第17話 食事は意外にも日本的でした。
夕飯をアリエッタが運んできた。
蓋を取ると意外にも見慣れた料理。
魚の煮付け、芋の煮物、青葉の野菜のおひたしに、味噌汁とご飯。
この異世界は中世ヨーロッパではないのね。
訳の分からない蛙の肉だか、モンスターの肉を食べるよりは全然良い。
そういえば異世界転生って、なぜに必ずといってよいほど、中世ヨーロッパなのだろうか?
平成の時代と同じ文化レベルの異世界だってあって良いのでは?
俺がラノベを書いていた頃、ネットでは中世ヨーロッパの転生物が多すぎて、『ナーロッパ』などと、言われていたっけ。
逆に進んだ文化の未来の異世界だってあって良いのでは?
中世なら、戦国時代の日本だってあっては良いのではないだろうか?
この異世界は食事は和食、外界はどうなんだろうか?
文化はどのくらいなのだろうか?
テレビと携帯電話ぐらいある平成中期くらいの文化レベルだと良いのだが。
部屋はゴージャスな病室だが、平成でも大学病院の特別室ならありそうなレベル。
俺が寝ているセミダブルベッドに、一人は軽く横になれそうなソファーとテーブルの応接セット、窓から見える景色はだけでは判断できない。
ドラゴンが飛ぶ、昭和のような発展途中の町が見えるが。
異世界と言われなければドラゴンに見えるのは小型飛行機と勘違いしてしまいそうだ。
そんな事を考えながら、アリエッタの熱い視線を感じながら食事を済ませると、
「わぁ~、御主人様、ちゃんと、ご飯食べられる」
と、両手の平を口に当てアリエッタはボロボロと大きな涙を流していた。
「大袈裟だな」
と、一言呟いた。
アリエッタ、感情表現が少々大げさな娘なのだろう。
別人格の俺が、アリエッタの唯一無二の存在だと考えてしまうと自分自身納得してしまう。
昔、父親が突然倒れて病院に運ばれた時、駆けつけると父親は平然としていた。
夕飯を食べるのを見て安心して帰ったが、父は、それが最後の力を振り絞って見せた男の意地・・・・・・。
いや、父親として弱さを見せようとしない、プライドだったのだろう。
翌朝、父は母に看取られながら静かに旅立った。
だが、俺はそんな意地を見せているわけではなく、本当に調子がよい。
まるで二十歳の頃、吉原でソープランドをはしごした頃ぐらいに体が軽い、絶好調だ。
「アリエッタ、本当に大丈夫だから。膳を下げてくれるか?それと温かいお茶を飲みたいが頼んで良いか?」
「はい、すぐに用意しますね。夜、眠れるように心休めるハーブティーにしますね」
と、持ってきてくれたお茶は、優しい香りがするが臭味がない優しいお茶だった。
それを飲むと不思議とまぶたは重くなった。




