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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

暗い画面のスマートフォン

作者: 霜月うまれ

それは、ある夏の日のことでした。

平凡な中学生だった僕は、

顔から汗を滲ませながら今日も学校へと急ぎます。

近年稀に見る猛暑日だったのを覚えています。

僕の住んでいる地域は住宅街で、家と家の間の

狭い道路に、たまに通る車。空き地には、

適度に草が生い茂っているような所でした。

その頃の僕は、少し退屈な日常から

抜け出したかったのかもしれません。


学校に着いた僕は、既に登校していた友人と

HRが始まるまで適当に話をします。

この日も、退屈な日常の一コマとなるはずでした。

友人があの話をするまでは......


「そういえば、あの噂知ってる?」


その友人はこんな風に話し始めたと思います。


「あの噂?あの噂って何だよ」


「あれ、知らないの? 結構広がってるぜ?」


僕はその手の話には疎いので、話を進ませます。


「初耳だよ、何て噂?」


「ざっくり言うと、怪談だな」


何だ怪談かよ、そう思いました。どうせ、

女子の誰かが自分の体験談を脚色して

周りに語っているだけだろうと友人に

言いました。すると友人は即否定してきました。


「そんなしょぼい話じゃないぜ、証拠がある」


そういうと友人は、スマホを取り出し操作すると、

僕に見せてきました。なにかのURLが画面に移し

出されていました。


「このURLが何だよ?」


何が怪談なのか分からず、疑問を口にします。


「このURLにアクセスするとな?」


すると友人はURLをタップし、アクセスをします。

開かれたサイトにはただ一言、

[メールアドレスを入力して下さい ]

という文字と、入力欄があるだけでした。


「何だこれ?詐欺サイトかな?」


「違うって!これが怪談なの!!」


僕の言葉に即返答する友人。しかし、このサイトのどこが怪談なのか分からず

友人に聞き返します。


「えぇっと......ごめんホントにわからん」

「これのどこが怪談なんだ??」


友人は僕の疑問を受けて、更に説明を続けます。


「この欄にメアドを入力したら、その日になにか恐ろしいことが起こるらしいぜ」


「アホか」


僕は思わず言ってしまいました。でも仕方が無いと思います。


「確かに恐ろしいことが起こるだろうな」

「だって詐欺サイトなんだもん」


そういう僕に友人はしつこく詰め寄ります。


「だから違うって!! 詳しくは知らないけど、やばいことが起こるらしいぜ」


友人はその時、この話についてよく知らなかったようで、とりあえず何か

起こるらしい、ということしか話しませんでした。


「そんなあやふやな話が広まってるのか?」

「やっぱり女子の誰かが言ってるだけじゃ...」


「そんなことない......と思う」


友人もデタラメなのでは、と思い始めたようで言葉が弱くなっていました。

此処で担任の先生が来たため、この話は中断しました。

この日の友人は授業中ずっと俯いていました。


そして、その日の放課後のことです。


「なあ、俺やっぱりあの噂本当だと思うんだ」


そう言って話しかけて来たのは友人でした。

またその話かとうんざりしていた僕はすこし冷たく言いました。


「そうか、信じることは自由だからな、じゃあ僕帰るわ」


そうやって帰ろうとする僕を友人が慌てて止めます。


「おいおい、此処からが本題だって!! いいから聞いてくれよ!!」


あまりにも必死に止めるので渋々話を聞くことにしました。


「わかった聞くよ、本題って何?」


「あぁ、実は今日この噂が本当か確かめようと思う」


真剣な顔で言う友人でしたが、それならわざわざ

僕を呼び止める必要はなかっただろうと言うと


「何を言ってるんだ、君も一緒にやるんだよ」


と、なぜか僕も参加することになっていました。

当然僕は嫌なので断ろうとしたのですが、


「頼むよ、俺だけだと噂が本当だって証明しても

信じてもらえないかもしれないだろ?」


そう言うと友人は頭を下げます。僕も退屈な日常になにか

刺激が欲しいと思っていたので、その話に乗ることにしました。

友人がしつこかったからと言うのも、理由の1つかもしれません。


「わかったよ、そこまで言うんなら付き合ってやるよ」


それを聞いた友人は心底安心したように息を吐いて、

ニコッと、満面の笑みを浮かべます。


「あぁよかった、本当に助かった。ありがとう」


頼みを聞いただけなのにこんなに嬉しそうにするので、僕は言いました。


「おいおい、噂が本当かどうかはまだわからないぞ、喜びすぎんなよ?」


友人はキョトンとした表情をした後、苦笑いを浮かべます。


「そ、そうだったな。じゃあ、今日の夜にURL送るからな」


そう言うと友人はさっさと帰っていきます。

少し変だなと思いましたが、気にするほどでもないので

僕も帰りました。


そして、夜の11時頃。友人からのメールを待っている間

僕はパソコンを使って、学校の掲示板でその噂話について調べていました。


曰く、『誰かから突然URLが届くらしい』『自分のことは知られてはいけない』

『すでに何人か犠牲者が出ている』などのような書き込みがしてある。

自分のことを知られてはいけないというのは、誰に知られてはいけないのだろう、

あのサイトを作った人にということだろうか?

