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異世界殺し  作者: Tetsuさん
転換の光
262/834

261:死が2人を別つまで

へーラーが足を踏み出そうとすれば、俺はその足に向かい発砲する。

膝に2発命中して砕くが、瞬時に回復される。

だが、回復するその隙を狙って拳を叩き込む。

拳自体は魔法で防がれるが、距離を離すことは出来る。


地味だがソレの繰り返しで、へーラーはかなり業を煮やしているようだ。


「えぇい、先程からチマチマと!

何なのだソレは!?

戦い方が男らしくないではないか!!」


『お前の息子が開発した、破魔の弾丸だよ。

これは魔法では防げない。

それに、今更“男らしく”だのと言われてもなぁ?』


ここぞとばかりに煽ってやる。

かなり苛立っているのか、少しずつ少しずつ行動が雑になってきている。


「あの糞餓鬼が!カスミを殺すことも失敗し、余計な技術まで授けるなどと!」


『オホホ、アラヤダ、お言葉使いが汚くってよ?』


更に煽りながら拳で剣の腹を殴り、距離をとる。

……もしかしたら今の言葉、アレスもコイツの手駒って事かも知れん。

考えれば考えるほど、怪しく思えてくる。


そもそもアレスの反乱、成功しすぎている。

てっきり俺が手を貸さないからと思っていたが、裏でコイツが手を回していたのか?

側近のあの男、死んだ女騎士に礼をしていたが、あれはただ死者への礼節ではなく、そう言う意味だったのか?


だとするならば、ますます酷いシナリオだ。

人が死ねば、その分世界のエネルギーに蓄積が回る。

あの、神を自称する存在に会いに行くために、へーラーは本気で世界を崩壊させに行っている訳だ。


その推察に自分でも呆れながら、またへーラーに向けて射撃を試みる。

先程の俺の拳を防いだことで、何かヒントを得たのかへーラーは左手の剣を射線上に置くと、突撃してくる。

銃弾は剣のつけ根に命中し左手の剣は破壊されるが、充分な踏み込みと共に右手の剣を俺に振り下ろす。

なるほど、そう来たか。


避ければ銃身を斬られる。

危険な領域でこそ、前へ。


振り下ろされた剣の腹に、右脚を前に踏み込みながら右手の手甲を沿わせる。

沿わせたまま、体の外側へ剣の軌跡をずらす用に下へ落とす。

本当は左拳でぶち抜きたいが、銃身が邪魔だ。

落とした右手を引き戻し、拳を胸前に、発射態勢へ。


振り下ろしたがら空きの胴体に、右拳を叩き込む。


「フヌッ!?」


初めてのクリーンヒット。

カスミちゃんと言いへーラーと言い、ここまでの長期戦は今まで余り無かったのか、防御魔法も弱まってきている。

このままなら行ける!


<セーダイ、残弾が少なくなってきています。>


そうは上手く行かないか。

視界に映る残弾を見ると、残り3発。


チラリとヘーファイトスを見れば、大事そうに弾丸の入ったケースを抱えているのが見える。


『オカマ!その弾を寄越せ!!』


ヘーファイトスはハッとなると、手元のケースをこちらに投げる。


「これで最後だからね!

後はアタシの2個しか無いわよ!」


“いらんわソレは”とツッコミながらも、放られた弾丸ケースを受け取ろうと、視線はへーラーに向けたままマキーナが指定する座標に移動する。


当然、その俺の隙を見逃すへーラーではない。


「させるか!

“万物万象を司る力よ、今ここにその片鱗を示せ!”

“空間よ、止まれ!!”」


俺とへーラーを包むように、灰色の結界が包み込む。

マキーナが何かを言いかけていたが、その言葉は届かなかった。


「ハハハ、アハハハハハ!!

所詮は人間よのぅ。

これはガイアの子、クロノスの奥義!

神の力を束ねた妾だからこそ出来る、人の身には出来ぬ魔法なのだ!

どうだ?止まった時の中で、何も解らぬまま死ぬ気持ちは?

いや、失礼、ソレすらも考える時間は無かったな!」


灰色の空間で、へーラーはゆっくりと歩み、そして止まる。


「クッ、何故だ?

