56、魔力の使い方の差
「なんだ?」
「このボードに魔力を込めて欲しいんです」
「他人の魔法に魔力を?」
「ただ魔力を入れるだけなので出来ると思うのですが自信なくて」
「そうか、なんで?」
なんで? ……え?
ここで率直に将来のためって言ったらアウトだ。
単なる成長の早い子ですませないといけない。
「今の僕は少しづつしか魔力を出せないので、もし魔力の注入をしてくれたらもっと色々なことができると思ってです」
「そうか……なるほど……。
そうだな……下手に魔力を放出して大爆発を起こしても困るな。
わかった。いいだろう。やろうか」
よかった。納得してくれた……。
確かに本来の魔力の出し方をしたら大爆発を起こしかねない。
どんな魔法を使えば放出される魔力を消費しきれるだろうか?
体の中にある魔力の量はチャージ30秒程度じゃ0.1%も使えない。
1%も放出したらチャージ何分程度になることやら……。
魔力は少なくても出来ることが多い。
魔力の量というのは使っている機械が違うようなモノだ。
高い等級は重機、シャベルカーのような存在だ。
低い等級はシャベルのような存在だ。
シャベルカーにはシャベルカーのいい点がある。
シャベルで掘るよりも圧倒的な量を掘削できるし、運べる。
だがそれはそれ。シャベルカーでシャベルのような細かいの挙動をとるのは難しい。
シャベルはシャベルカーに難しい細かい挙動ができる。
同じことをしようと思えば時間がかかるし、できないことも多い。
今の俺はシャベルカーの動力でシャベルを動かしているようなモノだ。
シャベルカーを使っている人からしてみれば、曲芸じみた真似をしているように見えるだろうし、色々おかしいだろう。
魔力の放出の仕方がおかしいことは気づかれているだろう。
それで安定している現状がおかしいと思われているかもしれない。
しょうがないか。
現状から魔力の消費量の概数値を出して、消費量の多い魔法の具体的な数字を試算していくしかできない。
どれほどの規模で最低でも魔法を作らなければ爆発を起こすのかが計算できないと困るから。
「……ごめん。壊れちゃったみたいなんだ」
申し訳そうな顔のミラ先生がそこにいた。
その後ろには穴から火を噴き上げるボードがあった。
「あ、わかりました。これを使ってください」
「ごめん、悪気はなかった」
「ちなみにですが魔力を入れること自体はできましたか?」
「あぁ。それ自体はできたな」
「なるほど……。ありがとうございます」
これでミラ先生がチャージしたモーターボードが動くようであれば完璧だ。
この魔力の放出の仕方でしたいことは早めにたくさんやらないといけない。
もしこの魔力の放出の仕方ができなくなった時にしとけばよかった後悔しないように。






