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異世界殺し  作者: Tetsuさん
争乱の光
676/831

675:決着と、その先へ

<勢大、懐かしすぎて誰だか解らなくなっていませんか?

そんなに苦しそうな表情をして、思い出すのも一苦労ですか?>


「ば、馬鹿言……えって、んだ……、この状況見てわかるだろ……。

……いいから、早く、回復してくれ……。」


久々の相棒は、これまで言えなかった皮肉をようやく言えたとばかりに棘を刺してくるが、正直今はそれどころではない。

腹に銃弾を喰らっているのだ。

何か力を入れるにも、それこそ喋るだけでも激痛が走る。

気合と根性で耐えていたとはいえ、良くここまで意識を失わずにいたと自画自賛したくなるほどだ。


<やれやれ、勢大は私がいないと本当に何もできませんね。

私に感謝してください。>


するする、感謝でもお礼でも何でもするから、早く治してくれ……。


もう言葉も出ないほどに痛みで身動きが取れなくなってきていて、ゆっくり考える余裕すらない。


そんな俺の発言に、マキーナは“ん?今何でもって?”と何か危げな事を言いかけたが、流石にこれ以上はまずいと思ったらしい。

すぐに俺の腹を、いつもの黒い何かが覆う。


黒い何かが覆ってすぐに、俺の腹からポトリと弾丸が飛び出てくる。

こんな小さな金属の塊でも、運動エネルギーが加われば人間などひとたまりも無いのだから不思議だ。


脂汗が額を伝いながらも、痛みが治まってきてそれくらいの事を考える余裕が出てきたらしい。


「あっ!?アケチ!!」


そこまできて、俺は慌ててアケチを見る。

アケチは俺の手により、2〜3発の銃弾を至近距離から全身に浴びているのだ。

もっとやべぇ事になっているのではと見れば、もはやかろうじて呼吸しているだけの虫の息だ。


「や、やべぇ、やり過ぎた!マキーナ、コイツ何とか助けられないか!?」


自分で言いながらも、“銃弾にやり過ぎたもクソも無いか”とは思ったが、まぁ言葉のアヤだ。


<……勢大、この男からは既に権限の一時移譲を受けています。

この男も不正能力(チート)でまた元の明智光秀……いえ、ミツヒデ・アケチに戻るのではないですか?

であれば、別にここで救おうと救うまいと、結論は同じ事になると予測されますが?>


実は少し脳裏に過っていた事を、マキーナも同様に推測したらしい。

事実、ここでのやるべき事はもう終わらせている。

ただ、俺がこの世界から抜け出すと言う事は、つまりあの神を自称する存在との接続を切る事になる。

そうなった場合、この男の願いである、“転生前の世界に戻る”という希望が叶えられなくなってしまうだろう。


それは話が違ってくる。


「……マキーナ、俺はコイツに取引を持ちかけた。

別にコイツがどうなろうと、何を選ぼうと確かに俺の知った事じゃない。

だが、俺から持ちかけた話を最後まで話さないで、このまま逃げるのは話が変わってくる。

頼むマキーナ、俺は、俺に(・・)対しては(・・・・)嘘を(・・)つきたくない(・・・・・・)。」


結局の所は、そう言う事だ。

ここで見捨てた所で、この男に対して俺が何かを思う事は無いだろう。

次の世界でも、また適応して次の転生者を探し出して、同じ様な事をするだけだ。

でも、自分の(・・・)心だけは(・・・・)騙せない(・・・・)

人に嘘をついて利益を得た、という感情は、永遠に俺の中に付きまとうだろう。

何かを得たいなら、それと同等の対価が必要だ。


<……解りました。

しかし実際の所、この世界の住人であるならば対応は簡単です。

勢大と違い、こうして魔法が効果を発揮するのですから。>


マキーナの金属板を入れているポケットから光が漏れ、その光がアケチへと向かい全身を包み込む。


あっという間に俺が当てた弾丸が体外へと押し出され、そしてまるで動画の逆再生のように傷口が修復していく。

完全に傷口が閉じると、ほぼ白くなっていた肌の血色が良くなっていく。


「……こ、ここは?

また周回(リセット)してしまったのか……?」


「残念だったな、まだミツヒデ・アケチとして生きてる最中だよ。」


俺がそう声をかけると、慌てたようにハッと上体を起こして俺を見る。


「貴様……なぜ俺を回復させた?」


そう言われて、俺は少し上を向いて考える。

まさか本人からそんな事を聞かれるとは思わなかったなぁ。


「あー、まぁアレだ、お前に“協力”を求めたのは俺からだしな。

お前がどう考えるかは解らんが、それでもその答えを俺はまだ聞いてない。

“どちらが強い”のマウント合戦は、こうして俺がお前を回復させた時点でケリはついただろう?

なら、後は話し合いだ。

お前の考えを教えてくれ。」


アケチは目を閉じて腕組みをする。

少しの沈黙の後、カッと目を開け俺に協力すると言うその目には、何かが含まれていた。


少しだけそれが気になったが、それをいちいち気にしていても仕方がない。

俺はこれまでの事、そしてこれからアケチにやろうとしている事を説明する。


「……なるほどなぁ。

つまり私は、始めから騙されていたのかも知れんな。

……正直、ずっと不審な物は感じていた。

明智編は、実は好きで一番やり込んでいたのだ。

最初は“現実とゲームは違うから、そう上手くはいかないか”と考えていた。

他の武将の話がたまたま上手くいっただけで、現実なのだからゲームで起きないような些細な問題は出てくるだろう、そう思っていたんだ。

……しかし、アケチ編だけは何周しても必ずバッドエンドで初めからに戻されてしまう。

それこそ、生まれた時から注意深く生きてみても、必ずどこかで何かが起き、或いは本能寺で織田信長を討ち取るとそこから先は史実通りになってしまう。」


聞けば聞くほど、裏側を知っているから尚の事だからだろうか、彼の話は割と詰んでいた。

何せ、史実通りに豊臣秀吉に討たれるのも駄目なのだ。

しかも史実と違い生き残ろうとしても、豊臣秀吉じゃない誰かにある日襲われて死亡、襲われないように必死に逃げ回っていても事故死、更には天下を目指さないでいると何故か病死と、最後まで人生を全う出来なかったらしい。

俺はそれを聞いていて、“そうして不正能力(チート)を乱発させて、世界の力を浪費させる狙いだろうな”と思いながら聞いていた。

つまりは、あの神を自称する存在は初めから願いを叶える気はないのだ、と、心の中で結論づく。


「……だが、もう1つ、俺は別の可能性を見つけたぞ。」


そんな考え事をしていると、不意にアケチが空を見上げてポツリと呟く。

ゆっくりと口の端が持ち上がり、悪意を持った笑顔へと変わっていった。


「その鍵が、お前だ。」

失礼しました、上がってませんでした……

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