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356、あの人

 リク君はこちらの歩調に合わせてゆっくりと進んでくれる。

 見え隠れする気遣いに自分の小ささを覚える。

 自分しか見えていない。相手への配慮に欠ける自分自身が恥ずかしくすらある。


 まともな頭をしていないから寄生虫なのだろう。

 吸いつく先を求めてばかり。片利共生? 俺だけメリットがあるならそうだろう。

 相利共生でありたいな。こちらがいる事でメリットがあってほしい。難しいけど。


 メリットがあるから一緒にいるのは分かりやすくていい。

 求められているモノが具体的だからこその明瞭さがある。

 割り切って摩擦なく生きられそうだし。人間性は低そうだが。


「先生にシロが会うのは久しぶりだね」


 先生? ミラ先生かな? それ以外だと顔を合わせたレベルのハクさんか?

 先生と呼べるくらいの関係性を考えると難しい。いや、リク君から見たら先生っていうだけか?

 関わったことのある人は少ないし、俺が会ったことがあるという事だけで大分絞られるな。


 本命はミラ先生。次点ハクさん。大穴ルイ君かな?

 何がどうしてルイ君が先生になったか予想がつかないけれどね。

 幼馴染で何かを色々と調べた結果、先生といえる程に知識を集めた可能性。


 まぁ、ないか。どんな動機があってそうしたと思うんだよ。

 俺がいなくなった後のリク君に何があったかわからない。

 そこで様々なドラマが生まれている可能性はあるだろう。


 でもたぶんルイ君ではない。脈絡がない。

 俺がそうだったら面白そうと考えただけだし。

 むしろルイ君を思い浮かべた理由が不明。


 いや、ルイ君以外にリク君の中にいた際に遊んだ子いないからなのでは?

 モブっぽい感じで遊びに巻き込んだ子はいたけど、顔と名前がハッキリしない。

 不思議ちゃんは既に会っているし除外だよな。


「俺が会った事のある人なのか」


 少佐って事を考えると、軍属かつ階級が高かった人物だとは思う。

 少佐待遇で扱うとか、魔力等級で優遇措置を取られているとかも想像できる。

 勲功をあげる様な戦火が眠っている間にあったかもしれない。

 上が物理的にいなくなり、一足飛びに昇進したとか?


 戦火云々は海嘯だろうか?

 リク君の両親もそこで功績をあげてたよな。

 なくはない話か? だとしたら武力に優れていそう。


 本人の武力よりも輜重部隊の編成とか采配での功績は……難しそうだな。

 その辺りは軍上層の既に指揮権のある人がやりそうだし。

 発明とかであれば功績あげられそう。どうかな?

 リク君が「こういうの出来そう?」って聞いて、その人が試してみたいな感じだとしたら面白いかもしれない。


「そうだよ。シロの事もちゃんと知ってる人だね」


 ……。この姿を知っているという事か?

 いや、中にいた事を知っていると言っているのかもしれない。

 どちらだろう? だがニュアンス的に姿を知っている方な気がする。


 そうなると家出後になるぞ? 誰だ? 誰なんだ?

 化けガニの時の一等級か? 化けガニの近くにいた女の子?

 地下水路を抜けたところの山小屋の三兄弟? 辺境の街の連中?


 思い返すと意外と人にこの姿を見られているな。

 だがリク君と一緒にいるところを見られた人はいない。

 いや、軍関係者の面々はいるか。裏ボスっぽい人とか。


 裏ボスっぽい人は大佐とかもっと階級上だろう。

 いや、案外階級が低かったとかあるか? いやない。

 裏ボスっぽい人が目を掛けた人は目覚ましい功績を上げたとか、なんか人事的な部分にも手を出せるくらいの方だしな。


「誰がどうなっているのか、時が経ちすぎていてあまり想像がつかないな」


 最近の記憶が濃すぎて永い眠りの前の事が曖昧になっている。


(私とか濃いよね!)


 出なくてよろしい。沈黙のまま土に還れ。


(君が一番会話した相手、前世含めてももう私が一番じゃない?)


