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363、入る準備

(痛いんだって?)


 お前は注射とか怖がるタイプだな。

 いや、面白がって怖がらせようとする方のタイプか?

 注射は怖がって筋肉を硬直させた方が痛くなるモノだ。


(なんかこうもう少しビビってよ?)


 怖いのは人間関係以外特にないし。

 その人間関係もろくに持たない俺に怖いモノなどほぼない。

 人間性は本当に大事だよな。


「頭からニーナの口に入ればいいか?」


(覚悟ガンギマリ過ぎ……)


 ようやくお別れの時が来たようだな。

 長かかった旅路もここまでだ。

 ほんと長かった。

 

(びっくりする事を言ってもいい? 実はね、私達の付き合い、3日もないんだよ?)


 年単位の時間が経っている気がするんだが???


(君って1人だとろくに思考を表に出さなくなるからね)


 人間関係以外で悩む必要がないからな。

 実験はやらなければわからないし、手元になければ調べられない。

 金銭が必要になる試料の類も現状はそこまでの実験を行わない行えないから考慮の外だ。


「むしろ足からがいいだろう。その方が出やすいであろう」


 出る事を考えないといけなかったか。


(定住するつもりだったの?)


 いや、その時不思議な事が起こったで済まされるかと思った。


(どんなだよ!)


 まぁ、吐き出されるなら向きとか問題なさそうとかあるだろ。

 大きさ的に俺のこの身体くらい縦で入れそうなくらいの口の大きさだし。

 そもそもどうやって俺の中からお前を取り出すのか正直見当がついていない。

 聞いている感じ丸呑みにされるっぽいしな。


(手とか噛んで吸い出されるとか考えていたしそれもそうね?)


 お腹の中で溶かされるかもしれないな。

 ゴーレムだからできる事があるのかもしれない。

 もしかしたら鳥の砂肝よろしく内臓の一部にゴリゴリと押し潰して壊す機構があってもおかしくない。


(怖いわ!)


 まぁ、その過程でお前は死ぬ。


(そうだった!)


「本当にシロはするんだね」


 リク君が面倒な子になっている。まぁ、リク君だし仕方ない。

 何か言った方がいいだろうか? なんか言わないとヒトデナシ具合が上がるか。

 だがなんて言ったほうがいいだろう? わからないな。


(面倒な子って君が言うんだねぇ)


 まぁ、俺が面倒なのは言わずもがなだな。

 でも引き止めるリク君も自分が面倒な事を言っているとわかっていても言わなくちゃとなっている。

 俺の様に壊れた人間性の持ち主でもないから当然の事か。


(君って自分が人間として壊れているとよく言うけど本気なの?)


 本気も本気。理屈で感情を解釈しようとするヤツが人間なものか。

 俺は自分の感情すらも要因を積み重ねて考えてしまう。

 むしろ要因を積み重ねて自分の取るべき感情を推測しているというべきか。


(そう? その君の考えはどこから来ているの?)


 過去の経験の積み重ねだろう。本から得たモノも多い。

 様々なモノを判断要因として積み重ね今の俺が見える様になった。

 本来の俺は無関心無感動のコミュ力0だもの。


「そうしなければ終わらないからな」


 生きるために。苦しまないために。気楽に過ごすために。


 人間になれない俺にとっては生きる糧を得るのが難しい。

 好き好んで苦しみたいわけでもない。

 断食したらササッと死んでしまう小動物でもない。


 手指の感覚が薄れて死に近づいたかな? と思ってもそこからまだ何十時間も生きられるのを理解した時は嫌になったよ。

 俺はどうにも簡単には死ねないんだなって。

 あの事故で死ななかったら何歳まで腐った根性で生きたのだろう。


 会話能力の低さとか考慮したら例え一瞬頑張ったとして先はなかった。

 見れば分かると浅い事を並べ立てて、思考を浅くし探究する事も上手くできない。

 やれば出来る? 決まりきった事をやるだけならマニュアル用意してそれに忠実に実行できるヤツで十分だ。

 機械がそういう事、得意だろう。人間の方が安く動かせる内は仕事はなくならないだろうが、給料などは最低レベルになっていく事間違いない。


(将来の不安と健康と軽い栄養失調が組み合わさって事故死の直前は最悪の心境だったという事ね)


 かもしれない。


 やり直しができるかも? と思った転生もこの様だ。

 大概生きる事に向いてなかったのだろう。

 今また状況によっては死ぬかもしれないから、余計な事が頭を過ぎりまくっているのか。


「ではいったん服を脱いでくれ。そのままでも飲み込めるが布で途中吐き戻しなどしてしまうと時間がかかるからな」


 ……分かるんだけど、なんか恥ずかしい……。


(死ぬのはいいけど恥ずかしいのはダメってなんかすごいね?!)


 死んでもそれまでだけど恥ずかしいのはなんか違うんだよな。

 しかもそれをこの体でやるというのがダメ過ぎる。

 前世の体なら躊躇いなく脱げただろうが、この体は色々な意味でよろしくない。


 リク君はそうは見ないと思うのだけど、あの執着具合を考えるとなんか怖い。

 ニーナの方もたぶんそういうのを気にしない方だとは思うが、裸で口の中に入るという点でなんかダメな気がする。

 性的な意味合いはないのは分かるし、そうは見ないのは理解しているとは思うのだが、むだに思考が巡って怖くなる。


(君の頭にはエロ同人を収録されているからかな?)


 俺はエロが分からないから他人の感覚を知るために必要だったんだよ。

 実践の参考にはならないにしても、興奮する方向性とか、どういう風に考えてしまうのかとか、思考サンプルとしては面白いからな。

 人間を模倣するために必要だったんだ。


「分かった」


 ばさばさと服を脱ぎ散らかす。

 荒っぽい感じを出せばエロさはない。

 こう男っぽさが出ればそれでいい。


(むしろ脱ぎ散らかした方がエロなのでは? 普段感がなくてこの後情事に入りそうな、むしろ情事に移った後というか?)


 万年発情期……。


 なんかそう言われたらそんな気がしてきたわ。キツ。

 そもそもこの小さな体に発情したらヤバいヤツだ。

 そんなヤツは股間を蹴り潰してやる。


(中身の年齢的には合法なんじゃない?)


 そもそもこの体は男性でも女性でもない。

 性器も未成熟というか中途半端な形してる。

 つまりどちらの対象にもなり得ない。

 子供という概念をこの体は体現しているのだ。


(中身おっさんの時点で子供という概念崩壊しているよ?)


 うるさい。


「準備が出来たら入っておくれ」


 ニーナは大きく口を開けた。犬特有の臭いはしない。

 肉も野菜も食べたりしないのだろうか?

 軽く吐き出した息は生温かいが臭いはまるでなかった。


 ピンク色の肉質。洗濯板の様な上口蓋。

 唇に当たる部分は黒。メラニン細胞なのか、黒よりの茶色の斑がところどころ。

 白い犬歯に指を沿わせる。今の俺の体では犬歯に腕を回しても指が届かないくらいの大きさ。


 垂れてきた透明な液は少し粘性を帯びていて生温い。

 くどいが臭いはない。歯石の類も見当たらない。

 虫歯の類も見当たらない。とても健康的な口内環境だ。


(早く入りなよ!!!)


 断頭台への歩みを急かす囚人がうるさい。死ぬのはお前だ。


(そうだった!!!)



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[一言] お口にダーイブ!
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