ただ空間の時を止めただけではないか。

何故こんなにも体が……重いのだ……。」


<ブーストモード、無事に起動しました。>


もういいか、と思い、固定していた体を動かす。

へーラーが、驚愕の表情でこちらを見ている。


『何故?だよな。解るよ。

多分なんだが、この魔法、オリジナルなら“完全に静止した空間”何だろうと思うぜ?

ただな、俺のブーストモードは、それに近い現象を引き起こしてるんだわ。

“皆を止める”のか、“自分が加速する”のかっていう違いはあるが、行き着く結論はほぼ同じなんだよ。』


俺は、空中に浮かんでいる弾薬ケースを取ると、マキーナがソレを取り込む。


『加速した、或いは静止した状態で、一番の敵は“空気”なんだよ。

他にも、思考するために必要な脳内の電気信号や何やらって言う問題もあるけど、俺達を取り巻く空気の壁が、実は一番行動を阻害するんだ。

多分なんだけど、この魔法を使うクロノスさんは、“時間を止める”と“その影響を自分が受けない”の2つを同時に使ってたんじゃないかな?』


「そんなはずは無い!奴の記憶にも、“時を止める魔法”と……!?」


言っていて、自分でも気付いてしまったらしい。

“時を止める魔法”と、“その中で動く魔法”の2種類があることに。


まぁ、引き継ぎの無い仕事みたいなモンだな。

最初にソレを作った人間からの引き継ぎがなければ、そう言う小さな所でミスをやらかす。

或いはこれは、敗北し能力を取り込まれたクロノスが仕込んだ、小さな地雷と言うことだろうか。


<ブーストモード・セカンド>


全身の黒い装甲が赤く光り、全身が粒子化する。


「な!?何故だ!?

何故キサマは何の抵抗も無しに動ける!?」


空気の抵抗をモノともせずにへーラーに近付く俺に、へーラーは怯える。


『この状態だとな、俺の体は粒子化してるらしい。

何言ってるか解らねぇと思うが、俺もあんまり解ってねぇから安心しろ。

まぁ、空気の粒子を避けて歩くことが出来るっていう、便利なモードだ。

まぁ、欠点は“攻撃すら出来ない”って事だけどな。』


へーラーの近くで構え、そしてセカンドから普通のブーストモードに切り替える。


『2億年近く鍛えた肉体で、むりくり空気抵抗の中を動いてるんだ、お前もそれくらい気合い入れて避けろよ?』


透明な粘土の中にいるような重さに耐えつつ、拳を放つ。


丁度へーラーの腹部に当たったときに、空間を停止させる魔法が切れる。


「グボォアァ~~!!!」


とても人間とは思えないような叫びをあげながら、へーラーは吹き飛び、そしてユーピテルのシリンダーにぶつかり、止まる。


「あ?え?あれ?

……何かへーラー、いきなり吹き飛んでるわね……?」


ケースを投げたヘーファイトスが、突然のことにキョロキョロと俺とへーラーを交互に見る。


<銃弾の取り込み、完了しました。>


へーラーがぶつかった衝撃からか、シリンダーの中の液体に浮かぶユーピテルが意識を取り戻す。

これまでの事を理解しているのか、俺を見ると穏やかに笑い、頷く。


『ヘーファイトス、丁度良い機会だから見せとくよ。

この兵器の、行く末ってヤツを。』


左腕の銃身を、二人に向ける。


『最後通告だ、へーラー。

俺はお前が知っている“原初の混沌(カオス)”の座標が知りたい。

どうやって行く気だった?

ソレを話すなら、お前を殺す気は無い。』


へーラーはボロボロになりながらも、不敵に笑う。


「誰がキサマのような人間如きに教えるものか!

我が脳を調べようとも決して解らぬように、既に記憶から消去してやったわ!!

アハ、アハハハハハ!!」


『だろうな。』


電動ノコギリのような連続する強烈な音が響き、取り込んだすべての弾丸を吐き出す。


シリンダー前にいるへーラーは勿論、シリンダーの中にいるユーピテルすらも、無数の銃弾は引き裂いていた。


<通常モード、終了します。

アンダーウェアモード、実行します。>


変身が解け、それまでの負荷が俺を襲う。

俺が膝をついたその時、2人の肉体から強い光が溢れ出し、全てを包んでいた。

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