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377、勝負には負けた

 目の前の出目で出来る事を適当にする。

 基本はそれで勝てる。行き当たりばったりでも。一定のラインまでは。

 でも戦略性が足りない。計画性のなさがゲームに現れる。


「負けがこんできた……」


 ぬいぐるみ野郎は愉快犯。楽しければ勝ち。

 ニーナはバランス。負けている方に助力する立ち回り。

 俺は……特にゲームの勝敗以外見れていない。

 バランス的な立ち回りが好きだが、それが2人もいたらつまらん。


「そんな時もあるよの」


 ゲームに熱くなれないのがなんかツラい。

 冷めた大人にな……いや、子供の頃から変わらない気がする。

 熱くなりたいけれど、むきになれる様な精神性じゃない。


「やーい! ざーこっ!」


 なんでこいつはこんなにもイラつくんだろうか?

 子供の振る舞いは許せても、いい年こいたヤツのガキみたいな振る舞いは腹立つっていう事か?

 子供割はお前には適用されないんだ。


「そろそろ飽きてきちゃった。何か別の事しない? 外には出ちゃダメなんでしょ?」


 ときには待つ事も重要なのは分かる。

 でもこの体は稼働するのに莫大な魔力が必要になる。

 考えるとすごくもったいない。何にもならない遊びはしたくない。


「逃げるの~? 負けているから逃げるんだ~?」


 ぬいぐるみがウザすぎる。

 その頭に指を突き刺して引き裂きたい。

 やらないけど。


「と言われてものぅ。我から提案できるものはそんなにないかの……」


 ゲームも大事ではある。基本的な知識や経験がある事で話をしやすくなる。

 ただこのメンツでいくらゲームをやっても正直楽しくはない。

 ぬいぐるみが嫌いすぎるから。マジでこいつが嫌。


「ニーナは僕が想像し創造されたゴーレムみたいな存在だよね?」


 ゲームから話を逸らそう。

 前提条件の確認を口頭で行って、事実のすり合わせを行いたい。

 俺がこうやったと考えていたとしても、事実の方は違う可能性が高い。


「その様にシロ殿は考えておったんじゃの?」


 意味深な言い方。そうではないかの様な。

 そもそも認識として間違っていた?

 どの様に違うのだろう? わからない。


「ニーナの意識はまた別だろうけど体はそうでしょ? もしかしてそこから違った?」


 魔力。存在として、意思もつ魔力がそもそも意味わからない。

 魂か何かがその形を取っているのだろうか?

 思考を行う方法、脳に当たるモノはどこにあるのだろう?


「合っているとも言えるし、合っていないとも言えるのう」


 この言い回し、くどくて嫌いだ。端的に結論を言え。

 まぁ、こういう言い方をするという事は言いたくないのだろうが。

 自分で気づかせる、もとい間違った結論に誘導したい時に使いやすい言葉使いでもあるし。


「そうか。じゃあ、いいや」


 こういうのは相手の土俵にのらない方がいい。

 相手の与える情報は間違ってはいないが、大事な情報が欠けている事が多い。

 間違った情報を与えるのは隠し事を示すまである。だから嘘とまでは言わない範囲で言葉遊びをするだろう。


「ふっふっふ。私わかっちゃった! ニーナさんは自分で自分の肉体を構成したんでしょ! イメージ元はシロが考えたモノだけど、中身は全部自分で作ったとか!」


 ……なんかすごく正解みたいなことを言うぬいぐるみだな。

 ニーナは微笑んでいる……? たぶん微笑んでいる気がする。

 図星をつかれたとか、そういう反応をしていないな。わからなさすぎる。


「そうかもしれないのう」


 楽しそうな声でニーナは言う。

 やっぱこの感じ、間違った方向に誘導させたそうだ。

 真実かもわからない方に誘導されると思考が面倒になる。


「それの内容がニーナの魔法を使える理由だったりとかする?」


 これで俺に魔法が使えないとか言われたら面倒だな。

 使いたい魔法は今特には思いつかないが。

 魔法で人格を変容させられたら助かるかもしれない。


「気になるかの?」


 面倒くさい。すごい面倒くさい。どうしようもなく面倒くさい。

 もしこれが本当にただ教えたいだけの、自慢したいだけのヤツだったらどうしよう?

