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358、ヤツとの再会

 あれやこれやとリク君とサク先生が話をして、気がついたら外にいたのであった。意識が飛びすぎ。

 意識が曖昧ということは魔力がちょうど尽きかけているということかもしれない。

 そうだったらちょうどいいな。早めに事が解決できるのだから。


(やだ、死にたくない!)


 うるさい。死ね。


 気が付けば手を引かれて歩いているというのもなんか怖い。

 意識なくどうしてそんな状態になっているのか。

 俺はいったいどこに向かって歩いているというのだろう。


(君が弱まれば必然私の領域が広がるのだよ!)


 最悪。マジで害悪じゃん。体の主導権を奪っていくだと? やってられるか。

 本当にこいつを切除しなければならない。排除して俺を取り戻すのが大事だ。

 自分が自分であるためにはそうする必要がある。


(でもでも! 私がいれば君が意識を失おうと活動できるんだよ! 隙がなくなるよ! 強いよ!)


 だが信用のできない相手が勝手に体を動かすのだ。

 それのどこが怖くないと言えるのだ?

 勝手に体を動かしている段階でありえないんだよ。


 そもそもリク君に色目を使う部分がありえないのだ。

 お前が自分の体でやるなら勝手にふられていろで済む。

 だがこの体でそれをやろうとするから信じられない。

 勝手に俺の信用を損なおうとするな。


(別に私は告白したりとかしたわけじゃないよーだ)


 態度がなよなよしていた。俺に偽装してそれをしていた。

 マジでない。体を動かす方面での信頼とかそれでどうしてあると思えるんだよ?

 内側にいるだけでも害悪なのに、体を動かしても最悪とか存在意義がないだろ。


(そ、そこまで言わなくても……!)


 なぜ? なぜ言われないとか思っているんだ? ありえなくない? ありえないよね?

 お前はほんとありえない存在なんだよ。疾く死にさらせ。

 俺の中にお前の居場所はありはしない。俺の体でやらかし過ぎたんだよ。


「到着。ここが王都での家だよ」


 豪邸。なんというかデカい。メイドさんが何人もいそうなお屋敷だ。

 なんかすごい怖いんだが。いつの間にそんな歩いていたの? え? ヤバくない?

 目の前にこんなデカい屋敷が来るまで気づかない事とかある?


 あとなんか小さい東屋にゴールデンレトリバーがいるわ。

 違う。ゴールデンレトリバーが大きすぎて東屋が小さく見えるだけだ。

 というかニーナじゃん。何年ぶりだよ。こんな感じでのんびりしているのかよ。ヤバいわ。


(やっぱりここにいるのよね……)


 なんか知っているのか、お前。


(だって私の体あいつに壊されたもの)


 ……。


 なんか超展開聞いた様な気がする。


(あいつね、私のいた組織をぶっ壊しに来たのよ。私は転生者で魂が強かったから魔力の大半を食べられたけど人やモノに憑いて何とか生き残れたの。でもまぁ魂が欠けたから人に取り憑くみたいな事ができる様になったとも言えるわね)


 急に設定をばらばらと落としていくな。

 カバーストーリーか何かか?

 真偽も不明なノイズを加えていくなよ。


(本当の話よ。あいつがいなかったら私はまだ肉の体を持っていたわ。お肉だって自分の口で食べられたはずなのに)


 食欲だけは本物と認めよう。食欲だけな。


(恨み辛み妬み認めてよ!!! この状態になってから自分の口で何も食べられなくなったんだよ! 情報を抜き取っても食べる感動は得られないの! 他人の経験は他人の経験でしかなくて最悪なんだよ!!!)


 食欲と性欲が強いヤツだったんだな。最悪か?


(君が足りないだけだよ! 何が楽しくて君は生きているんだよ!)


 分からん。知らん。その段階まで辿り着けとらん。


(……ごめんね……?)


「あれってニーナかな?」


 でもやっぱり大きいな。あの大きさはなかなかすごい。

 考えたの俺だけど。守護者として欲しかったから。

 中身がなければ良かったのに。道具として扱えない。


(君って変なところこだわりがあるよね。なんで自意識があったら手元においておきたくないの?)


