第28話 異世界は昭和のようです。
出発した馬車が病院の敷地から出る。
すぐに大通りで、普通に馬が引く馬車が行き交っている。
そして、自転車。
この世界には自動車はないみたいだ。
窓からこの世界を理解しようとずっと観察していると、平成の時代、ドラマや映画、博物館などで再現されている昭和40年代のような町並み。
トタンのような物で出来た小屋と読んでしまいたくなるような家、今、建築中の木造の家、焼け焦げた木造の柱を倒している所、そして、電柱と電線。
高い建物は見当たらない。
無言で景色を眺めているとアリエッタは特になにも言ってこない。
もしかしたら、景色を見て、記憶が戻れば良いと思っているのかな?
15分くらい進むと、一面焼け野原、真っ黒の柱が並ぶ、元住宅街のような所に景色は変わった。
「止めてくれ」
と、馬車をおりこの辛い景色をしっかりと見なくてはと。
「ハイトン、止めなさい」
と、アリエッタが指示して止めさせた。
ハイトンが開けるドアを待たずに自ら外に出た。
「これは火災か?」
と、聞くと、
「いえ、魔王軍の襲撃により焼け野原となりました。多くの人たちが亡くなりました」
「ひどいことをする物だ」
「私の村もこのように焼け野原になり・・・・・・」
と、アリエッタは言葉を止め、泣くのをずっと堪えているようだった。
「今は、もう魔王軍は大丈夫なんだよね?」
「・・・・・・はい。魔王が死んだため、支配されまとめられ軍を形成していたてモンスターは野に帰りました。今は、その中で単独で村を襲い食糧を取るようなモンスターが単発的に現れるので、一緒に旅をしていた皆様が、それぞれ討伐隊を率いて各地に派遣されています」
モンスター、平成の時代で言えば、熊や猪、猿みたいな物か?
それが魔王により支配されていた。
魔王が消えて統率がとれなくなった物は、元の生息域に戻った。
しかし、人が作る物の味を一度覚えてしまった物は、・・・・・・。
「ここは大丈夫なの?」
と、聞くと、
「えぇ、この王都ミトは御主人様が最後の戦いに行く前に、結界を貼りましたから。今でもそれは有効なんです」
と、言う。
・・・・・・昔、読んだ漫画で、額にドラゴンの紋章を持つ主人公の師匠が島でそんなことしていたな。と、思い出す。
今の俺にもその様な事は出来るのだろうか?
戦闘力って記憶と共にリセットされた?
なにか確かめられれば良いのだが。
「さっ、御主人様、退院されたばかりなのですから、外の風に長く当たり冷えてはいけません」
と、アリエッタが馬車に戻るよう促して来たので、大人しく馬車に戻った。