 会話を楽しむという能力が俺にないのが露呈するだけでは?


「気になるは気になるよ」


 不本意ながら。それが先へとつながる情報かもしれないから。

 だがそれが正しいかを信じられるまでにどの程度の時間がかかるかわからない。

 嘘だと思う内は成功しない方法だったら終わりだわ。


「そうかの。そうかの。それなら我が深淵を御見せしようぞ」


 中二病かな? すごい反応に困るんだけど?

 すごいかっこつけて言うじゃん。

 内心、俺カッコいい! みたいなどや顔とかしてない?


「それでタネ明かしとしては?」


 頭がひねすぎててツラい。もう少し気性を落ち着けないといけない。

 勝負事の負けがこんできたからだろうか? 人間性が悪すぎるんだろうな。

 心が狭すぎる。自分しか住めない様なワンルームか? キッチンすらなさそう。


「作られたしばらく後に、内部機構を我が改造したじゃな」


 なんかこうちょっとイラっとした気がする。

 それをここまで引っ張る必要あっただろうか?

 いや、作成後に改変ができるというのは大きいのか?


「その改変は魔法が使える様にするというモノだったりするのかな?」


 作成中の改変はまだパン生地の段階で手を加えるという事だからやりやすそう。

 けれどもう焼き上げられた食パンをロールパンにしようとするのはムリだろう。

 ゴーレムの体は魔法を分解し魔力をエネルギー源として利用するのだから、その体を変質させるのは焼き上げられたパンを別の種類のパンに変える様なモノだとすら感じる。


「それだけではないがの。魔力としての自分がある我には自分の体を変質させる事などお茶の子さいさいじゃったのじゃ」


 どや。その擬音が聞こえそうなくらい自慢気な雰囲気をしている。

 全くもってけしからん野郎だ。内部の性別が男か女か知らんけど。

 そもそも元の人格というか、内部の魂は人間なのだろうか?


「ちなみにその姿を変える魔法か何かで、その犬の姿から変える事はできなかったの?」


 さっきの言葉からしてすぐに出来そうだなとは思ったのだが。

 犬の体で不満がないとかだろうか? その姿である事のメリットが多いとか。

 神獣認定だし、姿かたちで得する事も多い可能性が高い。


「姿の方はのぅ……変容させると中身がこぼれかねないから難しいのぅ」


 中身がこぼれる可能性があるのか。

 こぼれない様に内側に膜を作ってみたいなのでも難しいのだろうか?

 膜の外には干渉できないとか、接触していないモノは変質させられないとか、そんな条件があるのではないだろうか?


「そうなんだ。その変質をさせるのって僕でもできるかな?」


 それ以外の興味はほとんどない。できるできないだけさっさと答えてほしい。

 いや、できるできない自体は気にする必要はないか。やるしかないのだから。

 それ以外の方法の存在を知ったり思いつくまでは試して実験するしかないだろう。


「出来るといえば出来るだろうが、出来ないといえば出来ないかもしれん」


 どっちだよ。理論上可能だが実際には出来ないという案件か?

 開発費数億とか数千人単位の人員とかあれば出来るけど、そんなの用意できないだろうし実現は出来ないよ? みたいなソフト開発現場か。

 出来る? ならやれよ。予算(少な過ぎる)はこれな。理論上できるんだろ? みたいな営業が取ってきたクソ案件かな。


「とりあえずやり方を教えてくれる? やってたら何か思いつくかもしれないし」


 駄目で元々だ。とりあえず当たって砕けて試行錯誤を繰り返すのがいいか。

 少なくとも今の時間よりも生産的だ。何かを見つけられる可能性を感じられる。

 限られている資源、今なら魔力か、それをどうにかやりくりしていると思うとまだ生きている感覚になる。





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― 新着の感想 ―
[一言] できるのかできないのか(゜ω゜)?
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