表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
348/383

346、トイレなう

 さてトイレである。まぁ、体の水分などは正直問題ない。

 だが出したいモノがある。口うるさいモノだ。

 魔法を使って変質させる。それが出来ればいい。


(本当にごめんなさい。心の底から謝らさせていただきます。どうかお許しを!)


 魔法。これが難しい。祈れば叶うというのが難しい。

 今回しようというのはある意味で魔力の死ですらある。

 これを魔力に承服させる必要があるのだ。


 同族殺しと言えるだろう。できるのだろうか?

 長命種あるある、人生? に飽きた魔力とかいるのだろうか?

 いた場合、今回のコレは自死するための実験になりうるのではないだろうか?


(同族殺しを自殺するための実験という事で丸め込もうとしている?! 本気でやる気なの!? お願い! 殺さないで!!!)


 数千年。もしくはそれ以上。自分が擦り減る感覚。それでいて主体的に何かが出来るわけではない。

 最初のうちは物珍しさに周囲を散策する事が出来るだろう。人に頼まれ叶えるのは気持ちいいと思えていただろう。

 でもそれも最初のうちだけじゃないだろうか? もう自意識を持つ事すら億劫になるくらい疲れていないだろうか?


 死にたくはないか?


(バカァァァ!!!)


 まずは分離が問題か? 魂の領域を指定するのが難しいだろうか?

 どこからどこまでが俺自身なのかをどうやって証明する?

 視覚的に分かるモノではないし、それを指し示す手段があるだろうか?


(君と私は一心同体! ズッ友だよ!)


 少し自分の部分を犠牲にしてもいいか。腫瘍はそれだけを切り取るのは難しい。

 少しでも残すと自己複製して再発するというのが特徴だろう。

 腐ったみかんは周辺の健康なみかんにも細菌やウイルスをつけているのだ。


(私、もう君の中、全身侵蝕した。ワタシとキミはもうハナレラレナイ!)


 コイツ……。ならば大きな腫瘍を取り除き、自分の回復を待とう。

 目に見えて大きな腫瘍を排除すれば意識に現れる事は減るだろう。

 そうすれば目障りな思考が止まるはずだ。


(なぁーっ!!! 私を殺さないで!!!)


 ヤダ。


(私もヤダ!)


 むだに嫌なところを突こうとするところが嫌だ。

 見透かした事を言ってくるところとか嫌だ。

 思考に茶々を入れるところも嫌いだ。


(でも君はそれを望んでいたでしょ? 君は自分が嫌いだから否定されたいし。ネタに対しても反応してほしいんだよね。内心でだけ言葉を紡いでも誰にも反応をもらえないとか、そんな事は分かっていてもそれでもそれを止められないくらいに、本当は人に関わりたいんでしょ? 私と話をしているのは本当は楽しいんでしょ?)


 うるさい。わかった口を聞くな。

 例えそうだったとしてもそれを詳らかにする様な類と話ができるか。

 口は災いの元。隠し事は明らかにすればいいというモノじゃない。


(そうして隠しまくって何も話せる事がないのはどこの誰? これを話したら危ないと考えるのはいいけど、全部隠して一人で抱え込んで何も出来なくなっているのは誰? ねぇ、誰?)


 うるさい。


(私だったら全部聞けるでしょ! 私以外に誰が君の話を聞くというの!)


 うるさい。それで頼った末は依存だろうが。

 依存で縛る手法を知っている。孤独なヤツ程ひっかかる手だ。

 避けるには適度に知り合いを増やし、薄かろうが数を増やすしかないんだ。


(でも出来ていないでしょ?)


 バーカ! バーカ! バーカ!


(君にはそんな器用な事が出来ないの。だから私と過ごそう?)


 だからその手には乗らない!


(私で経験値を積めばいい。いきなり高レベルなミッションをしない。まずは一人。ゆっくりと増やしていけばいいでしょ?)


 親しい人はいらない。生存戦略として見たらクラスの高嶺の花くらいがいい。

 関わった相手が勝手に配慮する様な、そんな都合のいい立ち位置がいい。

 深入りされて秘密がバレるリスクはいらない。


(嘘つき。嘘つき。嘘つき!)


 うるさい。


 魔法を使おう。体内で起こす反応だ。魔力を物質に変換せよ。

 塵に。粉末に。燃えカスに。気体に。液体に。排泄物に変えてしまえ。

 腸内で変化させて、全て排泄してしまえ。意思など残さず砕け散れ。


(ヤダ! 私はならないんだからね!)


