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異世界殺し  作者: Tetsuさん
自由への光
536/832

535:戦いの行方

「よしっ!!

もうじきキルッフ達も到着する!ミサト君、下手な時間稼ぎはしなくていいぞ!!」


「はいっ!!

それじゃあセーダイさんからも許可が出たし、速攻やっつけさせてもらうよ!!

僕のターンは手札から1枚を生産コストに。

そして、更に2枚のカードを同時使用!!

“生産ライン強化”と“生贄の供物”だ!

これで次のターン、生産コストは3になる!!

更に今ある生産コスト1を消費して“乾きの壺”を発動!!

デッキを3枚ドローして、2枚を墓地に送る!!」


ミサト君は俺をまっすぐ見ると、気持ちいい返事を返してくれる。

そしてミサト君のデッキは、速攻とデッキ圧縮系の様だ。

俺が戦った“自称緑に最も近い黄”の比ではない早さだ。


もう、次のミサト君の手番が来れば、最大で生産コスト4のモンスターが召喚出来てしまう。


「ぐ、グヌヌ……デッキさえ入れ替えられれば……。

まさか雑魚をいたぶる為のデッキが……裏目に出るとは……!!」


青の騎士はカードを1枚引くと、手札の1枚を生産コスト化してモンスターを呼び出す。

呼び出されたのはイモムシに装甲を着けたようなモンスターで、ステータスは2,500と表示されている。

特段スキル等は持っていないようだが、大体の1コスト帯が1,000〜2,000のステータスを考えると、あの“500”の部分がイヤらしい。

普通のデッキでは序盤の壁になるだろう。


「クソッ!!だが、やるしかない!

手札から“特殊障壁”召喚!!

このカードが場にある限り、ステータス5,000以下のモンスターはこちらに攻撃が出来ない!!

どうだ!!」


<なるほど、恐らくですがあの騎士は“防御重視”のデッキのようです。>


マキーナが言うには、ああして序盤は相手に攻撃させないように守りを固め、自分の場を構築する事を重視する戦い方のようだ。

5,000以上となれば、召喚するまでに普通は4〜5ターンはかかる。

なるほど、弱い相手をすぐには倒さないようにするとは、良い趣味してやがる。

だが、それであるならばミサト君のデッキとは相性が悪いだろうな。


青の騎士のターンが終わり、ミサト君のターンが回ってくる。

ベルトのデッキから1枚引き抜くと、静かに笑う。


「さぁ、これで終わりですよ。」


ミサト君が生産コストに手札から1枚を投入する。

この時点で4コスト、中々の大型級が召喚されてもおかしくはない。


「来い!カリオンビートル!!」


ミサト君の声に応え、巨大な甲虫が光とともに現れる。

何とも……真っ黒な甲虫で、背中におどろおどろしい、白い髑髏のような模様が浮かんでいる。

何となくぱっと見、ミサト君の方が悪役に見えなくもない。

しかし、その凶悪な見た目に反して、甲虫に表示されたステータスは4,000と低い。


はて、あれでは青の騎士が使った特殊障壁に引っかかってしまうのではないのか?


「更にカリオンビートルの特殊能力発動!!

“その死を喰らえ、カリオン”!!」


ミサト君の声とともに、甲虫の前に墓石が2つ現れる。

あぁ、さっきのターンで墓地に捨てたモンスターカードか。


甲虫は墓石を押しのけ、中のモンスターを喰らう。

これは、もしかして……?


墓地に捨てられていたモンスターは、相当な大型だったらしい。

名前が見えなかったが、ステータスがそれぞれ8,000ずつあるのがチラと見えた。

そうして2体のモンスターを喰らったカリオンビートルのステータスが跳ね上がり、20,000にまで到達していた。

なるほど、手札とデッキを加速させるだけではなく、捨てたモンスターすら利用する、隙の無い構成だ。


「なっ!?グッ!?

ば、馬鹿な!?」


「カリオンビートルは喰らったモンスターのステータス、特殊能力を引き継ぐ。

そして、喰らったモンスターの中に、“貫通撃”がある。

この意味がわかるよね騎士さん。」


モンスターの中には、“相手モンスターのステータスを超過した分を相手決闘者(デュエラー)に与える”という、割と色々な名称ではあるが、結構多くのモンスターが持つ攻撃貫通能力がある。

多分、ミサト君が言っているのもそれの事だろう。


そう言えばと思い、ヤツのシールドパワーに目を向ければ、15,000という表示。

ハハ、残念だ。

ヤツのモンスターと合わせても、ミサトくんのカリオンビートルのステータスの方が圧倒的に上回っている。


「行け、カリオンビートル!!

“貫通撃”!!」


「ま、待て!!

待ってく……うわぁぁぁ!!」


カリオンビートルがその前腕を振るうと、イモムシは一瞬で消し飛び、その後ろにいる青の騎士も一緒に吹き飛ばされる。

青の騎士はそのままバリアにぶつかり、グッタリとして意識を失う。

そうしてピコピコという電子音と共に、ヤツのシールドが0となる。


<ぺぺぺペェナルティィィ!!>


またもや、やたらとハイテンションな男性の声が聞こえたかと思うと、突然周囲の空が曇り暗雲が立ち込める。


<ジャッジメェントゥ!!>


「グギャァァァ!!!」


その一言と共に暗雲から雷が落ち、青の騎士に直撃する。

ただでさえ金属の鎧をつけているのだ。

あれではひとたまりもないだろう。

青の騎士は人間とは思えない悲鳴を上げると、雷の影響かピクピクと痙攣し続けている。


その青の騎士から周囲に広がる肉の焼ける悪臭と、僅かに立ち上る煙。

青の騎士がどうなったかは、語るまでもないだろう。

試合ではなく“真剣勝負”となるとどうなるか、俺も初めて見た。


心の何処かで“遊びの延長”とタカを括っていた所があったのだが、これを見て考えが変わる。

真剣勝負は、本当に命のやり取りに他ならない様だ。

敗者にはペナルティとして命が奪われる。

冗談みたいな世界だが、周りに立ち込めるこの臭いが俺を現実に引き戻す。


「さぁ、この後戦う奴はいるか!?

僕のSPは今の戦いでレベルアップして、8,000まで上がったぞ!!」


ミサト君の叫びに、更に動揺が広がるのが見える。

赤の連中だけではない。

黄の奴等も、絶対的な信頼をおいていた青の騎士が殺られたのだ。

オロオロとしながら互いを見渡し、どうして良いか解らない、という表情だ。


「おぉ、ミサト、無事やっつけたようだな!

さて、抵抗する気がないなら大人しく俺達に従ってもらおうか!!」


遅れて、キルッフ達の集団も到着する。

それを見て、黄の連中も諦めが着いたようだ。

全員抵抗する事なく、デッキケースを地面に放る。

ここでの戦いは、俺達の完勝に終わった。

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