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328、起きた

(勝手な想像は止めて欲しいかな)


 起きての一言目がそれか。夢はあくまでも夢だろう。

 そもそも夢は脳の情報整理手段に過ぎない。

 雑多な情報を思い返しながら、そこにどの様な感情を覚えていたかを確認する作業だ。


 過去や先祖の記憶と照らし合わせ、類似を探す作業でもある。

 同じ様な状況に陥った事があれば、どんな可能性があるかを示してくれる事もある。

 夢に従って正解を引く事もあれば、とんでもないミスを冒す事もある。

 当たるも八卦当たらぬも八卦。夢占いは博打と同じだ。先祖の運勢が優秀だったら比較的に当たりやすいかもな。


(なんかこう……君って夢がないね)


 当たる事もあると言っているんだから、夢はある方だろ。

 小さい頃は夢と現実の区別がつかなかった事すらある。

 多分どこかで耳にしていた情報を補完して、まるでそこにいたかの様な夢を作られた事があったからな。

 現場にいた人に俺はその時いなかったって話を聞いて(あれ?)ってなった事がある。

 ほんと夢と現実の区別はしっかりつけた方がいい。


(そこまで混同するレベルの夢を見る方が怖いよ!)


 正直な話。この夢のせいで特に記憶が信じられなくなったわ。

 自分があったと思っていた記憶が、本当は夢だったみたいな地獄。

 一人勝手に訳知り顔で聞いてたら、食い違いが起きて嘘つき扱いが起こるのだ。

 ちびっ子傷心だよ。思い出の大半が信じられなくなるくらいのね。


(なんかごめんね)


 正直な話、今この瞬間にも目が覚めて、君は長く昏睡していたんだ、みたいな事言われたらと怖いくらいだ。

 もしこの夢を創作している作者がいるとしたら、夢オチ程かんたんに全てを終わらせつつ、それまでを台無しにするモノはないと思う。

 俺ならそれはしない。許せない。ただの石くれレベルでも積み重ねたそれを虚構に帰されたら、今までがどんな素晴らしい話であっても唾棄すべき忌まわしい物になる。


(賽の河原の石積みの酷い版になるね……)


 そう。手元にある石の一つ一つがどんな形をしていて、どういう風におくべきなのか、考えていたのに全てが崩されるのだ。

 現実という名の金棒で根っこからぶち壊され、石の破片を辺りへと撒き散らす。

 本当に忌まわしき行為だよ。許してはおけない。


(すごい夢オチにトラウマありそうだけど、君は夢オチで酷い目にあった事ないよね?)


 実際の夢で酷い目にあっただけだからな。

 ちゃんと夢と現実のフォルダ分けをするのは大事だ。

 まぁ、だから君が本当はどんな過去があるかなどは夢と関係ないだろう。


(そうだね。そういう事にしておくね)


 まさか君が元男性だなんて……。


(それは君の夢の話だろ! 私にそんなややこしい過去なんてないし!)


 現在進行形でややこしい事になってる自覚はある?

 それと幽霊状態で人に使われるの、大分ややこしいと思うよ?

 どうしたらそうなるのか悩むくらいにややこしいよ?


(君はすごい嬉しそうに生き生きと問い詰めてくるな! 君はSだろ! サディスティックにバイオレンス!)


 本物のSはサービスのSだろ。

 被虐嗜好のして欲しい事をする加虐嗜好のサービス。

 ただ暴力や暴言を振るうのは似非モノじゃないか。


(あー! あー! この訳知り顔でぷッで笑う仕草! 君は何なんだよ!)


 寝起きの世間知らずだな。

 耳年増でろくな経験もない。

 ただのロクデナシのヒトデナシかな?


(くそぅ……流れる様に自虐してる……! あとイメージ画像を送り付けてこないでよ! なんでバーカウンターで酒片手にウインクしてくる無精髭のおっさんなのよ!)


 らしいだろ?


(このモヤシ! 酒もタバコも女の子も興味ない癖に!)


 あくまでイメージ画像だからな。


(イメージが濃い! それと今現実の君は幼い子だよ! 気づいてる?!)


 まぁ、それはおいておいて。


(こいつ……!)


