閑話 霞の記憶1
ちょっとした複線を含む閑話です。短いです。
1 旅の途中 →2
夢を、見た。
俺は夢の中で、三人の子供と共に居た。
一人は男、二人は女。その内二人は黒髪で、よく似通った顔立ちをしている。
残る一人は金髪で、整った顔立ちだ。
その三人の事を。俺は知らない。いや、忘れているだけなのだろう。
俺を含めた四人は、夢の中でいつも共に居た。俺が先頭で、もう一人の少年が最後尾。黒髪の少女はいつも俺の隣に居た。
四人は楽しそうで、満たされていて、完成されているように見えた。
夢は続く。
いつしか四人は二人になって、二人は一人になった。
残された俺は、消えた三人の事を知らないかのように生きていた。
一人になった俺は、一人のまま大人になった。
一人に慣れた俺は、一人の事が普通になった。
そう、思っていた。
ゆらゆらと揺れる焚き火が目に入る。どうやら少し眠ってしまっていたようだ。
今はマルセルへと向かう道中のキャンプ中だ。カブ子の足でも四、五日はかかるようなので、しっかりキャンプの用意は整えてきた。魔物のほとんど出ないこの平原だが、それでも見張りは必要なので、俺とトゥールが現在見張りをしている。
とはいえトゥールは直ぐに寝てしまったが。
また、あの夢を見た。
俺の知らない記憶。ただの夢ではない。何故だか事実であったと分かる。
俺は今まで、親しい友人など居なかったと思っていた。ずっと一人きりだったと、そう思っていた。
だがこの世界に来てからというもの、あの夢をよく見る。四人でいた、あの夢を。
よくよく思い返してみれば、俺の記憶には、ところどころ穴がある。特に幼少期、小学生の頃なんかの記憶にはぽっかりと穴が開いたように何も思い出せない。
不安、だろうか、この気持ちは。自らが思い出せない記憶、自らが何者であるのかがあやふやになりそうな感じ。
思い出そうとしても、靄がかかったように妨害されているような感じがする。不安をかき消すように、薪を焚き火の中に投げ入れる。
パチパチという音を立てて、火は燃える。
隣でトゥールが何か寝言を言っている。うなされている様だ。軽く頭を撫でてやると、みゅふ、という声を上げ、また静かに眠りについた。
それを眺め、虚空を見上げる。五つの月が、煌々と輝き、その光を落としている。
まあいい、思い出せない物の事を深く考えても仕方ない。
結局、物事は成るようになる。今までも、きっとこれからもそうなのだから。
本日21時にもう一つ閑話を投稿します。
こちらは数年後のベルケーアのお話です。




