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閑話 歌劇場の名を冠するお菓子 上

夜中に唐突な更新です。

タイトルを見てにやっとしていただけたら嬉しいです。

 俺が出所してから数日後の昼下がり。建築の方もだいぶ進んできた。

 

 俺達は現在、ギルドホーム近くの宿を貸しきりにして滞在している。ホームの建築が終了するまではここに滞在する予定だ。


 今日は朝から魔物の襲撃があった為、この後の建築は休みになった。という訳で現在、俺達は絶賛暇をもてあましているのである。


「よし、なんか作ろう」


 と言った途端に、ミアがぐるん、と首を回してこちらを向いた。その振り向き方はホラーっぽいからやめろ。


「その言い方は何かまた凝ったものを作るときの奴ですね。今日は何を作るんですか? ご飯ですか? お菓子ですか?」


 俺に飛びついてきて肩を掴み、ガクンガクンと揺らしながら聞いてくるミア。どうでも良いけどお前薄着でそんな事するから見えちゃいけないもんが見えそうだぞ。もっと慎みを持ってくれ。


「ちょ、ちょっと放せ。そうだ、ちょうど良い。エアリスさんの呪いが完治した祝いにしよう。クラリスー! エアリスさんの好きなものって何かあるかー?」


 ちなみにエアリスさんは今はここに居ない。例の怪物ジェニーとランチに行っているらしい。ぱっと見はエルフの少女と、女装マッチョがランチとか。絵面が大変な事になってそうだけどな。


「母様ですか? そうですねー。甘いお菓子とかが好きですよ」


 甘いお菓子ね。了解。









「アサギさんとこうしてお出かけするのって、もしかして初めてじゃないですか?」


「あー、確かにそうかもしれないな」


 俺とミアは、食材の買出しの為に、少し離れた商店街へと足を運んでいた。今日は俺もミアも私服だ。というかミアに関しては例のセーラー服がやたら気に入った様で、今日もそれを着てついて来ている。


「そういえば、この服ってアサギさんの世界の服なんですよね? どうですか? ドキッとしました?」


 にひひ、という擬音が付きそうな笑みを浮かべながら、俺のほうに笑いかけてくるミア。確かに少しドキッとしたが、なんか素直に言うのは癪だな。


「そういえば、この間エルフの連中がお前を訪ねに来てたけど、ありゃ一体なんだったんだ?」


「あー、あれですか。別にたいしたことじゃないですよ。彼らにとって私の様なエンシェントエルフは敬う存在なので、ただ挨拶に来ただけみたいです。別にそういうのは求めてないんですけどねー」


 確かにこいつはこんな性格だ。そういうのはうっとおしいとしか感じないだろうな。


 隣を歩く、天真爛漫な欠食エルフを見る。こいつがそんな偉い種族だなんてこと、今まですっかり忘れてたな。


「ん? どうしました? ついにこのミアちゃんの魅力に気づいちゃいましたかー」


「バカ言え。あと5年経ってから出直して来い」


「なんか微妙にリアルな年数なのが地味にへこむんですけど......」


 そんな軽口を叩きながら、目的地の食材店を目指す。なんというか、ミアと一緒に居ると心地良いと感じている自分が、ちょっと悔しい。







「卵にバター、砂糖はどうせなら一番良いやつを買うか...あーおばちゃん! 小麦粉見せてもらってもいいか?」


 食材店についた俺達は、早速食材選びをすることにした。ちなみにミアは食材の良し悪しなんてさっぱり分からないので、俺の後ろで見学しているだけだ。


「あいよー。あらアンタ、もしかして巨人の弓のアサギっていう冒険者かい?」


「ああ、そうだけども。つうか何で分かったんだ?」


「金と黒の二色の髪の青年だって話を聞いてたからね。直ぐにわかったよ。アタシの店も月下の奴らには困らされていてね。アンタには感謝してるんだよ」


 あー。そういや髪の毛も伸びてきて非常にみっともない事になってるのをすっかり忘れていた。そろそろどうにかしないとな。


 それにしてもどこへ行っても感謝される。悪い気分ではないが、かなりくすぐったいな。


「あーすまないね。小麦粉だったかい? それなら丁度、かなりの上物が入ってるよ」


 そう言っておばちゃんが抱えてきたのは、子供ほどの大きさの麻袋だ。中を確認してみると、これはこれは上質な小麦粉が詰まっている。というかこれって......


「薄力粉じゃねえか」


 よく間違われるが、小麦粉と薄力粉は実際は同じものだ。というよりも、薄力粉が小麦粉の一部、って感じだな。一般的な小麦粉よりも粒が細かく、焼き上げた際にふっくらと仕上がるのが特徴だ。


「しかもほとんど不純物が入ってないな......こりゃめちゃくちゃ上物だ......こんな良いものが買えるとは......」


「それがねえ、もともと貴族に卸している商店の在庫だったんだが、どうもだぶつかせた様でね。それをウチが安く買い叩いたのさ。とはいってもここらの庶民に手が届くような金額じゃないからね。ウチも処分に困ってたのさ」


「なるほど。これ全部、言い値で買うわ」


「本当に良いのかい? 結構な値段になるよ?」


「ああ。金だけはたっぷりあるんだ」


 どうせなら最高の食材で最高の物を作りたい。今はそういう気分だ。


「なんかアサギさんって唐突にスイッチ入るときありますよね。」


 なんか昔から謎のタイミングでやる気が出るんだよな。やらなきゃいけないことは後回しにしてしまうんだけど。


「だいたい基本の素材はそろったな。後は何を作るかだけど...っと。」


 店の中を眺めながら、今日何を作るかの決め手となる食材を探す。この辺は豆類が並べてあるようだな。お! これなんか良いんじゃないか?


 手に取ったのは、二種類の豆。この世界でどう呼ばれているかは知らないが、これは確実にカカオとアーモンドだ。


「よし、これとこれをくれ。会計はこれで」


「あいよ。それにしても凄い量だね。二人で持って帰れるのかい?」


「あ......」


 目の前に広がっているのは、とてもじゃないが二人ではもって帰れる量の食材じゃなかった。

後編は本日夕方ごろ投稿予定です。

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