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異世界殺し  作者: Tetsuさん
争乱の光
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677:理不尽

<確認を。

エネルギーを余分に消費する事になりますが、本当に実行しますか?>


『あぁ、構わねぇ。

俺は結局どこまで行っても物理的だからな。

それで圧倒したところで、この手の奴は理解しようとしない。

なら、“理解が及ばない方法”で、ブチのめしてやるしかねぇよ。』


マキーナは”そうですか”と一言いうと、確認事項は終わったとばかりに沈黙する。

俺も静かに構えをとき、ただまっすぐに棒立ちしてアケチを見る。


「どうした?

何か見せてくれるんじゃないのか!!

それとも、そのまま黙って斬られるのがお前の言う”他の世界の強さ”とでもいうのか!?」


『マキーナ、始めろ。』


<ブーストモード・エクストラ、起動します。>


俺が身に着けている装備のフチが、これまでにない青い光を放つ。

俺自身、意識はあるのだが自分の目線で見ているというよりは、一歩引いた目線に変わる。

そうだ、シューティングゲームのアレだ、サードパーソンビュー、つまり第三者視点で自分を斜め後ろから見ている感じだ。


『では始めましょう。

そうですね、まずは空間停止から始めましょう。』


俺の体、俺の声なのに、俺ではない口調の言葉が吐き出される。

何とも不思議な感覚だ。


「なっ!そんな行動……!?」


アケチは最後まで言葉を発せず、まるで何かに貼り付けられたように驚愕の表情を浮かべたまま、ビタリと体が止まる。


『本来であれば時間停止なのですが、それは私には再現不可能なので、これは下位互換ですが。』


そう言いながらゆっくりと近づき、手刀を作るとアケチの喉元に突きつける。


『これでまずは1回、貴方は死にました。

残念です、貴方の異世界転生はここでおしまいです。』


その瞬間、空間停止を解除したのかアケチの体がフッと解放されたように揺れる。

その隙を見逃さず、すぐに太刀を振り被ると頭から真っ二つにするために全身全霊を込めて振り下ろす。


『では次は、少し変わった能力で遊びましょう。

確率論、これには私も勢大もかなり苦労させられました。』


俺の頭に振り下ろされている太刀は、しかし偶然落ちてきた木の枝にぶつかり軌道が変わる。


「……?ちっ、運の良い奴め。

だが次はっ……!?何……!?」


アケチが太刀を振るう度に、偶然にも(・・・・)こぶし大くらいの落石が起こって太刀にぶつかり外れ、更に振るってもたまたま(・・・・)低いところを飛んでいた鳥がアケチの顔面に当たり、やはり太刀を振るうのを邪魔されてしまう。

しかも、運の悪い事にその時に踏ん張ろうとした足場が泥濘んでいたらしく、足を取られて滑って転んでしまう。


『無駄ですよ。

本来の能力は“神の確率論”とかいう能力です。

全て対象者に幸運な結果をもたらす、と言うものでしたがそれは使えませんので劣化ではありますが似たような事を再現しました。

さて、これで2回目のゲームオーバーです。』


素早く回収したライフルの銃剣をアケチの喉元に突きつける。


「ふ、ふ、ふざけるな!!

ただの偶然や、対応不可能なチート技じゃねぇか!!

まともに戦う事すらしねぇのかよ!!」


突きつけられた銃剣の先を払い除け、地面を転がるようにして先程アケチ自身が落としたサブマシンガンに飛びつく。

それをマキーナは無理して追って銃剣で仕留めるような事はせず、手早くライフルとリボルバーの弾丸を再装填しながら目で追う。


『その通りです。

ようやく理解してきましたね。

後一歩ですよ。』


「ふっざけるなぁ!!」


アケチはサブマシンガンを構えると、躊躇なく引き金を引く。

恐らくは1マガジン20発くらいか。

それ等の弾丸が飛んでくる中で、マキーナは影響のありそうな弾丸のみをリボルバーで撃ち落とす。

いくつかは俺のボディスーツに掠めていくが、致命どころか傷を追うような弾丸は、体の向きとリボルバーの6発のみで全て叩き落としていく。


『本来の能力は“神の目”という、全てを見通す千里眼のような能力です。

この状況における安全なライン、危険なポイント、弱点、そして触れるだけで対象を破壊できるポイントを見る、という能力ですね。

流石にそこまでではないので、これは“鷹の目(ホークアイ)”といった所でしょうか。

自身に迫りくる危機を“視”て、危なそうな弾丸だけ撃ち落とさせて頂きました。

そして、こちらのライフルにはまだ弾丸が残っています。

つまり、貴方は3回目のゲームオーバーです。』


「ぐぐぐ……そうじゃねぇだろ!そうじゃねぇ!!

俺と!まともに!戦えって言ってるんだよ!!」


アケチは左手に持ったサブマシンガンを乱射しながら、右手に持った太刀を振りかざして突撃してくる。

それをマキーナは棒立ちで見ながら、何かの能力を使う。

すると体に当たった弾丸は全てが体で受け止められてボトボトと地に落ち、太刀も頭で受け止めつつ、激しい金属音と火花を散らしながらも、それ以上進む事なくピタリと止まる。


……凄くどうでもいい事だが、ちょっと痛い。


『これは、本来であれば“完全無敵”という能力です。

ただ、流石にそれは再現できませんので防御能力を最大限まで引き上げさせて頂きました。』


アケチはもう、顔が真っ赤だ。

サブマシンガンを投げ捨て、両手で持った太刀で何度も何度も俺の体を斬りつけるが、その度にガンガンという衝撃音と火花が散るだけだ。


(……あの、マキーナさん、これ微妙に痛いんですが。)


何と言うか、剣道の防具をつけた上から、アレだ、スポーツチャンバラのスポンジの剣で叩かれてるみたいな、微妙な衝撃というか何かがポコンポコン伝わってきている。

ちょっと痛い。


<少しだけ我慢してください。

こうでもしないと、圧倒的感を出せませんので。

痛そうなフリとかしないでくださいね。>


体の操作権を渡しているのだから出来るわけ無いだろう、とも思ったが、強く感じてしまうと反射というか、そういう感じで体が動いてしまう事があるらしい。

仕方ないのでここは我慢する。


「こんな!こんな!!

ありえねぇだろ!そういうのやっちゃダメだろ!!

卑怯だ!ズルいぞ!!」


遂に、アケチは泣きべそをかきながら膝から崩れる。

それを見ながらも、またマキーナは銃剣の先をアケチに向ける。


『異世界を渡り歩くという事は、“転生者を相手にする”という事は、そう言う事なのです。

貴方がたは、自分達が有利な時は“そういうモノだ、神から与えられているのだ、仕方ない”と嘯きます。

しかし自らが不利になった途端、同じ様な言葉を叫びます。

その心の弱さで、本当に外の世界で生きていけると思っているのですか?』


それまで怒り狂っていたアケチは、その言葉で気まずそうに下を向いてしまう。


やれやれ、これ以上は可哀想かな?という気持ちがふと芽生える。

……まじで、アップしてあると思い込んでてこの時間。

……もはや落としてるレベルですが、とりあえずここでアップします……。

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