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92、本質の魔法

「何が聞きたいのだ? リク殿」


 ニーナは大きな顔を傾げながら、その大きな黒い瞳で俺を見た。

 カナさんはため息をつき、それくらいならしょうがないという諦め顔をしていた。

 ユエさんはソファで我関せずと紅茶を飲んでいた。


「魔法の使い方! 先日シン様が使っていた魔法が分からなかったの!」


 現象をぶつけるのではなく、相手の魔法に干渉していた。

 ユエさんの火球の爆発を風へと転換させていた。

 既に出来上がっていた魔法をエネルギーに別の魔法へと変える。

 裏ボスの使ったあの魔法は普通じゃないだろう。


「すまぬ、リク殿……。我はそれを見ていないのだ」


 そういえばニーナは教会の人にロープ塗れにされて隔離されていたな。

 出オチしていた。

 いや、初めに切り札を切らせたという功績があるのか。


「『吸収、転換、風となれ』ってシン様が唱えて使った緑の膜を作る魔法なんだけど、ユエさんの火球の爆発を風に変えた魔法なんだ」


 そういえば土属性の魔力を他の属性の魔力に変える方法もわからない。

 ああいう魔法の使い方は母さんも使っていた。粉ミルクの時に使っているのを見た。

 あの魔法の使い方も知っておきたい。


「属性の本質の魔法だな。魔法の奥義。シン殿には強い木属性の魔力が魅入られているようだ」


 魔力が魅入られる? ニーナみたいな意志ある魔力が裏ボスの周囲にいるという事だろうか?

 魅入られていなければ使えない魔法なのだろうか?

 わからない。


「木の本質は『吸収』と『転換』なの?」

「シン殿はそう考えたのだろう。木属性をどういう風に捉えているのかで変わるから一概に言えない。

 現象化した魔法で物理的に干渉するのであれば通常の魔法でも出来る。

 だが魔法を魔法で干渉するのは本質の魔法でなければできぬ」


 魔法による魔法への干渉……。

 情報の書き換えみたいなものだろうか?

 いや? これは違う気がする。


「本質の魔法と本質の魔法がぶつかったらどうなるの?」

「属性の相性と込められた魔力の量で比較して、総合的に上回った方が効力を発揮しますな」


 ここでも属性の相性が影響するのか。

 たしかユエさんと裏ボスの戦いでは1等級程度の差があれば属性不利を超えられると言っていた。

 土属性が模倣した属性の魔法は1等級程度下がった威力になってしまうとも。


 1等級の差は魔力の量にして10倍近い差がある。

 1等級の差は大きいが、俺の魔力自体、判定では0等級とされていた。

 1等級下がったところで1等級の魔力だ。その点は気にしなくても大丈夫だろう。


「本質の魔法は普通の魔法に絶対勝てるの?」

「本質の魔法は魔法にしか影響できないが、代わりに普通の魔法には無類の強さを発揮できるのである。

 ただ込められた魔力量に見合った効率でしか対処できない関係上、必ず勝てるというわけではないがの」


 普通の魔法がシステムだとしたら、本質の魔法はプログラマーみたいなものだろうか?

 システムが機能する事で機械として動いている普通の魔法に対し、そのシステム自体を弄ろうとするのが本質の魔法。

 システムの情報量が多ければプログラマーにしてもすぐに全部を書き換えられない。

 だから本質の魔法でも普通の魔法に勝てない事があるという事だろうか?


 プログラマーにしても得意分野があるように、解決しやすい内容か否かで効率が変わる?

 いや、本質の魔法を撃つ段階である程度使うツールを持たせている?

 だとしたら持たせた対策ツールに対してシステムの内容が対応できないモノであれば、普通の魔法に込めた魔力量と同等の魔力量の本質の魔法であっても、本質の魔法が勝てないという事があるかもしれない。


「本質の魔法は物理的な現象を起こせないの?」

「基本的には起こせないが、空間中に存在する不活化した魔力に対して反応させて、ムリヤリ起こす事は出来ますな。ただ非常に効率は悪いのだが」


 空間中に存在する不活化した魔力に干渉させるのか。

 効率が悪いとしてもそう言う事が出来るという事を頭に入れておこう。

 本質の魔法対策の魔法になりそうだ。


 ただ思うのは……ニーナ……頑張って古い言葉使おうとしているようだけどずれてる。

 くっ殺しそうな、どこか抜けている、真面目ぶった女騎士みたいな感覚がある。

 ……出オチ要員? かませ犬? あ、文字通りの犬でした。ちょっと抜けた顔のゴールデンレトリバー。


 俺の言葉の訳し方が悪いだけかもしれない。

 叙述的な言葉が来たら何と訳せばいいかの語彙力が足りてないな。

 古い言葉を訳そうとしたら、ござるとか考えてしまう。きっと訳し方が違う。


 他の人はいたって真面目な顔つきだから、普通の言葉なのだろう。

 聞こえてくる言葉はちょっと昔の、昔話や神話に使われるような話し言葉と同じだから。

 言語能力の形成期がその辺りだと考えたら別におかしいことはない。


 とりあえずは本質の魔法か。

 この魔法をもっと詳しく知らないといけないな。

 魔法のプログラミング言語みたいなものかもしれない。


 使えるようになれば既に効力を発生させている魔法のカスタマイズも出来るようになるかもしれない。

 現状の魔法も使い勝手が非常にいいだろうが、本質の魔法で魔法に干渉できるようになれば戦う相手の上を行ける。

 本質の魔法に対しては本質の魔法でないと対応しにくいという問題も大きい。


 で、だ。本質の魔法はどうやって使うんだろうか?

 魔力を魅入らせないと使えないのか?

 魅入らせるにはどうしたらいいんだ?






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