48、魔法の検証
制限時間の2時間までにタマゴ30個分の魔法は使える許可がもらえた。
ゴーレム魔法では余剰分の魔力を動かす時に使っているらしく、込められる魔力の上限が高かった。
タマゴであれば上限は10個分。
込めた魔力に応じて出来ることの制限が少なくなった。
作る魔法の質量によって魔力の下限値が決まるようで、この下限値は魔法を形作るためだけの必要量みたいだ。
つまり下限値ぎりぎりで魔法を作れば動かせる距離がほとんどない張りぼてと化してしまう。
質量に応じて同じ魔力の量でも動かせる距離が変わる。
質量が大きければ大きい程動かせる距離が短くなる。
跳ねるなどの挙動も高さや速さに応じて移動する距離が変わるようだ。
運動エネルギーの公式と同じで、質量に応じて移動に必要とする魔力も比例する様子。
検証は直径10cm程のタマゴだと移動距離が長すぎて計測しづらかったので、直径20cm程の大タマゴ1と直径30cm程の大タマゴ2で行った。
チャージ8秒で大タマゴ1の張りぼて、容量限界は80秒。
チャージ27秒で大タマゴ2の張りぼて、容量限界は270秒。
張りぼてに1秒分チャージを行うと、大タマゴ1は36分稼働、大タマゴ2は約11分、たぶん10分40秒程動いて停まった。
この調子だとタマゴは1秒チャージで288分は稼働しそうだ。
大きくして容量限界までつぎ込んでも稼働限界は2880分か。48時間、2日間ね。
稼働しなくなった大タマゴは消えずに残っていたので、魔法を使う要領でチャージすることができた。
つまり一度張りぼてを作ればエネルギーとなる魔力の継ぎ足しだけでいくらでも動かすことができる。
容量限界を求められたのも、正確な稼働時間を求められたのもこれが要因。
「リク君、今日はここまでにして帰ろうか」
「分かりました」
ただ時間制限のせいでこれ以上の検証ができなかったのが悲しい。
今回得られたのは検証データだけじゃないはず。
爆発させることなく色々な魔法を使いこなしたのだ。
監視部隊からの危険人物認定の取り消しがあるはず。
「この球ゴーレムはどうしますか?」
「あ、あぁ~。ちょっといいかな?」
振り返ってみると白髪の初老の男性が1人。
……裏ボスだ。
「副官様どういたしましたか?」
役職は副官なのか……。
責任者の側で事業の仕分けをして決定事項の優先順位を決めたり、本部にいなければいけない責任者の代わりに責任者の目となり視察を行ったり、責任者の手の届きにくい場所で責任者の手となり実行する。
大きな組織になる程必要とされる、あの副官なのか……。
責任者が純粋そうなラミ様だから黒い部分も含めて裏ボスが管轄していそうだ。
うん、やっぱり裏ボスは裏ボスでいいと思う。
「ちょうど今、話題に出ていたけど、この球ゴーレム? について気になるんだが少し調べさせてもらってもいいかな?」
「リク君、どうする? これは君が作ったものだろう?」
あ、よかった。選択権は俺にあった。
「僕としては構いません」
いくらでも作れるし、持って帰るにしても方法がないし、持って帰っても置き場所に困るからな。
あ、今日ってどこに泊まるんだろう……。