 意識を制限する事で辿り着けるモノは限られているから。

 相手が望み、余計な事を遮断して、一意専心で進むのならいい。

 だが自由意思をもって、様々な事に手を出し、複合的に成長する方が結果的に上へと行けると俺は思っている。


 相手を勝手に剪定し、思い通りに育てようなんていうのは烏滸がましいんだよ。

 意識のない道具相手ならともかく自意識のある相手にやるのは気持ち悪い。

 無難に収めようとしたらこじんまりとしたモノにしかならないし、歪な精神になる可能性が高いとすら思う。


「ニーナだよ。いつもあそこで寝てるんだよね。家に入るのは大変な大きさだし」


 入るには入れるのだろう。一部扉のサイズがおかしい場所があるし。

 雨とかの時には入るんだろうな。面倒だろうから。

 ただ足とか拭いたり体を洗うのは大変そうだな。


 こっち見た。気づいたか。いや、元々気づいていたか。

 起き上がって伸びをして頭を少し下げつつこちらに小走りでやって来る。

 サイズ的に今の俺はニーナの鼻の部分と同じくらい。やはりデカ過ぎる。


 このサイズになるとダニとかノミとか大変そうだな。

 いや、ゴーレムだから吸血出来ないし、そういうのは一切いない? フィラリアとか狂犬病とかも考えなくていいのか?

 そう考えるととても楽な管理になるかもしれない。


「リク殿。我を呼んだかの? そしてそちらは……なるほど。無事に出会えた様で僥倖。久しぶりであるな、シロ殿」


 顔を覚えていたのだろうか? 分からない。

 そもそもニーナの中身はいつの時代の人なのか。

 あとよく間借りされる俺の体は何なのか。

 たしかニーナも一瞬かどうか分からないが俺の中にいたらしい話をしていた気がする。

 俺の体はマンションか何かなのか? 大家は住む許可を出してないぞ。


(大家さーん! お湯出なーい!)


 空き巣野郎が。いや、押し入り強盗か? 図々しいわ。


(私何も盗んでない!)


 俺の円卓を返しやがれ。居直り強盗が。


「優雅な生活をしている様だな、ニーナは」


 羨ましいな。人間の形をしていないから人間として振る舞う必要がない。

 その癖人間並の知能があると見られるから、都合いい時だけ人間として扱われる。

 不利益に対しては魔法を使えなくさせるぞと脅しをかける事も出来て、物理的に排除もやりにくいゴーレムという体を持つ。


 最初期の交渉で噂話を聞くというのがあったはず。

 あれも大きいだろうな。くだらない話でもいいという部分も含めてズルい。

 重要な話をバラさせるのは短期的にはいいが、長期的には親しみやすさ等を覚えさせるのに役立つ。

 丁寧だが時代がかった言い回しをすることにより、相談役等の立ち位置につく事ができれば重要なポジションにも着きやすいだろう。

 見当違いな事を言ったところで、見た目が犬のお化けだ。

 人と違う理で生きているからそういう事もあるかで、納得とかされる可能性が高そうだ。本当にズルい。


(今の君も似た事ができるんじゃないの?)


 出来るか出来ないかで言えば出来るかもしれない。

 だがニーナと比較し小さい体は例えその戦闘力が変わらないとしても侮られる。

 子供の言い分みたいな扱いにもなるだろう。いい感じのポジションを目指すのはとても難しいだろうな。


「息災そうでなにより。リク殿はお主がどこにいるのか調べるのに大層苦労していたぞ? どこで何をしていたのであるか?」


 翻訳が下手な気がする。時代がかった言い回しの基準が時代劇だからだな。

 古書の類はそこまでしっかりと読んでいないのがバレる。

 吾輩は猫であるの原文とか何となくで読んでみた事あるけど、いわゆるが所謂と書かれてたりで一冊読むのに超絶時間がかかったんだよな。


 使ってない言葉はどうにも思考が曖昧になる。

 英語とかだいたい単語は読めるけど書いたり口に出すのは思ったよりも出来ない。

 まぁ、元よりしっかりと勉強したわけでもないし、ニュアンスだけ抑えているに近かったか。


(言い訳大魔神)


 うるさい。


「辺境まで行ったけどそこで魔力切れして石像になってたわ」



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― 新着の感想 ―
[一言] シロのかたくなる カッチカチ
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