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52、大玉転がし

「名前はなんていうの?」

「だぁ~!」

「手を入れないでー!」

「ルイ君、名前を聞かれてるよ? 答えてみようよ?」

「だぁ~! 僕はルイ!」

「よろし」


 口が開いた瞬間に手が入れられた……。

 く……。いい顔で笑ってやがる。

 相手はまだ言葉をあまりうまく使えない赤ちゃんだ。

 どれだけ単語を覚えているかも定かじゃない。

 意思疎通ができると思うな。


 そもそもモノを知らない状態だから、調べる段階なんだ。

 触覚を使って硬い柔らかいを覚えたり、口を使って味や具体的な硬さを覚えたり、視覚でモノを知る。

 身近なモノを自分のできるあらゆる手段を使って確かめる時期なんだ。

 どういうモノなのか、それをした結果何が起きるかを知ろうとしているだけなんだ。

 知識の集積を行っている段階なんだ。


 ……あれ? 俺、これやった覚えない。

 前世の知識の引継ぎで最低限レベルの予測が出来るようになっていたからか。


 ……転生者判明事案じゃないか。


 子育て初めての夫婦だったから、ばれなかったんだと思えばいいのだろうか。

 変わった子だったからって認識でいてくれれば大丈夫だろうか?


 普通の赤ちゃんを見ているとどれだけ俺がおかしい行動をしていたのかがわかるな……。


 今更直したところでしていたという記録は残っている。

 もう突き進むしかない。


 ついに耳を噛み始めたこの状況はどうすればいいだろうか?

 甘噛みくらいの強さだし、突き放していいものなのかわからないし……


「はいはい。ごめんね? ルイ君! 人は噛んじゃいけないの!」

「だぁーっ!」

「ダメなの!」


 救世主はサクさんでした。


「ごめんね、リク君。ルイ君はリク君の事を知りたいみたい。

 ちょっと遊んであげて欲しいな。このボールを使って遊んであげて?」


 そういって渡してくれたのは直径1m程の大きなボールだった。

 材質はあの謎プラスチック。

 柔軟性は低いが軽い。

 中に空気が入っているのか、見た目よりも大分軽い。

 もしかしたら中に入っている空気もヘリウムみたいに空気よりも軽いモノだったりするかもしれない。

 これならぶつかっても痛くないだろう。

 パリンと割れるのは想像しにくい。


 でもこれでどうやって遊べばいいのだろう?

 転がせばいいのだろうか?


「だぁーっ!」


 あ、ルイ君が突進した。


 ルイ君はボールに登ろうとして転げていた。

 大きさ的に確かにクライミングもできるか。

 ただしそれは可能か不可能かの観点であり、危険か危険じゃないかでいえば危険だ。


「ルイ君! ボールを転がして遊ぼ?」

「だぁ?」


 ダメだ。言葉を理解できてない。


 ボールを大玉転がしの要領で押して転がすと、ボールの側にいたルイ君はコロコロと転げてしまった。


「だぁ!?」


 驚愕の表情を浮かべたルイ君だが、次の瞬間、猛然とボールにタックルをかました。


 確かに横方向の推進力を得るのであればそれは正しい判断だっただろう。

 だがそれでは大玉は転がりにくいのだよ。坊や。


 斜め上に向けて手を滑らせるとルイ君がタックルした時よりも速くボールは転がっていく。


「だぁ?!」


 ルイ君の方を見て笑うと


「だぁっ!!!」


 ルイ君はボールに向かっていった。
















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