369、書庫に入ろう
ほとんどね。すごい意味深。見栄とか入っているのかな?
自分を大きく見せたいそんな男の子心とかあったのだろうか?
それとも本心でそういったのだろうか? わからないな。
本心だとしたらそれはそれで怖いな。
自分の家の様に扱ってくれとか言われていたのかもしれない。
言われたからといえそれを自分の家だと紹介できるかと言われたら微妙か。
だからほとんどなのかもしれない。管理のほとんどを自分が責任持つとかだろうか?
リフォームとかも含めて自分で勝手にやってもいいとかならそう思うだろうか?
「そういえばここは王都の中心近くなのかな?」
歩いた距離からしてそこまで奥地だとは思えない。
だけれども王都の大きさも正直つかめていない。
半径5キロとかはさすがにないだろうな。
東京駅から新宿駅までがだいたい7キロだったはず。
東京都二十三区が敷地面積とか巨大すぎるもんな。
せいぜい半径2キロとかか? それは狭いか?
京都も1辺10キロはなかったと思う。
食料事情や移動方法が豊富な現代でもそんな大きな都市がないと思うと、1つの都市の限界はそのくらいの広さなのかもしれない。
海外を参考にした方が良かっただろうか? アメリカとか土地の広い地域の。
でもそちら側は地理をちゃんと把握していないんだよなぁ。
ニューヨークはマンハッタン島だっけ? そこまで広くなさそう。
「ここは王都の端の方かな? 東側だよ」
東側。なんかこちら側に縁があるのだろうか?
王都から出た時も地下水路から流された先は東側だったし。
住みやすいとか何か色々理由があってこちらに住居が偏っていたりするかもしれない。
排水とかもこちらが都合よかったのだろうか?
山が西に多いとか水の通り道に王都がなっているとは予想しているのだけれど。
地下にけっこうな量の水が流れていそうなんだよな。
巨大魚? クジラっぽい何か? あれを考えると地下空洞はけっこうな歴史がありそう。
人間が地表に王都を作る前からあっただろうな。
ワンチャン川から遡ってきた海獣が魔力を吸収して変質したとかもあり得るかもだが。
「王都の広さがあまり想像できないや」
まぁ、前世でも自分が住んでいるところの凡その大きさとかちゃんと想像していなかったが。
犬の散歩をしていた実家の時でもそこまで遠出をしなかった。
狭い範囲内でしか動かなかった出不精が厭わしい。
想像力が低すぎてどれくらいの区画があれば何人を養えるのかが分からない。
王都の概算の居住人数が想像しきれない。
魔力により農産物の収穫量がすごいというのを考えると前世の街よりも養える人口は多いのだろう。
だが魔力の量だって限りあるだろうから、全てを農産物に回せないだろう。
土地の広さも限りある。爆発の危険性か、居住スペースは広めにしていた。
他の街とのやり取りで入ってくるモノも出ていくモノもたくさんだろう。
王都だけで完結するわけじゃないから、余計に規模の想像へのデータが足りない。
「いつか王都を散策しようね」
リク君は優しい声で言った。保護者力が高い。
優しいお兄ちゃんが妹に対して話すかの様な声音である。
妹ではないと言いたいが、利益を甘受している身で強気には出にくい。
いや、強気に出るのが怖いのだろう。
幻想を砕く様な振る舞いを続けているはずなのに壊れないし。
リク君に見えている俺はどこまでも子供で、その幻想は簡単には壊れない程に強固なのだ。
そしてそんな強固な幻想の下には何が、どんな感情を隠しているのか、わかったものではない。
人間の感情程俺に分からないモノはないのだ。
たぶんこうだろうという推測はいくらでも立てられるが、実際は見えたモノではない。
背景を適当に予想して、こう考えるだろうというあやふやな思考で想像するしかない。
「できるだけ早くがいいな」
外に出てまずは顔なじみを増やしたい。
回数を増やし、とりあえず顔だけでも繋いでおきたい。
小さい体を利用して懐に飛び込む事ができれば助かる。
……そんな事を考えても、基本話題がないのだよな。
ただおはよーとか挨拶だけして去る子供になりそう。
考えるだけしか出来ない顔なじみを作るという行為。
外に出るだけで顔なじみが作れるというなら、前世はお友達たくさんだよな?
