17Game ムテキの力を求めて…
朝になり…絵麗奈が目を覚ました。
路地には誰もいなかった。
「皆んな…どこ。」
絵麗奈はおそるおそる路地を抜け出して皆んなを探しに出かけた。
あちこちを探し回ったがどこにも誰もいなかった。
「皆んな…どこにいるの。」
そう探しているとゲームエリアの中に1つある山…バトルマウンテンの方で
花火が上がった。
「誰かいる…」
絵麗奈はバトルマウンテンの方へ走り出した。
しばらくして絵麗奈はバトルマウンテンの花火が上がったところまでたどりついた。
そこには皆んないた。
だが可憐の姿がどこにも見当たらなかった。
「可憐ちゃん…」
「ダメだ…近づいちゃ。」
「あなたは…」
「スパット…っていうんだが。」
スパットは自己紹介をすると創汰たちの方を見た。
「皆は…シナリオ通りに動いている…ムテキの力を求めてね。」
「そんな…なんで。」
「そういう運命だったんだよ…彼らの。」
「嘘…」
「嘘じゃないよ…戦いをゆっくり見守りたまえ。」
そう言ってスパットはその場から消えていった。
強い風が吹いた。
それと同時に創汰たちは武器を持ってムテキノチカラヲ求めて戦いを始めた。
皆が皆敵で誰にも容赦なく戦った。
攻撃をしたり受けたりで絵麗奈の目からは涙がこぼれた。
「なんで…争うの。なんで私だけシナリオがないの。」
絵麗奈はとても苦しかった。
「シナリオを演じてたら…私はこんな苦しむことなんてなかった。」
そういうが絵麗奈は心を奪われなかった。
次々にハードプレイヤーたちが争いゲームオーバーになっていった。
「空…さん。桜花さん。」
最後に創汰と勇気が残った。
「あぁぁぁぁ!」
「あぁぁぁぁ!」
創汰と勇気は剣を構えてお互いに斬りつけようとした。
「やめて…!」
そういうが手遅れで2人はお互いに剣で攻撃した。
勇気が倒れ創汰だけが残った。
「勇気さん…」
「どうだ…戦いは見事にあの男が優勝だ。」
「嫌だよ…そんなの嫌だ!」
「これで帰れるんだ…よかったな。」
そう言って頭を撫でた。
そのままスパットはゆっくりと消えていった。
スパットがアクションシティーを見て歩いているとブラッドに出会った。
「君はいつも顔を見せないね…」
「お前…もうこのゲームに来るな。」
「わかったよ…俺がいるのが嫌なんだろ。もう来ないよ。」
そうあっさり言ってゲームの中から消えていった。
その頃…創汰はその場から動かなかった。
「ムテキの力…」
絵麗奈は創汰の元へ行った。
「創汰くん!」
「お前は…ムテキの力…お前がいるから手に入れられないのか。」
「えっ…」
「お前を倒す!」
そう言って剣を振るった。
絵麗奈はすばやく攻撃を避けた。
「創汰くん!目を覚まして!」
だが創汰はもう絵麗奈のことも何もかもを忘れていた。
「覚えてないの!ねぇ!」
「なんで死なないんだよ!」
「死ねるわけないよ…」
絵麗奈はそう涙を流しながら言った。
その言葉を聞いて少し意識が戻った。
創汰は目を覚ました。
またあの黒い不思議な空間にいた。
「これは闇だったのか…」
創汰の目には絵麗奈がぼんやりと映っていた。
「絵麗奈…泣いてる。」
つられて創汰の目からも涙がこぼれた。
「ムテキの力って…なんなんだ。」
「迷う必要なんてない…」
「君は…」
「俺はお前だ…」
そう言ってもう1人の創汰はニヤッと笑った。
「絵麗奈を泣かしたのは君なのか…」
創汰には声しか聞こえていなかった。
「そうだよ…絵麗奈がどうしたんだ。」
「絵麗奈は僕にとって…大切な。」
「僕ってのやめろよ…弱っちい。」
創汰は闇の力でとてもしんどかった。
「僕は弱くてもいい…絵麗奈を笑顔にできる力さえあるなら…僕は!」
そう言って自分の心に光を照らした。
創汰の体から闇が抜けて創汰は意識を取り戻した。
「絵麗奈…さん。」
「創汰くん…」
絵麗奈は涙を流しながら創汰に抱きついた。
「ごめんね…心配かけて。」
「大丈夫…」
創汰は辺りを見渡した。
周りには誰もいなく勇気たちの姿や気配もしなかった。
「そっか…決着ついたんだ…」
「うん…」
「抜け出そう…僕ら2人だけでも。」
「うん…」
そう言って絵麗奈は涙を拭いて笑った。
創汰はアクションシティーの方で黒い光があるのが見えた。
「ブラッドがあそこにいるのなら…」
拳を強く握りしめてけじめをつけた。
「僕がお前を倒してやる…ムテキの力がなくとも」
前に足を踏み出した。
「誰かを笑顔にできる力がある限り…できないことはないんだ!」
そう言って創汰は自分の拳を見た。
「絶対にクリアしてみせる…このゲーム。」
創汰と絵麗奈は黒い光がある方へ歩き始めた。




