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344、お風呂上がり

「はい。綺麗になりました~」


 白に黒の蔓草の甚平みたいな浴衣。大きな黒いリボンで高めの位置でまとめられた髪。

 なんかいろいろと不思議な風体になっている気がする。

 そもそも体を洗う際にいろいろと見られていると思うのだが、どうなのだろう?


(ポークビッツを男性器と見なかったんじゃないの?)


 言い方よっ! お前はどこでそんな下ネタを覚えた?!


(君の記憶の小説だよ)


 俺か! 俺だったか!


(ポークビッツ。読んだ時は知らなかったんだねぇ。あの2センチもない小さなソーセージの事)


 生活圏になかったからなぁ。生協とかスーパーでも見かけなかったし。

 たまたま普段いかない駅の近くのスーパーに入って見かけた時はちょっと感動したわ。

 あれ、炒め物に雑ぜて使うんだったか? よく知らないのだが。


「ありがとうございます」


 でも肉はとりあえず練り物でもいいけど、まとめてガブっと食べたい。

 そうじゃないと肉を食べている気がしない。肉は量が大事だ。

 それに1食目安タンパク質20グラムを考えると、けっこう量がないときつい。鶏肉換算200グラムだし。


(なおこの間ずっと鏡の前に立たされて己の姿を直視させられ続けていたのである。内心は羞恥心や困惑で満たされ、現実逃避が捗っております)


 猫パンチ。ワンツー。アッパーで吹っ飛ばしてからのダンク。


(痛い! 痛い! 痛い! オーバーキルゥゥゥゥ!)


 見たくない現実というのは俺の場合、本当によく転がっている。

 俺は成人男性の体がよかったんだよ。仕事がしやすいからな。

 適当な場所で人足として紛れ込み、適当に仕事をして、自分の地盤を築くことができたらよかった。


(それ、君が出来ると思うの?)


 猫パンチ。爪は4つだし、五等分になれ。


(いや、それパンチじゃない! ぎゃあああ! ……五等分の私って何そのホラー……!)))))


 切ったら増えるってプラナリアか。うるさいわ。


(きれいに五等分になったもんだから誰を主軸にするか再生の仕方に悩んだじゃない!)


 争い合い自我が崩壊したら面白かったのに。


(君は本当にどう対処しても問題ない敵と判断したら酷いね!?)


 それはどう対処しても誰にも文句を言われないし、隠蔽も問題なく出来るのだからそうだろう。

 何より勝手にプライベートスペースに入って、個人的なモノを覗いてくるのだ。

 どうして手加減されると思うのだ? 息の根を止められるならさっさと息の根を止めたいに決まっているじゃないか。


(親愛の感情も見えるのに、なんでこの子はこんなに躊躇なく……!)


「お兄さんを待つのはあの席にしようね」


 まぁ、そういう部分がヒトデナシなのだろう。

 内側に自分しかいない。自分しか見えない。外を見ているフリしかできない。

 中に入ったお前だろうと、いなくなればそれでお終いになる。


(窮鳥懐に入れば猟師も殺さずって昔の人は言ったのに!)


 お前、鳥みたいに可愛い存在でもないじゃん。

 何なら困って懐に入ったというよりも、害を為すつもりで入ってきて出られなくなった悪人だろ。

 できるなら懐柔して自分の都合のいい様に動かすという方向に、行動の方向性を変えたんじゃないか?

 それどころかこちらを乗っ取る事も視野に入れているだろ。そう考えたらやっぱり害悪だな。


(私そんな事考えてないよ!)


 口ではいくらでもいい事は言えるな。

 相手の信用を得るために始めの内は正しい事を言うというのは良くある手だ。

 自分が正しいと信じ込ませ、精神的に相手を支配するというのはDVする家族がする手法だったか?


