72、教会への道
俺はカナさんに抱きかかえられて教会に向かった。
体を鍛えるためにもできるだけ歩いていこうと思っていたら「ここで歩くのはちょっと危ないから」と言われて抱きかかえられたのだ。
ニーナは家で「いってらっしゃい」と言ってついてこなかった。
理由を聞くと「ついていくと目立って仕方ないからじゃ」と言っていた。
何を考えているのかはわからない。護衛とか言っていたのに。
内庭を出て門から出ていくと綺麗な街並みが見えた。
大きな通りには髪の色が様々で緑や青なんていう人もいたが、黒や茶色に赤がとりわけ多かった。
着ている服は男性も女性もズボンが多く身のこなしが颯爽としていた。
年齢層は20代から30代に偏りがある。比較的若い年齢の人が多い。
建物はといえば例の謎のプラスティック製の外壁ばかりだ。
道に使われたり、子供の玩具に使われたり、外壁にまで使われたり……。
あのプラスティックは万能すぎると思う。
本当に産出量はどうなっているのだろう……。
赤い瓦のような屋根にクリーム色の外壁、建物自体の統一性は強い。
けれど庭は各家庭で個性が出るのか、池があったりプールがあったりしたかと思えば、家庭菜園をしているような家々もある。
この大通りに面している建物は全て民家のようだ。
民家か……。不特定の人が来るような商業施設が行政的に重要な施設の側にあるわけがないか。
大使館のような外国人に向けた施設だったり、一般の人が許可をもらいにいくような施設だったりするならば商業施設が近くにあった方が便利かもしれない。
だがそれはそれ。ここはここなのだろう。
この民家もきっと職員の人が住んだり、身元が確かな人がいたり、警備の人がいたり……?
自宅警備員。
はい。気にしない。ニート違う。本職の人だ。
それにしても車で移動したり、ニーナの首輪に着けられたカゴに入れられたり見えなかったため、実はこれが初めてしっかりと見る王都の風景になる。
落ち着いた高級住宅街のような風景か。まぁ、これはこれで情報が集まる。
どういった人がいるのか予測できれば更なる情報を集める時にポイントをつかみやすい。
カナさんは通りを進み何度か道を曲がった。いずれも道幅は広い。
住宅街、商業区画、住宅街、商業区画といった感じに1本通りを外れると施設の様相が変わるようだ。
そして住宅街の中を行くとその教会はあった。
教会の所在地は住宅街の中か。
それもそうか。教会が見ているのはその区画の人々だ。
商業をしている人とはまた別の枠組みだろう。
住宅街の中の広い通りにある教会だから行きにくいというわけではないだろう。
「失礼します」
カナさんは教会の扉をノックし声をかけた。
教会の扉は大きく内開きのようだった。
「どうぞ」
教会の中からしわがれているが丸みのあるお婆さんの声が聞こえた。
カナさんが扉を開けて中に入った。
「失礼します」
俺も挨拶をと思い声を出した。
扉の中でお婆さんシスターがびっくりしたような顔をしていた。
「おや、カナ? この子はどこの子だい?」
「ソラ様、この子はリク君です。あの」
「そういえばカナ、お前は急な用件で……なるほど……わかった」
「……え? ソラ様? 何か勘違いなされてませんか?」
「カナ……子供が好きなのはよく分かっているよ。でも誘拐はダメだろう?」
「ソラ様っ! 違いますっ! 私は聖歌隊をこの子に見せてあげに来たのですっ!」
「そうかいそうかい」
「ソラ様ッ!」
「わかってるわかってる」
「誘拐じゃないですっ!」
ソラお婆さんの誤解が解けるまでカナさんは数分言葉を費やすことになったのだった。






