45、理由
「鉄の球か」
「いいえ、球ゴーレムです」
俺は指をさすと球ゴーレムはコロコロと転がり始めた。
指の向きを変えれば進む方向も変わる。
どうやら望み通りに魔法は成功したようだ。
「不思議だ……」
ミラさんはコロコロ転がる球ゴーレムを目でずっと追っていた。
「祈れば叶えてくれると言っていたので。
それにミラ様の」
「ミラ先生でいい。その方が呼ばれ慣れている」
瞬時の反応。余程、様付けは嫌みたいだ。
「はい、ミラ先生のファイヤーボールも魔法として成立した後に、バーストとコマンドを言うことで動かす事ができるのを見ていたので、指の動きで動かせるゴーレムも可能ではないか、など考えた次第です」
「なるほど……。それなら」
ミラ先生は手の上に赤いファイアボールを作り上げると浮かし投げた。
そして指を動かすとファイアボールがくるくると指の動きに合わせて回り始めた。
「面白い。……そうか、こういう風に伝えればこの魔法は発動するのか」
「すごいですね……。今の言葉だけで出来てしまうなんて……」
「魔法はイメージだからな。基本的には1回魔法が使えれば、見たことのある魔法はたいてい出来る。
そのイメージをしっかりと神様に伝えられれば、属性が合っていて魔力量が足りている限り、どんな魔法でも理論上は使うことができる。
イメージを伝える言葉が足りなかったり、魔力の量の過剰や過少で、魔法が発動しないことはあるけれどな」
ミラ先生がファイアボールを指でクルクルと回していると、ファイアボールは次第に小さくなり、やがては消えてしまった。
「……消えるのか」
「ミラ先生が自分の意志で消したわけではないんですね?」
「あぁ、動かしていただけで消そうとしていない」
「なるほど」
魔法として発動した後、動かしている力は魔法を発動させた時に使ったエネルギーなのだろうか?
ファイアボールは炎の塊、つまりエネルギーそのもの。
だから動かせば目に見えて小さくなっていき消えたと。
「実を言うと普段よりも過剰に出さないといけないってことで苦戦した挙句、暴発っていうのがテンプレだったりするんだ」
「嫌なテンプレですね……」
「初めに大きい魔法を使って、こんな威力になるんだぞ? って示して、大きすぎる力を暴発させないようにするとか、いろいろ工夫はしているんだ。
だがいざ使おうとすると出し方の感覚がわからなくて暴発させてしまう。
ある意味しょうがないといえばしょうがないんだが、その暴発を抑え込むためには差が1等級以内の魔力を持つ熟練の魔法使いが必要となる。
単純な魔力の暴発よりも魔法の方が出力が高いから対消滅をすることで対応できるんだ。
ただリク君の暴発の場合、アタシだけでは対消滅が出来るかどうか怪しかったな」
「……衝撃の言葉を聞いた気がします」
「大丈夫だ。実は周囲に1等級を集めてある。暴発の威力を抑えるためにな」
「更に衝撃を受けましたっ!」
「リク君は魔法を早く使えるようになってもらわないといつ暴発するかわからない、そんな危険な状態だったからな。
もし君が死んだらその瞬間、君の魔力が暴発してクレーターが出来てしまうな。
時間が経てば経つほど暴発の威力も大きくなってしまうし、緊急事態だな」
死んだら……って、いや、被害を未然に防ぐために殺される危険もあったってことか?
ついでにいえば下手に殺したが最後、殺した人を巻き込んで爆発を起こすのか。
なにその自爆兵器……。恐いんだけど。
いや、それ俺か。