 ドアの覗き窓にかかるカーテンを捲ると部屋の中に陽が差し込む。

 どうやら夜は明けたらしい。珍しい事に事故もなく。

 いや、普通は事故がない事が普通なのだろう。


(モノローグが唐突……!)


 癖になっているんだ。


 それと視覚情報を文字化する事で常識を疑える。

 当然の存在だとスルーしてしまいがちな情報の違和感。それに気づける様になったら大きいな。

 まぁ、文字化する事で細かい情報を見落とす事もあるから、一概にメリットだけあるわけじゃないが。


(言い訳に手馴れてるわね……。自分に向けての言い訳を流用しているのが見えるわ……)


 まぁ、それは間違いない。そこは誤魔化す必要がない。


 向かいの寝床にはこんもりとした膨らみが見える。

 たぶんまだ寝てるのだろう。起こすのも忍びない。

 静かに探索をしようじゃないか。


(おい。君は最初から探索したくて仕方がなかっただろ。事件を起こすんじゃない。君が出歩いて事故が起きない保証はない。幸運にも夜に何も起きなかったのに、なんで事件を起こそうとするの!)


 経験的に同じ場所に留まっても事故や事件は起きるよ。


(嫌な経験則!)


 もうそれが定めだよね。運命だよ。

 どうせ起こる事件や事故なら楽しまなきゃ損じゃないか。

 そられっつぱりー!


(君は起き抜けハイテンションになるタイプなんだね! 疲れが取れたからかな!? 朝の陽射しでテンションハイか!? 普通は夜でしょ!?)


 いや、ぶっちゃけ普段から俺はパーリーピーポーな頭してるぜ。


(嘘つき! パリピな事をしないドの付く陰キャが何を!)


 俺は陰キャじゃないかもしれない。

 ただ話す内容がないだけのパリピさ。

 ただコミュ力が足りないパリピなだけさ。


(最悪のパリピじゃん! コミュ力のないパリピってただのトラブルメーカーじゃん! ゴミじゃん!)


 そうだよ。ゴミだよ。知ってるわ。何を当たり前の事を。


(ヤバい。防御力が高すぎて口撃が効かない。無敵かな)


 そう俺は無敵さ!


(ダメだ、こりゃ)


 さてさて。まぁ、実際問題、変な場所に移動するのは防犯的に良くないだろう。

 俺のじゃなくて、この特急の会社の防犯的に。

 どこまで移動していいか、見たら分かるかな? 関係者以外進入禁止とか書いてあったりとかして。


(そこは守るんだ……)


 この体なら子供のした事で収まるかもしれない。

 だがそれで迷惑がかかるのはリク君だし、会社の安全保障的な問題も関わる事だ。

 万一この特急が止まる事態に陥った場合、どれ程の損害が出るかを俺は計算できない。


(君に常識があるのかないのか、私には判断しきれないよ……)


 まぁ、でもきっとトラブルは起きて、俺はどこかに持ってかれるんだろうなとは思う。

 何がなくても特急が止まる事態に陥る気がする。

 やっぱり被害が最小限になる様に地方に封印されるのが最善の選択なのでは?


(封印されたいまであるんだね……)


 積極的に封印されたいわけではないからな。

 ぶっちゃけ好き勝手生きたい。

 でもそれがまかり通るとは思っていないし、被害を出すのは以ての外だとすら思っている。


(君は本当に面倒だね。悪気がないどころか避けようとしているのに、不可避の事故に巻き込まれるとか責めようがないじゃん。君、何か悪い事した? 罰当たりな感じの事)


 記憶にございません。本当に。


(君の前前前世からかな? いや、前が一つ多いのか。多くないのかもしれないけど、真相は分からないね)


 俺だって好き好んでトラブルに巻き込まれているわけじゃない。

 リク君が用事で離れたので画廊に立ってたら数分もしない内に誘拐されたりとか、どう回避すればいいか分からないわ。

 我慢して流血沙汰を避けた事を褒めて欲しいまである。


(はいはいつよいつよい)


 イメージ画像は粉ミルクの缶か。

 赤子か? 俺が赤子だと言いたいのか?

 そうだよ。人間関係の構築レベル赤子並だよ。バカ!


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― 新着の感想 ―
[一言] > はいはいつよいつよい おかしいな具体的なイメージがパッと思いつくぞ
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