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異世界殺し  作者: Tetsuさん
自由への光
528/832

527:実力を測る

(ここから多分4枚……いや、3枚はアレが来るとして……。)


手札にあるカードを見、そして自分自身の状態を確認する。

あの良く解らない半透明の鎧は着ていない。

狩人(ハンター)モードにはなっていないという事だ。

でも、手札には狩人(ハンター)モード用の槍がある。


「俺はこの槍を使う。

そして生産コストに1枚捧げて、このレディメタルとやらを召喚。

更に召喚したレディメタルに1枚カードを装備させて、ターン終了だ。」


何もないところから現れ、地面に突き刺さった槍を引き抜く。

やはり半透明の鎧は出て来ないが、俺の左脇に“戦士セーダイ”の文字が浮かぶ。

恐らくシステム的には、狩人(ハンター)決闘者(デュエラー)が同時に発生しており、キメラのような状態になっているのかも知れない。


当然の事ながら、狩人(ハンター)用の手札が重いため、手札にはコストの重いモンスターが殆どで、ソイツ等を呼び出すには生産コストが足りてない。

今はこの、ステータスが1,000しかない丸っこい虫型モンスターを呼び出すのが精一杯だ。


よく見れば銀色のボウルを逆さまにしたような、何となく愛嬌のある見た目をしている。

召喚されたそのターンは、肉体を物質化するのに費やされるらしく、一生懸命モゾモゾしている。

虫系が嫌いなら耐えられなかっただろうが、別段そこまで苦手でもない俺から見れば、その姿も何となく愛らしく見えてくるから不思議だ。


「ケケッ!

やっぱり“カード足らず”ってのは、お前の事か!

お前、その槍を装備しちまったから、“モンスター扱い”になってるって、知らなかったのかよ!!」


黄クラスの男が余裕綽々という表情で、カードを1枚引く。

よほど良いカードを引けたのか、自然と笑みが広がっている。

驚くふりはしておいたが、良い情報が聞けたと内心ほくそ笑む。


「俺は黄の中でも上位にランクされてるからなぁ!

もうじき緑も見えてきてる俺様との戦いだ、光栄に思っていいぞ!」


男はカードを1枚生産コスト化すると、眼の前の空間にカードを浮かべる。


「俺は、このカードを場に配置し、このターンを終える!

さぁ、お前のターンだ。

せいぜい残されたこのターンを楽しむといい。

お前の命は、このターンで終わるからなぁ!」


随分と自信満々だ。

だが、それは好都合。

コイツはつまり、“黄クラスの中では上位の腕前”という事なら、コイツが強さの尺度になるという事だ。


この手のカードゲームは大学生時代に少しだけ触った事がある。

その経験から言うなら、この黄クラスの男は“回しが遅い”と感じる。

コイツが恐ろしく強いなら、俺に(・・)手番など(・・・・)寄越さない(・・・・・)

つまりはその程度の腕前、という事だろう。

これで緑クラスまで通じると言うなら、緑の上位以上までは警戒しなくても良さそうではある。


俺は手札を1枚引く。

想像通り、ステータス倍加の狩人(ハンター)用カードが手に入る。

しかも、順番も一緒だ。

この手のカードゲームにおいて、“引けるカードの順番が解る”というのは結構重要だ。

下手したら不正能力(チート)クラスだろう。

ただまぁ、本来は誰しも、自分の肉体で戦う事は恐ろしいだろう。

モンスターは消失してもカードがあれば何度でも復活するが、人間はそうはいかない。

誰もが我先にとモンスターカードを入手するから、或いは“決闘者(デュエラー)には攻撃が通用しづらい”という固定観念が、この状況を生んでいるのだろう。


「俺は手札を1枚生産コスト化する。

それと、“倍加”のカードを使い、俺自身のSPを10,000に上げる。」


槍を装備した“戦士セーダイ”のSPが10,000まで跳ね上がる。

それを見ても、黄クラスの男の表情には余裕が浮かんだままだ。


「ククク…、いくら防御(シールド)を上げようと無駄な事。

それだけでいいのか?

今なら俺のモンスターに攻撃出来るチャンスだぞ?

相打ちになってでも、場のモンスターを減らしたほうが良いんじゃないか?」


俺のレディメタルも奴のレインボーインセクターも、同じステータス1,000のモンスター。

このまま殴り合えば、互いに対消滅しておしまいだ。


ただ、ここで鮮やかに勝ってもあまり意味がない。

本当はまだモンスターも出せるが、少しは手を抜いておこう。


「いや、その伏せてあるカードが怖い。

このターンはここで終わらせておこう。

次のターンには生産コストが3になる。

そこからが本番だろう。」


何となくデッキを見ていて思った事だが、モンスター関連はコスト3くらいが主力カードなのかな?という印象を受ける。

コスト1〜2のモンスターはステータスが低い代わりに、何となく変わった能力を持っていることが多い。

俺のレディメタルも、その能力に“その硬い装甲で一度だけ相手からの攻撃を無効化する”という能力が付いている。

そのお陰もあってか、アイツは攻めて来ないのだろう。

そしてコスト2の一部〜3になると、ステータスが5,000前後になり、純粋な殴り合いに強くなる。

中には“攻撃無効効果を無効にする”みたいなワケのわからん能力もあったりと、まぁとにかく“主力となる攻撃”はこのコスト帯からで、決闘(デュエル)の優勢劣勢はこの時の戦いで決まりやすい。

コスト4から上は、基本的に1つ頭が抜けた上位コスト帯で、最低でも8,000という強いステータスを持つものが多い。

ま、特殊能力も複数持ちだったり強力だったりするものが多く、これを先に場に出せばほぼ勝ちが確定する。

それほどに強力なカードなのだ。


「クックック、所詮は素人だな。

俺が最初のターンに何をしたか、もう忘れたらしい。」


「な、何だと!?」


“知ってるよ”と思いながら、一応形式的に驚いておく。

コイツは1ターン目に、“次のターンから生産コストに+1する”というカードを使っていた。

つまりコイツは、俺よりも早くコスト4のモンスターを呼び出せるという事だ。


「ククク……、忘れたなら思い出させてやる!

カード、ドロー!

生産コストに1枚ささげ、俺の生産コストは4に到達する!!

いでよ、“ストーク・オブ・デス”!!」


轟音と閃光と共に、巨大で赤黒いサソリが姿を表す。

ピコピコという電子音が鳴り、サソリの上に8,000という数値が浮かぶ。

中々強力なモンスターを召喚してきたな、と見上げる。

ただ、言うてそこまで強いとも思えないステータスだ。

申し訳ないがコスト4相当の、“それなりに強力なモンスター”といった所か。


「クックック、お前今、“一撃では殺られないな”と思って安心しただろう?

だがその表情、どこまで保っていられるかなぁ?」


今の俺の考えを見透かしたかのように、黄クラスの男が顔の前に手のひらを持ってくるポーズを決める。


いや、それ別の漫画の立ち方じゃねぇ?

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