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355、駅から少し出た

 手を繋ぎますか?


 はい

 いいえ←


 いや、うん。気恥ずかしい。中身がいい年齢なのだ。

 精神が天真爛漫ないい子ちゃんなら何も思わず手をつなぐだろう。

 もしくは思考の余裕がゼロで、差し出された手を素直につなぐとかか。


(つまり私が暴れて思考の余裕をなくせばつなぐと)


 滅。色即是空 空即是色。色も形もないモノだしお前は存在しない。


「大丈夫。別に人混みがあるわけでもないし、逸れる事もないだろうし」


 そう。人混みといえる程の人の流れは見受けられない。王都なのに。

 なんでだろう? わからない。ここが列車の発着場の近くだからまだそう見えるだけか?

 いや、だとしても少なくないか? 人払いとか行われていたりするかもしれない。なぜ?


 自分が原因だと思うのは自信過剰だろうか? 危険な兵器の輸送だと思えばそうかもしれない。

 だがそこまで俺は危険視されていたりするのだろうか? わからない。

 分からないがその可能性は頭の片隅に置いておくべきかもしれない。


 元々こんなに閑散とした場所の可能性だってある。

 周囲に車掌さんか駅員さんみたいな人と軍人さんらしき存在がちらほら。

 やっぱり人払いしているのかもしれない。一般人の姿が見えない。


「そう? わかったよ」


 リク君はすんなりと引いた。周囲の状況を見ての対応かもしれない。

 ここで何かが起こるとは思えないから手を離して歩けるとか。

 散々誘拐されている身だ。俺自身に何の信頼もないだろう。


(そんなに誘拐……されてるねぇ)


 地下空洞に行き着いた理由も誘拐だしな。

 そんなヤツのどこに信頼できる要素があるというのだ。

 せいぜい二足歩行が出来るよ程度の信頼か? 雑魚め。


 誘拐してきた相手が豆腐の様に崩れて血だまりに落ちたくないとか言い訳か?

 そんな簡単に人間の手脚が千切れるか、試してみないと分からないだろう?

 いや、試したくはないな。少なくとも軽く殴ったカニの化け物は甲羅を陥没させて沈黙したし、後ずさりしたら背中で飛行船の壁は裂いたのは間違いない。


(確かに破壊神。力の制御が怖いね)


 今地面に足の形をした穴を開けていないのが不思議なレベルだ。

 踏み込んだりとかしていないからだとは思うが。

 余計な力をいれない様にゆっくりと動いているのが成功のカギかもしれない。


(下手したら二足歩行すら危ういね)


 そんな兵器だから信頼できない相手に任せるのは難しい。

 壊すのも難しいし、一度暴れさせたら他者から止めるのも困難。

 エネルギー切れを狙った焦土作戦が最終手段か? どこまで焦土にしたら止まるだろうか?


「軍人さんばかりだが、ここは基地の敷地とか?」


 軽く聞いてみた。見上げると柔らかい表情をリク君はしていた。

 何を思っているかが分からない。聞いてよかったのだろうか?

 なんて答えようか悩んでいたりする?


 自己判断で自己解決がデフォルト過ぎていたかもしれない。

 そもそも許可を取るための言葉はあっても、疑問をぶつける言葉を使ったのは初めてレベル?

 なんかこう聞いたりするのは無駄だとどこかで思っているのだろう。


(不安がるね)


 不安だよ。そりゃね。普段しない事だし。

 自分の人間性もよろしくないのを知っている。

 まともに答えてもらえるとは思えない。


「別にそんな事はないよ。今日はたまたまそんな感じなだけね」


 今日はたまたまか。そのたまたまが不穏だよな。

 原因はどこにあるのか。俺かリク君か。

 もしくは別に何かあるのか?


 いつ爆発するか分からない不発弾を運んでる気分か?

 その力の痕跡として、カニを倒して残してしまったし。

 あれが俺の仕業だと誰が見ているだろうか?

 あの時の現場の女の子? 周辺にいただろうリク君と歳の近い一等級の3人?

 顔を見られただろう相手はその辺りだろうか?