 マジでうるさいんだが?

 それに会話はしてない。ずっと投げっぱなしだわ。

 鉄球を殺すつもりで投げているんだからサッサと死んでくれないか?


(いやーん)


 ウザ。


「顔見たら分かるかな?」


 子供から大人な変化だと、分からない可能性が高い。

 大人だったらたぶん誰が誰とか分かるかもしれない。

 でもやはり大人だとしても分からない可能性ありそうだ。


 軍人さんが建物の扉を開けて中に招かれた。

 中は少しくすんだ赤い絨毯が敷かれている。

 ちょっとホテルみたいな感じの館だ。


 中央に軍人さんが立ち敬礼しながら道を作る。

 示される道順に従い、ふかふかする絨毯に足音を殺されながら進んでいく。

 結構な数の軍人さんが配置されてるのはそれだけ重要人物だからだろうか?

 軍人さんの表情が穏やかなのは少佐がとてもいい人柄をしているからかもしれない。


 リク君はいつもよりも少し多めな喜色を笑みに混ぜている。会って嬉しい相手なのだろう。たぶん。

 そこそこじゃなくて、結構親しい相手なのだろうな。

 何か同じモノを研究していたとかだろうか?


「少佐はこちらのお部屋におります」


 指し示す扉は既に開かれ中が少し見えた。

 書斎というよりも応接間が妥当な言葉かもしれない。

 適度な品が飾られていい感じのソファーが見えた。


 部屋の中に進むと白髪の男性が一人。

 紅茶を飲んで舌をあちちとしていた。

 赤い瞳でこちらを見て手を振っている。


 誰だろう……?


「ありがとう。サク先生、お久しぶりですね」


 サク先生。誰だっけ?


(君の記憶から察するにミラ先生の旦那さんかな!)


 確かに会った事あるし、ミラ先生繋がりで知られているのは間違いないわ。

 ミラ先生とは家族間の繋がりが大きいから親しくもなるだろう。

 ミラ先生の旦那さんだし、ミラ先生がここまで配置を回してるとかないかな?


(どうなんだろうね? ドジっ子要素は高いし、今も机に向こう脛をぶつけてるモノ。心配される要素は強そう)


 でも少佐になっているんだよね? なんでだろ?

 軍属という事すらも怪しいレベルなのだけど?

 白衣を着ているし、研究方面のお偉いさんかな? 少佐待遇で扱っているだけの。


(奥さんのコネ?)


 そうだとしたらリク君はたぶんそこまでいい感情はもたない気がする。

 潔癖な部分や能力主義な思考がうつっているとしたらね。

 環境に恵まれた研究者みたいなところがあるんじゃないかな?


(予算と戦わずに好きな研究が出来た研究者と)


 フィールドワークとか、薬品とかの研究資料を集めるとか、実験室を整えるとか、人手を増やし同時にできる作業量を増やすとか……。

 研究にはほんとお金も人手も必要になるからね。

 そして見つけた一つの事象は大概それだけではお金にならない。金食い虫が過ぎるのが研究……。


「そっか。シロちゃんは昔と姿が変わらずね」


 意識を内側に向け過ぎた。会話が飛んでいる。

 ふふって感じにサク先生が手を振り笑っている。

 意識がなかったのがバレている様だ。


 曖昧な表情を作りぎこちなく会釈をしてしまう。

 予想だにしない人で頭が追いついてない。

 そもそもサク先生は何を研究している人なのか。


 軍に重視されていると思えばある程度の判断がつく?

 銃弾とかレーダーとかは前世だな。魔力関係?

 物資輸送や支援関係もありそうだが、リク君と仲がいいのを考えると魔力方面の研究をしていそう。


「そういえばなのですが、そのシロに何やら悪いモノがついてしまったみたいなんですよ」


 おろ?


(私悪くないよー!)


 いや、悪いだろ。




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― 新着の感想 ―
[一言] ワンチャンゴーレム関係かな?
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