第7話 勃起しませんでした。
「勇者様、今、先生が来ますからね。あぁ良かった~勇者様が目覚めるなんて」
そう覗き込んできたのはウクライナ美少女?ロシア美少女?と言うような感じの白い肌とポニーテールで長い髪をまとめているピンク色のナース服を着た人物だった。
看護師も働き方改革?外国人受け入れ?
俺の田舎の茨城の病院もずいぶんグローバル化?してるんだな、ってその「勇者様」って何?
「勇者様?なにを言っているの?」
声はかろうじて出た。
「しばらく寝ておられたので記憶が混乱しているのでしょうか?あなた様は勇者リューヤ様です。追々思い出すはず大丈夫ですよ、ここは病院ですから」
と、涙を流しながらも和やかに笑おうとしている看護師を前に言葉が出なくなってしまった。
頭はまだクラクラする。
眠気というのか眠いわけではないのだが頭がちゃんと働かない。
言葉も何を言って良いのかわからない。
整理が、脳内処理が追いつかない。
「あっ、勇者様のオムツまだ途中でした。今閉じますからね」
40歳目前でオムツをするとは思っていなかった。
それをこんな美少女が交換してくれているなんて。
しかし、恥ずかしさは勿論あるが萌る。
が、生理現象「勃起」は起きない。
どうやら本当に死線をさまよってそんな元気はないようだ。
血がそちらに回ろうとしていないのだろう。
それはむしろありがたい。
看護師さんは職業柄慣れているのだろうが、そんなオムツを交換して貰っているのに勃起をするなんて失礼だ。
下血して運ばれたからオムツも血だらけなんだろうな。
そんなのを綺麗に拭いて交換してくれているのだろう。
感謝しかない。
自分が無理をせず早く病院にさえ行っていればこんな迷惑をかけることがなかったのだろうと悔し涙がポロリと頬を伝った。
「なにを泣いているんですか?勇者様のオムツを交換できてこちらが光栄なくらいなのに」
と、まだ訳のわからない呼び方が続いていた。
「先生、こちらです。勇者様先ほど言葉も出されましたよ」
俺の顔を覗いてきたのは、20人近くいる白衣の初老の先生?人々だった。
「おおおおおおお、良かった。勇者様の意識が戻ったぞ」
「打ち首にならないで済んだ」
「俺なんか火炙りだと脅されていたぞ」
「俺なんか、銃殺刑だっていわれていたぞ」
なにを物騒な話しをしているのだと思いながら俺は再び夢の世界に落ちた。