そうじゃない段階でお察しというものだ。
近況報告をまずは覚えよう。基本の話題だ。
「書庫に着いたよ。入口付近は資料が多くて、奥は娯楽寄りのモノが多いかな?」
さてどうとる?
仕事で使うから手前に置いてると考える?
それとも誰かが見に来た時に仕事をしていると見せるために資料を手前に固めてる?
真面目そうなリク君だし、前者かな?
にしても娯楽寄りのモノを置いているのか。
いや、娯楽寄りだからこそ、紙で置いているのかもしれない。
紙の資料は電子化ならぬ魔力化? 飛行船で見たあの図鑑の様にした方が検索は早いだろう。
それが出来ない理由、しない理由があるかもしれない。もしくはした後かもか。
生物や魔物の研究者をしているならあの図鑑は分かる。
いや、もしかしたら飛行船含む道具全般の開発か?
ゴーレムの事を考えると、その分野の第一人者みたいな立ち位置に成れるかもしれない。
「けっこう読みたいけど、ここってどれくらい居てもいいの?」
学校の図書館を思い出す。
10分休憩の度に本を借りに行っていたバカだ。
放課後とか全員下校しましょうという時間まで居たものだ。
ただ監督者としてリク君を引き連れてしまっている現状、そんな入り浸りは迷惑だろう。
数冊……十数冊……数十冊……足りるか?
ここの世界の言語でそんなに読んだ事ないし、1日分の本はそんなに数は要らないかもしれない。
娯楽寄りだと30分で1冊くらい読めた記憶。いやもっと早かったか?
脳内で情報を消化する時間が読む時間の大半を占めているから、資料の方をメインに読めばたぶん1日1冊ですら難しいかもしれない。
ただ現状欲しい情報はこの世界の一般常識というか、ここからは異常で娯楽としてなら楽しめるみたいな、許容される人間の範囲だろうか?
つまり娯楽本。そちらが情報源となる。
「そうだねぇ……むしろどれくらい居たいのかな?」
居れるなら1週間だろうと1年だろうとこもれるんだが?
いや、本の冊数的に居れて半年? 棚が1段が30冊くらい入りそうなサイズ。それが8段くらい。裏表でだいたい500冊くらいは入るか?
それが10くらいある。蔵書数的にはけっこう満足出来そう。
居座れるなら足場で読んで、読んだ端から返し、その場でまた読むとかになるだろうか?
ゾーンに入ったら棚1つ1日とかになりそう。
まぁ、現実的にみて1日20冊か? なら250日くらいで読み終えられそうだな。1年はいらない。
……バカ。1日を全て読書だけで終えられる前提でモノを考えるな。
世の中本を読むだけで生きていられるほど生温いところはないんだよ。
それが出来るのは勉強しなくてもテストで点数が取れる様な学生くらいしかない。
暗記科目は苦手だったな。人と話をしなさ過ぎて単語をまるで覚えなかった。
人と話す事がないと自分だけ理解できれば問題ないという意識になる。
今世はちゃんと人と話をしなければ。
「本を選ぶのに1時間かな? 読むのも含めたら何時間でも居られてしまうよ」
この場にどんな本があるか、とりあえずタイトルだけで判断する。
その上で借りる本を選定し、今回は10冊で抑えたらいいかもしれない。
でも10冊で抑えられるだろうか? キツくないか?
ダメだ。思考が本に囚われすぎている。
人生に本しかない人みたいじゃないか。
まぁ、前世は割かしそうだったけれど。
今世はちゃんと人間しなければいけない。
道を誤るな。情報処理だけが人生じゃない。
そもそも読むだけでお金がもらえる様な仕事についていない。
読んでお金をもらえる様な仕事……本の紹介とかする様な仕事か。
お金がもらえるまでの仕組みを作るのが大変そう。
有名になるとか、広告を出せる様になるとか、お金を払ってでも紹介して欲しいと思ってもらえるまで知名度を上げるのとか。
本当にキツそう。どんだけ動かないといけないんだ? 知人経由で口コミを増やすところから始めるしかないよな……。
結局は話して楽しい人間でなければ独自の仕事は出来ないな。
「そうだねぇ……じゃあ、今日は1時間半かな? それくらいなら僕も一緒に居られるから」






