39、裏ボス出現
「リク。君は魔力を出さないようにしているね?」
「はい。ラミ様」
父さんと母さんが部屋から出ていくと部屋に残された俺にラミ様は優しく話しかけてきた。
「じゃあ、魔力に対する感覚はもうあるわけだ」
魔力を知覚することができるかを聞いているのだろうか?
「身体の中の魔力はある程度わかります」
「よし。なら先に話を進められるな。今から荒野へ行こうと思う。そこで少しづつ力を解放していこう。俺じゃないと」
「ダメですよ? 英雄筆頭……もとい英雄の責任者さん……ラミ様? ……事務作業が面倒だからって……逃げようとしてませんか?」
擦れ声の粘っこい陰湿そうな男の声が聞こえた。
声の聞こえた方を振り返れば目さえ見なければ温和な中肉中背のおじい様がいた。目さえ見なければ。
あの目は何人か、いや何百人か殺してる……。
「待てっ! いや、これは俺じゃないとまずムリだからな!」
「能力的に1部分であればラミ様より上の人ならいるんでその人達に仕事を回しましょう。子供の魔力操作の練習ですよね? であればミラ様など」
「待て待て待てっ! この子の力はまだ上限が見えないんだっ! 現存する1等級の中で最も多い俺の魔力量と比べても大きく上回っているんだっ! 下手したら等級が1つか2つ上になるくらいにっ! 魔力訓練なんて軽く言ってやらせて災害が起きたら俺以外じゃ責任とれないぞっ!」
「そのレベルでしたらラミ様でも責任とれませんよ」
「あ……いや、まぁ、だがな、魔力に関してはお化けって言われている俺以外に誰がリクを教えられる」
「ですからミラ様にお任せしましょ。魔力お化けのラミ様に魔力の訓練をしたキラ様の愛弟子にして現魔力訓練担当筆頭ミラ様に」
「キラ婆に愛弟子いたの?!」
「確かにキラ様にはラミ様含めてたくさんの方が魔力訓練をつけてもらっていますが、ミラ様はその中でも特に魔力操作に長けていまして、また人に物を教えるのも上手です。そのためキラ様はミラ様を特に可愛がりましてその指導力を活かして自分の後継者になるように教えていたんですよ」
「その話は初耳なんだけど?!」
「言ってませんでしたから。それに実績もあるし問題ないだろうと視察したうえで訓練担当筆頭の着任に軽く決を出したのはあなたでしょう」
「詳細な情報あるなら先に出してくれっ!」
「この情報を耳にいれたらもし他に筆頭候補がいた時能力の長短を比べる前にミラ様が選ばれてしまう可能性がありますから。実績と周囲からの評価で比較しないことには正確な採決は行えませんので」
「あ~……。うん、とりあえず分かった。じゃあミラさん呼んできて。リクの件は至急対応しないと将来もっと困るから。なるはやで」
「かしこまりました。それでは執務の方さぼらないようにしてくださいね」
白髪のおじい様は去っていった。
あのおじい様には逆らえない気がする。
それにしてもスッと入ってきてスッと消えていったなぁ……。
表向きの筆頭がラミ様だとしたら、裏の筆頭はきっとあのおじい様だろう。






