第44話 町に出てみました。
今までとは、ちがう空気が流れる屋敷での生活に少々息詰まり感があり気分転換に町に出てみることにした。
大体一生屋敷で引きこもり生活もしたくはないので。
「ハイトン、町に出たいから案内頼める?」
「勿論です。師匠」
「目立たない服装と、少し顔を隠せる物を頼むよ」
と、ハイトンに頼んだ。
なんせ、ここの世界では俺は有名人。
新聞の一面に顔が載るくらいに。
ハイトンが用意してくれたのは一般的な軍人の服らしい。
そして、サングラス。
「あ、師匠、これ薬入れに使えってシェルリー王女から。中にはプルート先生が調合したお腹のお薬が入ってます」
と、先日紋章にして貰った丸に荒枝付き右三階松が描かれた真鍮で出来た印籠だった。
・・・・・・水戸黄門か?
まぁ、皆がこの紋章を知っているはずもないだろうと腰にぶら下げ町へ出た。
今日は『市の日』らしく、町はお祭りのように露天が並び賑わっていた。
野菜や肉、魚だけでなく、反物や、装飾品などが売られている。
「師匠、なにか買いたい物があれば言って下さい。お金は持ってきてますから」
と、ハイトンが財布をチラリと見せてくれた。
買いたい物か・・・・・・。
特に生活に困っていないしなぁ。
「まあ、気晴らしにプラプラしたいだけだから」
と、歩いていると一軒の銀細工を売る店が目にとまった。
花などを細かく彫り込んだクシ。
「へい、いらっしゃい。買わなくても良いから見てってくだせいよ。軍人さん」
「見させていただきます」
と、見ていると
「師匠、アリエッタの姉貴にプレゼントですか?」
「あっ、良いね。いつも世話になっているからクシくらいは買ってあげたいね。このブローチでも良いかな?プルート先生にも世話になったから買うか・・・・・・シェルリー王女も悲しませて悪いから・・・・・・買うか?」
「え?王女様?」
と、店主が言ってきたが、
「聞き間違えでは?陛下に物を送れるような立場ではないですよ」
「そうですか?確かにシェルリー王女と言ったような・・・・・・。って、女性三人にお配りになるなんて軍人さん、見かけによらずプレーボーイですね」
「ははははは、最近モンスターに手傷を負わされて世話になっていただけだから」
と、言いながらクシを選んだ。
髪を解かす部分は木で作られ、装飾に銀で桜、梅、桃の花があしらわれた三つを選んだ。
「ハイトン支払お願い」
「三つも買ってくれる軍人さんにはお安くしておきますぜ」
「ありがとう。これって、店主自ら作っているの?」
「もちろんです。なかなか売れなくてね~」
「良い仕事しているのに。銀細工細かくて良いと思うのになぁ」
「職人冥利に尽きるってもんですぜ、軍人さん」
「がんばって続けてね。また、買いに来るから」
「ははははは、軍人さんはやっぱりプレーボーイですね。他の女にもプレゼント?羨ましい」
「ちがうって。ははは。」
クシを一つ一つ桐の箱に入れて貰い、プレゼント出来るように包んで貰った。
良い買い物が出来た。
町の人と何気ない会話が出来て少し気分が晴れやかになり、心のモヤモヤを忘れることが出来た。
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