「はい」


 彼氏彼女の時にいい顔をしてみせて、結婚し相手の交友関係が狭まり逃げにくくなったところを狙い、隠していた支配欲の強い本性をさらけ出す。

 自分のモノになったという感覚から起こるモノだろうか? 俺にはよくわからないけれどな。

 とにかく依存させて、自分ありきの判断を作らせる。そういう事は考えやすい。


(君は自分が被害を受けるかもと思ったからそう考えるだけでしょ? 私はそんな事をする気なんて毛頭ないよ!)


 ふん。どうだかな。信じられるモノなんてどこにもありやしないんだ。

 目の前で起きている現象ですら本当に考えている通りなのかもわからない。

 見ているモノも信じられない。聞いているモノも信じられない。ただあくまでも推測しかない。それが俺の世界だ。


(そうした結果、確かなモノがなくなって、本当は全てがどうでもいいってなった? 嘘でもいいから今見えてるモノを信じたらいいじゃん! そしたら何か変わるかもよ!?)


 要らない。目の前のレプリカを本物の様に扱って壊すのは嫌だしさ。

 レプリカはレプリカのままでいい。見ているだけなら扱いを変える必要もない。

 そもそもレプリカも本物も、扱い方を知らないという意味では差がないしな。


「ねぇ僕? 僕には何が見えてるの?」


 ……?!


(ぷ)


 あ、あのお姉さん。内心読むスキルとかないよな?

 笑顔で俺を見てるが、何も分からないんだが?!

 どうした急に!? 時間が空いて話した方がいいかな? って思った感じか?!


(いいじゃん! いいじゃん! 読まれてるかもよ? 読まれてたらどうするのー?)


 知るかー!


 あ、あー。読まれてたら右手を上げてくれ。


「特に何も見てないですよ?」


 何かニコッてした?! え、分からない!? 分からないんだが!?

 え、右手!? 右手が動いて頭の上に上がった?!

 読まれている? 読まれているのか?


(読まれているんじゃないかな〜?)


 ふぁーっっっ!?


 いや、えっ? 頭ぽんぽん?


(くっ……! あっはっはっはっ!? ねぇ、今どんな気持ち?! ねぇ、どんな気持ち!?)


 やろう、ぶっころしてやる!?


 いや、ニコニコされても分からないんだが?!

 見られているのか? 読まれているのか?

 いつから読まれていた? 本当に読まれているのか?


「ふぅん? そうなんだ?」


 分からない! その反応はどっちとも取れるんだが!?

 何そのニコニコは!? どっち?! 読めない!?

 面白がる様な女狐の目にすら見えるんだが!?


(たくさんたくさんお話してたもんねぇー? 私とー!)


 転生者である事が容易に察しつく事たくさんだわ。

 秘密を握られているという認識で扱わないといけないのか?

 いや、それで脅してくる様なら今ここでその頭蓋を壊せばいいのか?


(ふふふ。もし読めるなら今は読めないフリして、後で危険排除のため、担当に連絡をするかもねぇ?)


 ああああああああぁぁぁ!!!


(まぁ、本当は読めていない可能性の方が高いだろうけどねぇ? やるの? やらないの?)


 殺る……わけにはいかないだろうな。

 そもそも本当に読まれているのだったら笑って前に立てないだろう。

 こんな危険思想なヤツを前にしてな。


(君はところ構わず暴れるタイプではないし、そこまで危ないって思わなかったんじゃないかな?)


「お姉さんには僕がどう見えているの?」


(ねぇ僕?)


 猫パンチ、一本背負い。


(いや、だからそれは猫パンチでもないし、一本背負いでもないし、とりあえず痛いよ!)


 顎先の骨を爪で引っ掛けて投げ飛ばすの他になんて呼べばいいの?


(グロいし説明はいらない! とりあえず痛い!)


 お前にダメージを与えるのが難しいのが悪い。

 普通だったらノーマル猫パンチの段階で死んでるのに。

 もう少し簡単に終わってくれないかな?


(殺意が高くてお姉ちゃんは怖くて仕方ないよ!)


 元から殺意しか出してないよ?

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― 新着の感想 ―
[一言] どう見られてるのかな^^
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