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61、神様と魔力

 その目には知性があった。意思があった。


「もう一度聞こう。主が私の体を作り上げたのか?」


 その口が開くと低い女性の声が聞こえた。


「はい。僕が作りました」


 口を小学生くらいの子供が入る程大きくあけたかと思うと、のどをあけて大声で笑った。

 なにが楽しいのかわからないが、その笑いには影がなく暗い感情は感じられなかった。


「主っ! 主はなんていう?」

「リクです」

「リクかっ! リク殿っ! よかろう! リク殿はその身が朽ち果てるまで我が守ってやろうっ!

 この面白き体の礼じゃっ! 今日は真に面白き事が起こりうるのぅ」


 この思考。どう考えても今その場で生まれた思考ではありえないだろう。

 何よりも言葉を知っている。この場で使われたモノではない言葉を。

 つまり過去がある存在だ。


「名前を聞いてもいいですか?」


「名前か……ないな。魔力として生まれたのはもはやいつのことだったか。

 前世であれば名前はあったかもしれぬが……呼ばれぬ名など忘れて久しい。

 魔力として生まれ、こうして肉体を得たことなぞ初めてだ」

「魔力として生まれ?」

「そうだ。神により魔力へと作り替えられこの地で遊び暮らしておった」

「遊び……」

「そうじゃの。人間ドラマはかくも面白き。

 我は認識されぬが故、どこにでももぐりこむことができた。

 気に入らぬ奴の魔法を失敗させたり、お気に入りの魔法を成功させたりと、魔法関係であれば干渉もできたが故遊びに困らぬからの。

 魔力に好かれぬ奴は魔法使いに非ず。そう驕っていた時期もあったが若かったのぅ」


 魔法の成功、失敗にもかかわってる?

 だとしたら魔法をかなえているのは魔力なのか?


「……それじゃ神様は魔法を司っていない?」

「魔法のシステム作りをやっておるな。

 神がシステムを作って我や他の魔力がそのシステムの範囲内で魔法を組み立てるといった感じじゃの。

 神は大臣で我らは小役人じゃな。

 魔法が想像を具現化するとなると神1人で全部営むなどやってられん量の仕事になるしの」

「なるほど……」


「なっ! なぁっ! 話に割り込んでしまい申し訳ない!

 あなた様は何者なのでしょうか?」


 ミラ先生は血の気が引いているようで顔が白くなっている。


「そうじゃの……リク殿。

 先ほど我のことを『ニーナ』と呼んでくれておったの。それが我が名じゃろ?」


「はい。でもいいの?」

「リク殿は我の体のために考えてくれた名前じゃろ?

 よければ使わせてもらいたいがダメじゃったかの?」

「ううん。こちらこそ喜んで」

「うむ。ありがたい」


 声色が温かい。見守られている感があるというか……存在が大きい。

 体が大きいからか、自分で作り上げた体だからか、自分を害することがないとわかるからか、前世の愛犬のゴールデンレトリバーの姿をしているからか、それとも人間じゃないからか……。

 とにかくすごく安心できてしまう。


「我はニーナ。太古より魔力として存在し、この度現界せしモノである。

 ついては我が主、リク殿に付き従い庇護するモノだ。

 以後よろしく頼むぞ?」

「は、はっ! こちらこそよろしくお願いしますっ! ニーナ殿っ!」


 古風な言葉使いをしているが、体高が2mある非常に大きなゴールデンレトリバーである。

 背中にはミラ先生が大の字で寝転べるくらいの幅があるだろう。

 このたれ目、たれ耳、人懐っこいことがうかがえる緊張感がうすい顔、もふもふに包まれたその身は強靭極まりない仕様だが外見からではわからない。

 外見で怖がられる要素がほとんどないのだ。

 いくらその歯が鋭くとも、その爪が鋭く大きくても、見えないものは怖がりにくい。


「久しぶりに言葉を話したら疲れたのぅ。これからどうするんじゃ?」


「あ、あぁ……。リク君は魔力をどのくらい使ったのかな?」

「ほとんど全部使いましたよ」

「そ、そうか。では暴発の危険もなくなったから今日はこの辺りで帰るとしようか」

「わかりました」



1、胎児のところに赤ん坊だと認識する描写を加えました。

フラグやミスディレクションの種ではありません。

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