60、ニーナ
回路を組み立てる。
情報処理の方向性、知覚神経から脊髄、脊髄から脳などの中枢神経。
混ざらないように導線の如く調整。
情報の知覚は様々な場所から取得できるように導線から毛の様に細かい神経網を作成。
触覚や温度感覚など種類によって情報が混線しないように分離。
取得した情報は脳の各分野毎に処理し中枢で統括判断を行う。
中枢で行われた判断を対処するべく脳の各分野に配分。
中枢神経から脊髄、脊髄から運動神経を通り、筋肉を動かせるように調整。
知覚を行う場所では圧力など感知した情報を電気信号に変換させることに特化。
神経網は情報を混線させないように輸送に特化。一方通行。
中枢神経は与えられ受信した情報を統合的に判断するコアをそれぞれに配置。
思考力のメモリとして余剰コアも配置。
至上命令に創造者の命令を聞くこと。
次点に自己最適化。
日常行動は情報の蓄積。できることがなければスリープモード。
骨格、各パーツ、特に関節は継ぎ目に軟骨セット。
歩いた結果関節が外れたり、自重で崩れ落ちないように形状調整。
自己最適化、退化、スリープモード搭載。
伝達網OK。
骨格OK。
筋肉系統仕組みOK。
眼球OK。
表層OK。
体毛には魔力を吸収する機構を組み込んで自動充電OK。
もふもふOK!
サイズを大きくすることで回路の組み立てを容易にする。
質量極大。
「クリエイトファミリア」
空中に鈍色の線が散らばる。
それは細かく編み込まれるかのように複雑に立体的に作られた。
次に鈍色の骨が線を包むように、かいくぐるように作成された。
その上を白銀のスライムが覆い、その上に皮の質感があるメタリックな色の膜がつつんだ。
その体から茶色く長いさらさらした体毛が生えた。
そこには大き過ぎる犬がいた。
体高は2mあるだろう。
その目が辺りを睥睨するとゆっくりと歩き始めたが転んだ。
「……なんだ……これは……」
ミラ先生は唖然とした口調で呟いていた。
周囲を見ると遠くで大きな竜巻が数十以上あった。
「ニーナ」
昔、実家で飼っていたのはゴールデンレトリバー。
彼女の名前をもじった。彼女の名前をそのまま使うのは彼女に対して失礼だから。
ニーナへと呼びかけるとその目はこちらを向いた。
なんとか立ち上がるがまだ思ったように歩くことができないようだ。
よろよろとしながらも歩き俺の側へと来るとお座りをしてこっちを見た。
体内にあった魔力の大半を出し切り今までに感じたことのない重い脱力感を覚えながら俺は見上げた。
頭上にある口は大人の頭でも軽く入ってしまいそうだ。
この子はこの後どうするのだろうか?
その口を使い、俺を咥えたりするのだろうか?
力加減に関しては後々覚えてもらうつもりでシステムに組み込んでないな。
もしかしたらここで死ぬかも。
「主が私の体を作り上げたのか?」
え? 喋った?