 終わりを望むモノ。疲れたモノ。壊れたモノ。

 死を思え。死を願え。死を讃えろ。

 終わりなきモノに祝福を。


(ねぇ、今さ。すごい厨ニ病入らなかった?)


 入ってない。


(いや、超入っているよ? ねぇ、顔真っ赤じゃない? あらー。可愛いー!)


 入ってない!


(あ、魔力さんから伝言~! 「痴話喧嘩に巻き込むな」だってさ?)


 痴話喧嘩じゃないっ! というか魔力と話せるんかいっ!?


 いや、そう言っていると嘘をついている可能性が高い。

 それで俺が諦めれば儲け物だものな。諦めてたまるか。

 それとそういう間柄だとお前は思っているのか?


(私、君といい感じの仲だと思うよ☆)


 ☆をつけるな。☆をつけるな。キラリと言いたいのか? あぁん?

 そんなキラキラした仲ではないだろ。主に俺のDVで。

 俺はだいたい殺意しか向けていないんだが。


(大丈夫っ! 君はそういう照れ隠しをしているって私わかるから!)


 照れ隠しじゃないんだよなぁ……。


(いや、照れ隠しだよ! 私にはそう見えるから!)


 本当に違う。そんなわけがない。


(君は嘘つきだからね。自分に対してもたくさん嘘をついてきたでしょ? 信じたい事しか考えない。でも私には見えてるの。君だって本当は見えているの。だから今強く否定しようとしているのでしょ? 君はね、嘘をつきすぎたんだよ)


 うるさい。


(否定するための言葉を今必死に作ろうとしている。でも君はもう目の前の現実からは逃げられない。だからそんなにも言葉が出てこない。ね? 認めなよ? 私は君と一緒にいないといけない。君には私が必要なの。手を伸ばして? 私の手を取って? 一緒に歩こう?)


 怪しいというか、手ぐすね引いて待ち受けている様には疑いしかないだろうが。

 残念だったな。俺みたいな頑固者にはその手は通じない。

 お前の様な甘言を弄すモノは朽ち果てるのがお似合いだ。


(んー、でも「馬に蹴られたくない」「犬も食わない」「甘い空気にムカつく」などなど、ほとんどの魔力さん達が遠巻きにして、出来なさそうだよ?)


 コイツ……。


 魔力に人格があるというのが一番厄介なところだ。

 コイツも含め、ゴーレムの言う事も勘案すると、そういう前提は確かにあるのだろう。

 だとすれば頭ごなしに怒り任せて命令したところで叶うモノではない。むしろ避けられて叶わないだろう。


 あぁ、もう、イライラするな。


(落ち着いて? ね?)


 がるる……!


(ぎゃあああ!)


 ほんといくら八つ裂きにしても気が晴れない。

 相手の言が煽りとかなく、本気だったとしても、対応出来ない相手へのストレスは大きい。

 こんな事をしても無意味だと分かっていても、それでも関係ない程にイライラする。


 短気なのだろう。自分一人なら自分だけの行動で終わる分、そこに人を待つ時間が発生しない。

 自分だけで完結し過ぎている弊害だ。本当によろしくない。

 自分の都合だけで生きられる程、人の世は簡単に出来てはいない。


 上司は責任を取るのが仕事という話がある。

 公務員や長命な会社の場合は特に、自分の代わりを用意出来ないといけない。

 一人で完結出来ないのだ。ずっとそこで百年も千年も生きている事は出来ないのだから。


 自分がやればすぐ終わる仕事も部下に任せて仕事が出来る様にしなければならない。

 数を熟させ、面を繋いで、人脈の継承も行わないといけない。

 上司は待つのが仕事。やらかした時に責任を引っ被り、対応をカバーするのが仕事。思い通りにならない事を我慢するのが仕事。


 俺が上司になる事はたぶんない。

 ないがそういう世界がある。

 短気で生きられる程、人の世は楽ではない。


(落ち着いた……?)


 猫パンチ。









評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
gqch13hqlzlvkxt3dbrmimughnj_au0_64_2s_15


gto0a09ii2kxlx2mfgt92loqfeoa_t53_64_2s_d
― 新着の感想 ―
[一言] あと一歩で人格ゼリー排泄とかその辺のマニアックな表現になるところだったな!(セーフ)
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