第19話 勇者の好き嫌いは危険でした。
しばらくすると、朝ご飯が運ばれてきた。
ハムと目玉焼きに、オクラのおひたし、漬け物とご飯と牛乳。
なんとも、現世の日本と同じような食事はうれしいが、味気がない病院食。
そして、俺が魔界から来た食べ物認定を勝手にしていた、オクラが異世界にも存在する。
やはりオクラは異世界の食べ物に間違いない。
獅子唐と、さほど変わらない見た目なのに、このぬるぬるネバネバが許せない。
納豆はネバネバしているのが常識だから許せるのだが、野菜でぬるぬるネバネバ、これが許せないのだ。
生産者には悪いが、本当に体が受け付けない。
食べようとすると、えずいてしまうくらいに。
オクラは手を付けずに残すと、
「食べないと駄目ですよ」
と、当たり前に言うアリエッタ。
「俺は嫌いな物は食べない主義だ。嫌いな物を食べると脳は拒否して体に良くない。食べない物は食べない」
と、言うとアリエッタは何も言わずに少し険しい顔をして膳を下げた。
すると、廊下から聞こえてくる声、
「何だと、勇者様に嫌いな食べ物を出しただと!料理人は誰だ?打ち首物だぞ!次はないぞ」
との大声が聞こえたあと、アリエッタが戻ってきた。
「打ち首?冗談だよね?俺に嫌いな食べ物出したくらいで打ち首?」
「冗談では有りません。今回は初めてなので許されましたが、次は・・・・・・」
と、口ごもった。
こりゃ~なんて地位に居るんだ俺は?御貴族様みたいな者か?
しかし、食べたくない物は食べたくない。
うっ、どうしよう。
俺の偏った食生活、死人が絶えないぞ。
ん?そうか、あらかじめ嫌いな食べ物を伝えておけば良いのか?
だが、文字は通じるのか?アリエッタに書き留めて貰えば良いのか?
「アリエッタ、メモして」
と、言うとアリエッタはすぐに胸ポケットから手帳とシャーペンを出した。
あれ?この異世界シャーペンがあるほど文明が進化しているのか?と、考えながら手帳を見ると『御主人様との愛の生活』と書かれている。
異世界文字が読めるどころではなく、間違いない日本文字だ。
これ、本当に異世界なのか?
大掛かりなドッキリテレビ?などと、思うなかアリエッタが真剣に構えているので、
「嫌いな食べ物、オクラ、パプリカ、火がしっかり通っていないピーマン、火がしっかり通っていない玉ねぎ、生のトマト、硬い肉、脂身のない肉、激辛料理、醤油で煮た魚、野菜を醤油で煮た物、臭い豆、オカラ」
異世界にあるのかわからないが、嫌いな物を言うと、全てを書いていた。
「御主人様、これでよろしいのですね」
「あぁ、構わない。構わないのと、もし俺が食べ物を残しても処罰はなしにしてくれと、まとめ役にはつたえてくれ」
「はい、わかりました」
と、部屋を出て行った。
本当に異世界なのかな?・・・・・・。




