第6話 異世界転生は病院でした。
物語と言うものは、日常から非日常に変わる時に始まる、一番のお約束と言えば美少女の突然の登場。
学校に行く朝、出会い頭にパンを咥えた美少女とぶつかったり、時季外れの転校生が美少女幼馴染であり、そこから学園ラブコメと言う物語が始まる。
朝、鳥に餌を与えた後ラッパを吹いていたら美少女が空から降ってきて、奇想天外摩訶不思議冒険ファンタジーが始まったり、そして、お約束的な死から始まる転生記、トラックにひかれそうな子猫を助けるが、自分が死んだり、なにを勘違いしたかゆっくり走るトラクターから助けようと飛び出し、美少女を突き飛ばしてケガをさせたあげく自分はショック死して転生をし物語が始まったりする。
そして、俺は夢から目覚めたように女性の会話が耳に入って意識を取り戻しつつあった。
2人の女性の会話のワードから異世界転生がほぼ確定だろう。
「はい、勇者様、腰あげてください、おむつ交換しますからね」
「だめよ。勇者様は魔王の呪いのダメージが強くて意識回復するかもわからないのだから」
「え~でも、ほら、話しかけた方が目覚めるかもしれないじゃないですか~」
「まあ、それもそうだけどほら、今はしっかり体抑えておむつの交換と、おちんちん拭いてあげないとかぶれちゃうから、勇者様の立派なおちんちん、ちゃんと拭かないと」
「は~い、勇者様の介護が出来るって光栄ですよね、先輩」
・・・・・・。
下半身・・・・・・。
誰かに触られている?
え?
なにが起きている。
俺は生暖かい湿ったタオルで自分の下半身を拭かれている感覚で、目が覚めた。
ベットの上。
天井は白く周りは薄き色のカーテン。
そして、腕は・・・・・・。
俺は重い重い腕を上げ手のひらを天井に向け自分の手を見た。
「あっ、生きてる、生きてるよ、俺」
と、苦しいながらも声を出すと、介護をしてくれていた2人がオムツを放り投げ、介護用品やら薬やらが置かれている荷台を倒して慌てふためく、
「婦長大変です。勇者様が、勇者様が目、目を開けてます」
「先生、先生、すぐに来てください」
と、俺が自分の腕を上げると下半身を拭いていてくれた二人が大騒ぎとなっていた。
あぁ、俺、死にかけていたのか。
だから、こんな大騒ぎになるのか・・・・・・。
頭がと言うより全身が重く動かせないでいる。
今、見られるのは首と目が動く範囲だけだ。
腕がかすかに動かせる程度。
点滴がつないであるのが確認できる程度。
声の主まで確認できない。
「ああ、神よ、勇者様のお命を御救いになったことを感謝いたします」