そもそも、人かどうかすら怪しいのではないか?

そんなことを考えていると、友人からメールが届きました。


『確かに送ったからな? 今すぐに開けよ?』


そんな言葉とともに、あのURLが添付されています。

僕はそのURLからあのサイトに飛び、メールアドレスを入力します。


すると、しばらくしてからメールが届いた。知らないアドレスからでした。

開いてみると一言だけ、『呪いの画像』と書いてあり、スクロールすると、

画像ファイルが添付されていました。

僕は生唾を飲み込むとともに、腹を括ってその画像を開く。すると......


「なんだ? 真っ暗な画像?」


そこには、ただ黒いだけの画像がありました。

電源が落ちたのかと思いタップしてみますが、ちゃんと反応します。

いつまで待っても暗い画面のままなので、やはりデマだったと

スマホを閉じようかと思うのですが、何か違和感がします。

ただ暗いだけの画面のはずなのに、何かがおかしいと思うのです。


「なんか変だなぁ。どこが変なんだ?」


自分でもよくわからないまま、しばらく画面を見つめていました。

すると、とんでもないことに気がつきました。

顔から血の気が引いて行くのがわかりました。

何かの間違いだと、画面の角度を変えますが画面の中の異変は変わりません。

【反射して映るはずの僕の顔】が、そこには写っていないのです。

首から上が綺麗に消えていて、僕の背後の部屋の様子が写っています。

鎖骨や肩は変わらずに写っているのが逆に不気味でした。


「な、なんだっこれ!?い、一体どうなって......」


そこに、またメールがきました。ビックリしましたが開いてみます。

そこにはこう書いてありました。

『このURLを他の人に送らないと、画像のとおりになる』

『期限は明日の午前0時だ』

添付されていたのは見覚えのある、あのURLでした。


「明日の午前0時......?もう、5分もないじゃないか!!」


僕は焦りました。時計を確認すれば11時56分。すでに5分を切っていました。

友人や家族に送るわけにはいかない、だがしかし時間がない。

僕は焦っていました。そして目の前のパソコンを見て何を思ったのか、

そのURLを学校の掲示板へ書き込んでしまったのです。


それから、0時が過ぎても体に異常はなく。僕は眠りにつきました。

今思うと、学校の誰かがあのURLを開いてしまったのでしょう。

不特定多数の人を巻き込んでしまったのです、後悔しています。


次の日、こんな事があったので、僕は友人に相談しようと思いました。

友人も同じことを体験しているはずなので、情報を共有しようと思ったのです。

学校に登校した僕は、友人が登校してくるのを今か今かと待っていました。


その日、友人が亡くなったとHRで知りました。


なんでも、首から上がなくなった状態で発見されたようです。

そこで僕は、友人がURLを送らなかったのだと思いました。

誰かを巻き込むことなく自らの死を受け入れたのだと。

そう思うと、今生きている僕はなんて無様なんだろうと、恥ずかしくなりました。


それからの僕は、せめて友人の分まで生きようと、今まで頑張って来ました。

ですが、最近気づいた事があるのです。

誰かを巻き込まないようにしたかったのならば、なぜ僕を誘ったのでしょう?


長い間考えていたのですが、これしか答えが見つかりませんでした。

彼は僕を犠牲に生きようと考えたのではないでしょうか?

最初にこの怪談を話した後、彼は授業中ずっと俯いていました。

もしかしたら、スマホであのURLを開いてたのではないでしょうか?

そして、僕と同じ体験をしたと思います。そのとき、送る人に僕を選んだのでしょう。

恨みがあったのか、許してもらえると思ったのかは、今となってはわかりません。


あとは、何食わぬ顔で僕に協力を頼み、URLを送った。

時間ギリギリに送ったのも、もしかしたら作戦だったのかもしれません。

ここで疑問なのが、友人はなぜ死んだのかということです。

これは多分、掲示板にあった『自分のことは知られてはいけない』という

ルールに引っかかったのではないでしょうか?


『自分のことは知られてはいけない』というのは、受信者(あいて)送信者(じぶん)

のことを知られてはいけない、という意味ではないではないでしょうか。

僕は、匿名の掲示板に書き込んだので助かった。

友人は、自分のことも、送ってくることも事前に知っていた僕に送ったのでダメだった。

そう考えると辻褄があうような気がします。確かめる術はもうありませんが。


今となっては思い出すことしかできませんが、これが僕の体験した出来事です。

少しでも楽しめたのなら幸いです。










さて、話が終わってしまったので次は僕から()()()へ質問です。


最近、変なメールが送られて来ませんでしたか?

スマホの画面に反射するあなたの顔は、ちゃんと映ってますか?


映っていないのなら、今すぐメールを確認してください。

手遅れになる前に......


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