38、英雄筆頭ラミ
「久しぶりだなっ! ケンっ!」
壮年に入っているだろう男性の声が聞こえた。声に張りがあり部屋の中で反響して体に響く。
王都に入り女の子2人に見つめられたところまでは覚えてる。
小さなこの体はストレスに弱いんだな。
「ラミ様。お久しぶりです」
「そう堅くならなくてもよかろう。エリも久しぶりだな」
「はい。あの時はパーティーを離脱してしまい申し訳ありません」
「だからそう堅くなるな。パーティーを抜けたことに引け目があるのは分かるがしょうがないことだろう?」
「そのために木の神に謁見する機会を逸してしまいました」
「確かに代わりが利かない君たちが抜けたのは痛かった。だがあのまま先に進もうとしてもどこかで止まっていた。途中の黒竜にしてもそうだ。ケンの剣で切り裂かなければ黒竜の鱗を突破することが出来なかった。あの段階で俺たちのパーティーでは先に行けないことが分かっていた。だからそう気に病まなくてもいい。それよりその子が君たちの子か?」
「はい。リク、自己紹介を」
「はい。父さん。僕はリクといいます。今年で2歳です」
母さんに抱え上げられ俺は目の前にいたダークグリーンの髪のおじさんに挨拶をした。
この人がラミ様か。身長が185くらいか?中背中肉といえばいいか、細身だけれども筋肉質の体が服越しにわかる。
調整役……。ラミ様は人の流れをコントロールして自分の思い通りにしてしまうそんな軍師のイメージがある。気がつけば「お前の行動はもう俺の手に落ちている。踊れ踊れ。俺の都合のいいように」状態にされていそうだ。
「とても賢そうな子だね」
「はい。ただ魔力の量が私共の手には負えませんでした。ラミ様のお手を煩わせるようで申し訳ありませんが面倒をみてもらえませんでしょうか?」
「魔力の量?」
「はい」
訝し気な表情をさせて近づいたラミ様は俺に手を伸ばした。
そして目を見開いた。
「……なんだ! これは?! 魔力の密度がおかしい? いや、外に零れ出る魔力が感じられない?」
「この子は月日を経るごとにその魔力を外へ放出しなくなりました。
生まれた頃は少しは出していた魔力もその身の内に蓄えだしました。
これは後天的特質かわかりません。そのため今のリクの魔力量は1等級をはるか超えたところにあります」
え、魔力の放出をなくしていたの気づかれてたの。
……だからかな?昔に比べてどこかよそよそしく感じられたのは。
魔力の放出ってけっこう重要な要素だったりするのだろうか?
「ここまで蓄えてしまった以上私達では放出させるコントロールすらできません。
気づいた時には私達の手の届く範囲にはいませんでした」
「わかった。俺の方で出来るだけの面倒はみさせてもらう」
「すみません。お願いします」
……あれ? この流れってもしかして
「リク君。俺のところで魔法の勉強をしてみないか?」
「え?母さん、僕は」
「リク。賢いあなたならわかるでしょう」
託児ですね。はい。
「魔法の勉強が終わったら会えるようになるから」
しかも期限不明ですね。
はい。やっちゃったな。おい。






