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異世界殺し  作者: Tetsuさん
光の剣
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19:冒険者ギルドへようこそ

腰の剣を抜刀し、彼の背中と馬との間に入る。

あの爪や牙で噛まれでもしたら、生物兵器がハザードするような感じで連鎖感染することになってしまうのだろうか。

そうでなかったとしても、ばい菌とかでマズいことになりそうだよなぁ。

全身鎧とかあれば……。


そこでやっとマキーナの事を思い出し、ブルータス氏の目も気になるが、ここは諦めて装備しようと考えた。


が、肝心のマキーナは上着のポケットに入れっぱなしで、しかもその上着は通勤鞄に入れて布で巻いてリュックにくくり付けてある。

早速習慣化出来ていない。

どう足掻いてもすぐに取れないことを悟り、諦めて手持ちの剣で戦うことにした。


中学、高校と、授業で剣道をやっていた。

竹刀なら振ったことはあったが、金属の剣は初めてだ。

それでも剣は剣だから何とか行けるだろうと、目の前の腐乱死体に振り下ろし、薙ぎ払った結果、非常に難しいことがわかった。


“剣の刃を立てる”事が上手くいかない。


ましてや両手では無く、片手で振り回すものだから尚のことグリップが効かず、もはや鈍器で殴りつけているのと何も変わらない。

動きが鈍い腐乱死体達だから良かったが、これがちゃんとした生物なら間違いなくやられていた自信がある。


終わってみれば、10体近くの腐乱死体達をブルータス氏が倒し、俺は人型と狼型の1体ずつを倒すのが精一杯だった。


「アンタ、剣より棍棒とかの方が良いんじゃねぇか?」


とブルータス氏に真顔で言われたが、恥ずかしすぎて返す言葉が無かった。


「まぁ何にせよ助かったよ。

最近街道沿いにこう言うのが出没するらしいと聞いてたからな。

馬まで守るのは俺一人だと手が足りないから、強引に一緒に野営してもらったって訳だ。」


そう言って二ヒヒと笑うと、腐乱死体達の胸当たりを次々と裂いて何かの石を取り出していた。

迷惑料だといい、取り出した石の12個の内、8個を俺にくれた。

“あぁ、これが魔原石ってやつか”

と思いながら、ありがたく頂戴した。


確かに俺一人なら逃げる事も出来たかも知れないが、その時は装備の幾つかを捨てて逃げることになっただろうし、“冒険者の戦い方”をこの場で教わる事が出来たと思えば、この夜の経験は非常に貴重だった。


その事を告げて感謝すると、

“アンタ剣の腕は大したことないが、筋力と観察力は非常に冒険者向きだ。

路銀に困ったら手っ取り早く稼げるから、冒険者ギルドに登録しておくことをお勧めするぜ”

と照れながら言われ、翌朝出発するときに紹介状を書いてもらえた。

強面なおっさんの照れ顔は正直怖かったが、これも何かの縁だと思い、ありがたく受け取った。


悩みは残るが、まずは転生者の彼に会いに行こう。

合って話を聞いて、それから考えよう。


その晩は、それ以上腐乱死体達も襲っては来ず、交互に睡眠と夜警をしながら夜を明かした。

朝になり、ブルータス氏に手を振り別れを告げると、俺は王都へと歩き出した。


道中、誰も見てい無さそうなところで、とりあえずマキーナは取り出しておいた。

昨日使われなかったからか、何故かマキーナが不機嫌そうな反応だった。


「よし次、何か許可証は持っているか。」


王都と言うだけあって、石の壁に守られ、数カ所しか無い出入口には人が列をなしており、非常に待たされた。

前に並んでいた数人がどうやって通過するかを確認していたが、基本的には皆同じく、門番と思われる金属鎧の衛士に、そこで許可証の有無を確認され、持ってなければ出身地や目的、滞在期間を聞かれ、入国料として銅板1枚を支払っていた。

俺の番になり、“出身地を聞かれたらなんて答えるかなぁ?”と思いながら、エル爺さんから受け取ったコインを見せる。

一瞬、門番の衛士が厳しい目をした。


「このメダル……お前、エル先生とはどういう関係だ?」


おいおい出たよ出たよ、これあの爺さん専用のアイテムとかそっち系じゃねぇか。


背中に嫌な汗をかきながら、平静を装いながら、大雑把に経緯を話した。

旅をしている最中にあの村に立ち寄った事、酒場で暴漢を叩きのめして、エル爺さんに気に入られた事、王都に行くと言ったら貰ったが、自分としては返すつもりでいる事。

貰うまでの正当性がありそうな流れで事のあらましを説明すると、門番の衛士は笑顔になった。


「そうか、疑って悪かったな。

このメダルはこの国で発行された、数少ない滞在期間無期限の自由通行証なんだ。

これはかなり貴重な物なんだが、エル先生が君に預けたと言うことは、先生が君の身元を保証したも同然だ。

だから君が何か悪さをすると、エル先生にも迷惑が及ぶ。

十分、注意しなさい。

それと、返す時でかまわないから、門番のカインがよろしく言っていたと、伝えて欲しい。」


優しい世界で良かったぁぁぁ!!

心の中ではそう叫びつつ、門番の衛士さんにお礼を言って入国する。

入国料すら取られなかった。


若い頃は無茶もやったとあの時言われていたが、これは相当何か実績を積んだのだろう。

返しに行くときは、酒の1~2本は持っていかねばと思いながら、リュックを背負い直し、王都の雑踏に紛れる。


転生者に会いに行きたいが、先立つ物も欲しい。

先ずは冒険者ギルドとやらで登録をするために、ブルータス氏にあらかじめ聞いていた場所へと足を向けた。


もう少し迷うかとも思ったが、目的の建物は周辺の建物より頭1つ2つ高く、遠方からでも視認することが出来ていた。


“2階……いや3階建てかな?”


石とコンクリートでミックスされたような、何となく近代的なビルであり、壁面に[冒険者にお任せあれ!冒険者ギルドへようこそ!]という文字が彫り込まれているのが見えた。


もはや文明に関しては何も言う気が無かったが、今まで見てきた中で水洗トイレと1、2を争う場違い感だった。


何も考えないようにしながら、入り口のウエスタン風のスイングドアを押しあけて中に入る。

入り口から真っ直ぐ行くと受付のようなブースが見える。

右手には掲示板に木の板が何枚か貼ってあり、ブルータス氏の様な格好をした男女が数人、品定めをするように見ている。


左手は酒場兼食堂になっているようだ。

まだ日は落ちきっていないが、出来上がっているのが何人かいる。


“おお、すげぇ、冒険者ギルドだ”


アニメやマンガ、ライトノベルでお馴染みの風景がそこにあった。

感動していたが、“兄ちゃん、早く入れよ”と後ろの人に言われて慌てて中に入る。

何とも締まらないスタートだが、まずは冒険者登録だと思い直し、受付に向かった。

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