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03

一昨日の夜中に煮込んだブイヨンを取り出してざく切りにした野菜を入れていく。腸詰もいくつか。私オリジナルのスパイスを混ぜ込んであるもので、肉屋の腸詰も美味しいがそれとはまた違う旨みが自慢だ。

これはあとは鍋に蓋をして煮込むだけだ。


次はもうひとつ鍋を取り出して水とビネガーを入れて沸騰させる。

 そこに卵を割り入れて程よい固さになったら取りだして、バケットを薄く切った上に乗せたら塩コショウとパセリを振りかけて完成だ。


 ……これだけだと皿が寂しいな。

 ああ、林檎を貰ったんだった。酸味のある乳の加工品グルトと混ぜ合わせて蜂蜜を垂らして……うん、完ぺきだ。卵を乗せたバケットの隣に置けば皿の見栄えもいい。


 私の作ったハーブティをカップに注ぎ入れてテーブルの上に並べていく。

 目の前の男は気に入らないが朝食は今日も完ぺきだ


 この卵料理はポーチといったか。

 この間知ったばかりだが簡単で気に入っている。


「ありがとう、グランティエ」


 アストロは妙に笑顔で私の運んできた料理を見ている。

 まあ気に入ってくれるのは嬉しいんだが、なんだか複雑だ。

 なぜ私の城ともいえる持ち家のなかで私の貴重な料理を誰かに提供しなければいけないのか。


 ……うむ。私の料理は今日も美味いな。


 そういえばこの間珍しい調味料をもらったんだったな。

 早速試してみよう。

 明日からまた仕事だからな。そろそろ長期任務も入りそうだし今日のうちにいろいろと作ってみよう。


 しかしあまり調子に乗って作りすぎると食べ終わらないからな、少しだけにしておかなければ。長期の任務前に作りすぎると処理に困ってしまう。


「やっぱり美味いな」

 アストロが呟いた言葉に内心で当たり前だと返しておく。

「にしてもあのグランティエがまさかこんなに料理上手だとは思わなかったな」

 ……なぜ普通に世間話を始めようとしているんだこの男は。


「早く帰れと言っただろう」

 その耳は飾りか。


「少しくらいいいだろ。一人より二人で食べるほうが美味い」

「それはただの迷信で、悪いが私は一人が好きなんだ」

「男好きなんじゃないのか?」

「…………」


 本当にめんどくさい男だな。

 別に私は男好きなわけではない。

 女が好きな訳ではないが、どちらかと言えば男からは距離を置いていたい。とくにこう私的な時間では。

 だからと言って誰かに抗議する気もないから黙って睨みつけておくだけにしておく。


「エセル・グランティエといえば清楚で可憐な容姿で男を誑かし、そのくせヒールで踏みつけるご令嬢、ってのが俺が聞いてる話なんだけどな?」


 まあ、間違ってはいない。

 事実と言えば事実だ。切実に訂正したいところではあるが。

 認めたくはない事実だ。


「早く帰らないならお望み通りヒールで踏みつけてやる」


 私の趣味ではないが、それをすることに抵抗はない。それくらい慣れてしまった行為だ。

 私ももう終わりだな。末期だ。

 考えると頭が痛くなってくる。


「貴族の屋敷に住んでるんだと思ってたけど、意外に家庭的なことに驚いた」


 本当に人の話を聞かない男だな。本気で踏んでやろうか。


「私の趣味だからな」

「第一、グランティエのしゃべり方は綺麗な令嬢言葉じゃなかったか?」

「私のしゃべり方は普段からこれだが」


 普段は、というべきか。

 令嬢言葉は任務用に使っているだけだ。

 騎士団内でも普段は素の話し方をしている。

 ……まあ、一人頭のおかしい例外がいるせいで誤解を招くことにはなっているけどな。


 そこまで話したところで本気でアストロには帰ってもらうことにした。

 そろそろアストロも仕事の時間だ。追い出すのは難しくはなかった。


 さすがに三度目はないだろう。


今度は少し長くなりました。

配分が難しい。

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