44、初めての魔法
魔力の放出……。
今まで皮膚の1枚下を意識して魔力を動かしてきた。
それをちょっとこぼすだけの話。
……いや、それはダメじゃないのか?
魔力の器を拡張するのが今までの動かし方だった。
そして今は密度を上げるために動かしている。
器の拡張と放出では動かし方が違うんじゃないか?
器からは元々魔力が漏れていた。
ということはだ。
器自体に細かな穴があるって想定をすればいいのか?
今は体の中央に向かって求心力を作って、魔力が外に放出されないように調節している。
求心力を弱めれば体の外へ魔力が流れ出す……はず。
身体の中の魔力の回転を静かに緩めていく。
「そろそろ弱い魔法なら使えるはずだ」
ミラさんの合図が聞こえた。
弱い魔法……。
人体錬成は大魔法だろうか。
では人体錬成の下位互換は泥人形の作成かな?
土魔法らしくていいだろう。
弱い魔法っていうことだ、あまり大きい物は作れないだろう。
10cmくらいの大きさのゴーレムは作れるだろうか?
初めから指とか細かい部分は難しいだろう。
人型よりも球形の方が簡単に作れそうだ。
指示を出せば動く球か。
トゲトゲをつければ坂を上ることもできるようになるかもしれない。
巨大にすればそれだけで質量兵器だ。
ゴーレムにありがちな関節にかかる負荷という弱点もない。
指示通りに動く球体が上手く作れるようになれば、球体関節という人形における重要パーツが上手く作れるようになるというメリットもある。
上手くいけば人間よりも稼働範囲の自由な関節ができる。
関節部分に動力を積みつつも表面を伸縮自在な筋肉のような物を使い補正をかけていけば、出力も大きくすることができる。
この辺りは本当に夢が膨らむ。
巨大化させてやればアニメの巨大ロボのようになるかもしれない。
今後のためにもまずは球形ゴーレムだ。
指をさした方向に向かって動く、まずはそんなゴーレムを作りたい。
将来、きっともっと面白い物をつくれるようになるから。
お願い。まずは球体のゴーレム。サイズは直径10cm程。
僕の膝くらいの大きさのゴーレムを作ってください。
「土の神様、魔法を使わせてください。丸い球のようなゴーレム、指をさした方向に進むそんなゴーレムを作らせてください。泥人形作成」
目の前で土が盛り上がっていく。
周囲の土を使って魔法を顕現させる仕組みなのだろうか?
火だったり、風だったりだったらただのエネルギーで済むだろうけれど、土や水は物質を必要とするからだろうか?
物質を作り出すとなったらけっこうなエネルギーが必要になりそうだ。
いや、それはさておき目の前で盛り上がった土は丸くなった後収縮し硬そうな鈍色の球体になった。






