37、王都市街
街道を行く足取りは1等級魔法使い達のテンションにつられるかのように浮足立った空気を纏っていた。
彼らの興奮の行く先は父さんと母さんの話。
王宮に現れた動きの素早い影のモンスターを1等級魔法使いとは比べられない効率の良さで運用した身体強化魔法を駆使し周囲に被害を出さないように仕留めた父さんの話。
その際に母さんが敵の行動を阻害するように魔法を使っていき見事に仕留めたという。
周囲に被害を出す気があれば1等級魔法使いでも出来ただろうがそれは例えばの話。
父さんと母さんでなければ対処できなかった事案だった。
そこで目をつけられ勇者パーティーに組み込まれることになった父さんと母さんのシンデレラストーリー。
教本にものるほどであり、魔力の大小が全てではないこと、大は小を兼ねきれるわけではないことを教えてくれるとして有名な話だという。
自分達の武勇伝を聞かされて気恥ずかしいのか、父さんと母さんは照れたような口調でキルさんたちの質問に答えていく。
知らない単語が多すぎて憶測変換使いながらのため、正確な内容を聞けたのかわからない。
とりあえず辞書が欲しい……っ!
普段使われない婉曲表現のせいで知らない単語が増えて思考が追い付かないっ!
もっと言葉を覚えないとだ……。
まだ文法の把握と絵本の言葉くらいしかできていない。
「ケン様、エリ様っ! 王都へようこそっ!」
キルさんの元気の良い声が頭に響き目を開けた。
父さんと母さんの武勇伝をBGMにうつらうつらしていたらどうやら王都へたどり着いたようだ。
いつのまにか乳母車の中に戻されていて視界はいつもの如く屋根しか見えない。悲しい。
「ケン様とエリ様はラミ様に会いに行きますか? 僕がご案内致しますっ!」
キルさん……いつの間にか父さんと母さんを様付けにしてる……。
尊敬の念がカンストしたのか。
「そうだ、彼に会わないと住民権の方がどうにかできないからな」
「ラミ様はお元気にしているかしら?」
「元気も元気。いっつも僕らをお空に吹っ飛ばしてますよ……。ラミ様は」
「相変わらずか」
「相変わらずみたいね」
キルさんと父さんと母さんは大分仲良くなったようだ。
一瞬、俺のせいで不和に陥るかと不安になったよ。安心できた。
「あれ、もしかして起きた~?」
「そうみたいね」
乳母車の中で身を起こすと乳母車の壁の上から目が4つ見えた。
正直に言おう。恐いぞ。それ。
この体になって暫く経つから大分感覚の認識は直せていると思う。
だがな、体格差を考えてみよう。俺まだ身長が1mに届いてないんだ。
例えばだがプロレスラーのような体格の人が側にいたら慣れないうちは威圧感を感じるだろう。
それは身長差があり見下ろされるからというのも大きいだろうし何かあった時抵抗できないと身体が思うからだと俺は思う。
側にいても危険じゃないって身体が納得するまでは身の危険を感じて恐がるのは仕方のないことだろう。
結論いえばまだ俺の身体は彼らを脅威だと考えているんだろう。臆病者め。