 なんか思い出していたらその辺りの子達が成長して現れる気がしてきた。

 特に王都まで来たとなると、一等級の3人組とかは出会いやすそうだ。

 厳戒態勢の心当たりがあり過ぎるの、ほんと面倒だよ。


「近くに軍関係のお偉いさんがいたりする? 複数人とか」


 軍関係のお偉いさんといったらリク君もたぶん含まれるのだろうな。

 たぶん階級か何かが高いと思うし。

 貴族みたいに爵位とかあったりするのだろうか?


 血筋的にはリク君って平民なのかな?

 両親はなんか功績を残してそうだけど、爵位があるかと言われたら微妙そう。

 軍の方の階級はそこそこ高いかもしれない。


(貴族のご落胤程度には血縁あるかもよ?)


 宗教への不信感とか、あまり王都には行きたくなさそうな雰囲気とかなかったっけ?

 まぁ、妙に担ぎあげられる場所で、調子にのれる様な性格でもなかったとは思う。

 自分の実力以上の事を求められたり、見世物気分で偉い人から芸をしろとか言われたら、俺だったら数回も持たず逃げただろうな。


「もしかしたらいるかも? どうだろうね?」


 すごくまともに答える気がない返事な気がする。

 この曖昧極まりない、綿雲か何かにボールを投げた様な反応が!

 まぁ、本当にリク君が分からない可能性もあるか。


 VIP対応されてます、自分のせいで。

 リク君がそういうの誇れる様な性格だとは思えない。

 むしろ好きに動きたいから、本当は1人でが最良とか。


(君の転生してきた体だし、魔力量も豊富だし、幼少期から大人に囲まれて生活してきた……って思うと慣れてそうだけどね)


 俺が転生してきたせいで、リク君の人生はほんとねじ曲がったよな。

 そうでなければたぶんまだ今頃辺境でのほほんと過ごしてたのでは?

 父親に戦い方を教わりながら冒険者してたりしていそう。世界観的に。


「そっか」


 何か1つに真っ直ぐにぶつかるタイプな気がする。

 自分が! 自分が! と前に出るよりも、手元にあるモノをしっかりと解くのが好きな感じかな?

 そうでなければ俺が体内にいた時もっと自己主張してきただろう。


 リク君に何かいい事あったらいいのだけど。

 普通の人生だったら到達できないところに辿り着けたというのがいい事かもしれない。

 でもそれを俺が主張するのは鬼が笑う。犯罪者の暴論だし。刑罰を与えたくて鬼が笑うだろうな。


(未来の事をあれこれ言うのを普通は「鬼が笑う」というよね)

 

 確定もしていない事をさもそうなるかの様に話している輩が昔は多かったんだろ。取らぬ狸の皮算用とかね。

 傍目から見て失敗しそうな事ばかり言っている輩とかも多かったんじゃないか?

 この博打に勝てば何とかなる! みたいなさ。


 そういえばリク君は俺の何まで見えていたのだろう?

 記憶とかも見えていたとかかな? それはないか?

 でもこの赤いレンガタイルとか近代的な街の風景が過ぎる。


「ご歓談中申し訳ありません。あちらの建物で少佐がお待ちしております」


 少佐……って誰だろ? 知っている人かな?

 偉い人が近くにいるから厳戒態勢みたいな感じだったんだな。

 軍人さんが指す建物は割かし近くみたいだ。


 リク君は柔らかい微笑みのままだった。

 誰が近くにいるか既に知っていたのだろうか?

 そんな感じの当然さが見える気がする。


 リク君が知っている相手がすぐそこにか。

 好悪の感情は読めない。それをもらす様な事もないのは軍人としての心構えだったりするのだろうか?

 それともそういう事を考える様な相手でもない感じか?


「ありがとう。すぐ向かうと伝えてくれ」


 リク君の体の中にいた時からだけれども感覚が鈍い。

 リク君にはたぶん周囲の波動? か何かを感じて(この魔力は)と相手の判別すらできるのだろう。

 そういうところからして、俺は元々体の操縦者ではなかったのかもしれない。


 体の中の魔力が強くて分からなかったは言い訳かな?

 何せリク君には分かるのだから。

 本当に俺はただの寄生虫だったんだろう。







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― 新着の感想 ―
[一言] 誰が出るかな誰が出るかな (覚えてない)
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