武器を間違えたな!!」


王様はご機嫌だ。

その姿に、ため息が出る。


「どうした侵入者よ?諦めたか?」


巨乳美女もノリノリだ。

じゃあ、改めて攻撃させて貰うとするか。

手に持つ銃を改めてイメージする。

昔ネットで見た銃の構造、弾丸の詳細。

実際に撃ったときの感触。


「銃から弾が出る仕組みは知ってるかな、王様?」


王様少年は笑うのをこらえながら、非憎げな顔をする。


「そんなモノ、引き金を引けば中の火薬が爆発して、弾が飛び出るんだろう。」


「まぁ、大雑把に言えばそうだな。

引き金を引くことで撃針が薬莢のお尻にある雷管を叩き、そこで起きる小さな爆発を薬室の火薬に引火させる。

そうして薬莢内で起きた爆発の力で、先端の弾頭が飛び出る、と。

もっと細かくはあるが、大体そんな感じだ。」


だから薬莢ごと飛ぶ弾なんて無ぇんだよ。


「ついでに言えば、薬莢内にあるのはどこまでいっても結局火薬だ。

つまり……。」


もう一度撃鉄を起こす。

“ガチリ”という金属の重たい音と共に撃鉄が引き起こされ、弾倉が回る。


ゆっくりと巨乳美女の額に狙いを付け、引き金を絞る。


“バン!”と、乾いた、そして室内の影響も有り幾重にも響く爆発音が鳴る。


巨乳美女の額には小さな穴があき、そして後頭部が花火のように弾け飛んだ。


「……鳴る音はどこまでいっても火薬の爆発音で、飛ぶ弾丸をはじく見えない壁なぞ、お伽話の世界と言うことだ。」


頭の後ろ半分を吹き飛ばされた巨乳美女は、ゆっくりと膝から崩れ落ちる。


「そ、そんな……、銃は屑武器の筈じゃ……。」


大事なお人形が壊されたことも忘れ、その破壊力に呆然としている。

見たことが無ければ、そうなのだろう。


「王様、ピースメーカーの名前の由来は知ってるかな?」


平和を作るモノ(ピースメーカー)”は、西部劇でお馴染みのアメリカ開拓史時代、襲いかかってくるネイティブアメリカンを一撃でし仕留め、薬莢を変えればすぐにまた撃つことが出来る事から、“開拓者達の平和を作るモノ”として付けられた名だ。

45口径の弾丸は、成人男性の突進を止められる威力を持つ。

そんなモノを止められる見えない壁は、この世には存在しない。


「そんな事知るか!!キサマ!!俺を本当に怒らせたな!!

俺の体に封印された力、解放してやる!!」



俺は銃をベルトに挟むと、懐からタバコを取り出し火を付ける。

喫煙者に肩身の狭い昨今、マナーを守って吸う派だが、今この瞬間には挑発するための、丁度良い小道具だ。


「やれやれ、王様さんの転生前が何歳だったか知らんが、随分と無知で中二病な事だ。」


王様が動きを止める。

でもその表情を見るに、どうやら何かの琴線に触れたらしい。


「いいか、根拠も現実感も無く、自分には封印された、或いは秘めた力があると言ってる内は中二病だ。

そこから社会正義や戦争が起きる理由を知って“悪には悪の正義がある”とか、“正義の反対側にあるのは別の正義”と言い出せば高二病だ。

そこから軍事的にモノを考えて戦術や戦略を理解し、尚且つ“兵站ロジスティクス”まで考えが及んだら大二病だ。

一国の王となって俺と対峙するのなら、せめて大二病くらいまでは行ってて欲しかったな。」


煙を吐きながら、挑発する。

風景が微かに揺らぐ。

この転生者の、痛いところを突いたらしい。


「グ、グ、グ、……キサマに何がわかる!

元の世界でも、そうやって皆俺を馬鹿にした!!

元の世界には何も良いことなんか無い!

世の中は馬鹿で溢れてるからな!!

俺が真剣に学ぶ必要など、何もなかった!!」


タバコの煙を吐き出す。

消えていく煙を見ながら、昔誰かが言っていたことを思い出す。


“タバコを吸うのは、ため息が解らないようにするためだ”と。

その気持ちが、今少しわかる。


「いや、解らんね。

それで現実から逃避し続け、こんなお人形の世界で埋もれている馬鹿なお前の気持ちなぞ、何一つ解らんよ。」


たまの現実逃避も悪くない。

非日常を体験し、リフレッシュすることも大事だ。

だがこれは最早、完全な逃避だ。

それなら、お節介でも余計なお世話でも、誰かが引き戻してやらねば。


「顕現せよ!龍の王!」


王様はブチ切れだ。

ブチギレ金剛くらいのブチ切れ具合だ。

全身に光るオーラを纏い、血管が波打っている。


「フフフ、この力を使わせたのは魔王とキサマだけだ。

今の俺は、全てのステータスが限界まで上昇し、しかも全てを見透かす龍の目を持つ!!

丁度良い、キサマの手品のタネを見てやろう!

ステータスチェック!!」


見えない何かが俺を通り抜けると、王様は驚きの表情を示した。

何だろう?そんな凄いステータスなんだろうか?


「キ、キサマ!この“武蔵野流星企画(株)の企画営業課主任”とは、何の意味だ!」


随分と懐かしく感じるが、あぁなるほどと思う。

社会的地位(ステータス)”か。


「しかもスキル“普通自動車免許(MT)”だと?

なんなんだこれは!!」


あぁ、“資格(スキル)”か。

止めろよ、恥ずかしいな。

それしか履歴書のスキルシートに書くことないんだから。


「おいおい、今そう言うのはセンシティブ情報なんだから、あんまり大きな声でバラすなよ。」


王様の怒りは頂点だ。

いっそ“俺の怒りが有頂天”みたいなことを言ってくれるなら少しは認めるんだが、コイツじゃそうは行かないだろうなぁ。


「ふざけるな!キサマだってどうせ何かのチートを貰ってるんだろう!

そうで無ければ銃でその威力はおかしい!」


狭い視野だ。

自分の知る世界が全てと思い込んでいるようだ。


「答える前にさ、1つ聞いておきたいんだが。」


ワザと見えるようにタバコを地面に落とし、足で消す。

良い大人はマネしちゃダメだぞ。

子供?そもそも吸っちゃダメだ。


「何でお前さんみたいなのは、“いつでも自分が正しい”と思えるんだ?」


俺が空けた大穴から、涼やかな風が流れた。

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