7、絵本
絵本を読む声に合わせて「あー」とか「うー」とか他にも色々声を出した。
俺的には母さんの絵本を読む声を真似ているつもりだった。
けれど舌の使い方がなってないのか、なかなか正しい発音ができない。
まだ舌も短いししょうがないのか。
早くしゃべれるようにならないかな。
あれから魔法を見る機会がない。
早く文字を覚えないと。
きっとどこかに教科書とかあるはず。
とりあえず絵本につかわれている文字は覚えた。
文法は英語と同じでした。
日本語と同じ文法の言語ってほとんどないんだ。
英語だって中国語だって主語、助動詞、動詞の順だから。
日本語くらいだよ、主語と動詞の間にいろいろ入れるのは。
ドイツ語みたいに名詞に男性とか女性とかはない。
あまり面倒な仕組みはないようだ。
独特の言い回しはそこそこある。
これは絵本特有かもしれない。
母さんの読み聞かせてくれる絵本は神話物が多い。
「冷たくて厳しい、お母さんな水の神様」
水色の髪をした黒い目の、ちょっと怖い顔をした白い肌の女の人を母さんが指さした。
「熱くて暑苦しい、お父さんな火の神様」
赤い髪で赤い目をした、肌がちょっと黒光りしている男の人。
「暖かくて夢を見せてくれるお兄ちゃんな木の神様」
緑色の髪で緑の目の、チャラそうなお兄ちゃん。
「色々な物をくれるお姉ちゃんな金の神様」
金髪で銀色の目をした、金属製の装飾をたくさん身に着けているお姉さん。
「そしてみんなに大事に大事にされてるのが末っ子の土の神様なんだよ」
明るい栗毛で金色の目の、砂遊びをしている幼子。性別は……判別できない。
「土の神様はね、水の神様、火の神様、木の神様、金の神様のみんなの力を少しづつもっているの」
幼子の周りに水色、赤、緑、金色の4色の小さな球が浮かんでいる絵が次のページに描かれていた。
「だからね、ほかの神様にはできないこともたくさんできるの、色々な物を作ったりね」
幼子が砂遊びで世界を作り上げた。
「でも小さいから色んなイタズラしちゃうの」
水の神様を怒らせて吹雪を浴びせられたり、火の神様を怒らせて火炎放射浴びてたり……。
木の神様を怒らせてそっぽ向かれて謝り倒していたり、金の神様を怒らせて没収されたり……。
ここまでが、土の神様の話のいつもの前振り。
たぶん属性的な関係性があるのだろう。
以前見た魔法は水色と赤色。
水の神様と火の神様の色だ。
この話の中に魔法の秘密があるかもしれない。
「じゃあ、今日は火の神様を怒らせた時の話をしようか」
さて今日の道徳の授業はここですか。