51、赤ちゃんって難しい
「姉さん、お帰り。こんにちわ、おちびさん」
にこやかな顔をした黒髪のお兄さんが玄関をくぐるとお出迎えしてくれた。
この人がきっと旦那さんだろうか?
「キラいたのか」
「姉さん、久しぶり。お義兄さんは台所で料理しているよ。
今、手が離せないみたいだから代わりにね。姉さん、この子は?」
旦那さんではなかったのか。
「そうか。あぁ、この子はリク君だ」
「初めまして、リクです」
「そうかそうか、何歳かな?」
「2歳です!」
正確に言えば2歳と10か月。
今更、2語文にしたらおかしいから普通に応答しておく。
「へぇ~……。姉さんの子供と同い年くらい?」
「そうだな、この子は仕事の関係で預かった子なんだ」
「そうなんだ? あ、お義兄さんのクッキーができたみたいだからちょっと手伝ってくるね」
扉を開けられた事で美味しそうな匂いが一段と強くなり、よだれがとまらなくなった。
絶対、美味しい。
「お帰り、ミラ」
「ただいま、サク」
白い髪、紅い目……。アルビノか。
細い体、筋肉が少ない柔らかそう。
女の子みたいな体つき。
……あぁ……守りたくなる感がある。
対してミラ先生は軍服が似合う。
ガンガンいこうぜを地でいきそうな感じだ。
紅い髪に紅い目の強そうな女性。
美女と野獣の男女逆転か。
どちらも顔面偏差値が高いけど。
「こんにちは、おちびさん」
「こんにちはです、僕はリクっていいます」
「僕はサクっていうんだ。よろしくね」
「よろしくです」
指を差し出してきたので握ってみた。
柔らかく本当に女の人の指みたい。
肌に色はなく血管が透けて、白魚のようなという言葉がよく似合う。
この人がミラ先生の旦那さんなのか。
「リク君。君と同じくらいの子が家にもいるんだ。会ってく?」
「はい! 会いたいです!」
「リク君は言葉が上手だね」
そういって俺の頭をサクさんは優しくなでた。
「こんにちは」
「こんにちはー」
目の前には黒髪の男の子が立っている。
体の大きさは俺の方が若干大きい。
だがしかし
「だぁー」
懐かれたと思う。懐かれたはいいが言葉が通じない。
突進してきたり、抱き疲れたり、口に手を伸ばされたり、髪を食べられたり……。
どうしたらいいんだろう?
体の大きさが近いから、車で鍛えた足腰でも体を支えるのが限界に近い。
「だぁ~!」
突き放すのは簡単かもしれない。
だがしかしそれは大人げない。
力を使うのはありえない。
これは同年代との付き合い方を覚える機会なのだ。
「だぁ~! だぁ~!」
「ちょっと待って! あ、口に手を入れないで!」






