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325、車中にて

 指定席に行くとイスに降ろされた。

 リク君は自分のベッドを展開していく。

 今の俺の身長だと自分でそれをやるのは厳しそうだ。


(やーい、ちーび)


 頭の中であいつを小突きつつ、ぼーっとする。


(寸刻みじゃん! 小突くなんて過少表現! ぐぎゃば)


「シロ。こっちで先に寝ていいよ」


 どうやら俺の分だったらしい。

 自分でやるにはちょっとムリしないといけないなと思っていたので助かるといえばそう。

 だがこうサラッと用意されるのには慣れない。


(自分がやらないと?)


 そう。なんか気持ち悪い。


(君はムリしてでも1人でやりたいタイプだもんねぇ。都合いい時だけ人に頼るのが気持ち悪いっていう言い訳をするの?)


 いや、頼る人がいないだけだ。もしくは頼るまでもない事柄しかない。


(あぁ、人に頼る必要がある事柄はそもそも目を向けないよね。だから君の中では人に頼るべき事柄は存在しないものね)


 あぁ、そうだろうさ。そうして生きてしまったんだ。

 自分の視野が狭いのだろう。選べる道も見えていない。

 誰にどう頼れば道が拓けるかも分かっていない。


「ありがと」


 頼る選択肢自体は割りかし提示されているのだろう。リク君とか。

 勝手に警戒して、ガルガルと唸って、自分で道を捨てる。ほんとバカ。

 人に勝手な想像をして聞きもしない。相手の道も見ない。


(そうだねぇ。まずリク君に何をしているのかとか聞いたら?)


 本当にそうだな。なんてどうやって聞けばいいのだろう?

 勝手な憶測ばかり思い浮かんでしまって適当な言葉が出てこない。

 見ているモノで勝手に満足してしまっている。


(そこは憶測抜きで言ったらいいじゃん)


 でも相手に興味を持っている素振りを見せなければだろ?

 こういう感じなのかな? と少し踏み込んだ事を言わなければ聞いていない様に感じるのが人間なんだと思っているんだが。

 それに中途半端に合っていると(ここからここまでは省略しても大丈夫だな)とされるし、外れ過ぎると(こいつは話をまともに聞いていないんだな)とか(この程度の理解ならこのくらいの話で落としておくのが無難だな)とか判断されるんだろ。


(この妄想厨が! スパッと聞けい! 君は面倒だな!)


 そう言われてもなぁ。いくら想像だとはいえ、可能性を殺しきれない。

 特に曖昧に濁されたり、適当なところでごまかされて、満足させられる未来が。

 今この場で突っ込んだ事を聞いてしまうと、さらに面倒な事になるのも。


(あぁ、うん。そうね。昔の君はそういうミスをした事あるよね。自分がする側に回る事もあったね。でもリク君がそういう事を君相手にすると思う? リク君ならしないでしょ? 君が見てきたリク君なら)


 いや、ちょっとわからない。ごまかす方向性の事は普通にしてきそう。リク君自身の事は特に。

 ややこしい事情は隠すのはしてしまうと思う。端的に言うのも難しい事も適当に端折りそう。

 そんな事はする気がする。なんか微笑みに隠し事が多そう。はぐらかすの好きそう。


(もうヤダー! あのね。そんなに難しく考えなくていいの。踏み込まれたくない部分に触れなければいいだけ。技術的な部分とか説明がややこしい部分も避けたらいいじゃない。そう簡単な話をすればいいの)


 そんな事を言われても。簡単な話とかが出来ないから、ここまで拗らせているんだぞ。

 雑談が出来たら俺は困っていないんだ。少なくとも少しは友達がいたはずだ。

 わかっている風にふるまうのが無駄に得意なバカだぞ。


(誇るな! 自虐するな! もっと前を向け!)


 そうは言われても。


(やった事ないとか、出来ないとか言うんじゃない。試してみて出来なかった点をこまめに直せばいいの。ゲームだってそうでしょ? クリア出来ない面はトライアルアンドエラー。やりもせずにデキナイヨーとか甘え。やれば経験値が増える。ここはイける、ここはキツい。そういう事が分かる。君はやらずに想像だけでムリだと言っている。自分のスペックも分からずにとりあえずの準備と言いながら、他の人がひのきのぼうで行くところをてつのけんじゃないと怖いと、町から出ないで最初の敵と戦わずに言っているみたいなモノ! まだてつのけんは買えないからとグダグダ町の中で過ごしてる様なモノ! いつまで始めの町から出ないつもりなの? 町から出ないといつか世界は滅ぶの。君の人生という世界がね!)


 いきなり長文だな。おい。


(溜まるんだよ! 分かれ!)


 まぁ、少しは頑張ってみるよ。


「ねぇ、リク君って今どういう仕事とかしてるの?」


(そうそう。そういう無難なところでいいの! まずは聞きなさい!)


 世間一般のお母さんか。いや、お母さんでもないな。なんだ? 熱血教師?


(知るか! 進め!)


 あいあい、マム。


「そうだねぇ。色々としているよ」


 ベッドの端を机で固定しながらリク君は微笑む。

 ……うむ。イスの背もたれになっていた部分がクッションになり、下を傷つけない仕組みなのかな? コレ?

 で、中央の大きい机とイスで端を支えるのだけど、ベッドを2つ出すと、中央に仕切りのないキングサイズの巨大なベッドになるのだ。


 ただそれだとちょっとなのか、天井部分にセットされてたらしい板が降下し、机がある部分とドッキング。

 見事。ベッドの端が跳ねない様に固定され、ちょうどよくモノを置くスペースが出来る。

 上から降りてくる際に一緒に棚が降りてきて、そこにグラスや食器、食べ物なども入っていた。


 ベルト式かな? 天井から滑り落ちる様にカーブしながら降りてきて吊り下がった。

 噴水のマークみたいな曲線で、普段は天井部分に平たく仕込まれているんだろうな。

 個別に包装されていて、端に9桁の数字が書いてある。日時だろうか? 品番だろうか?


(そう。気になったのね。でも今そこじゃない。大事なのそこじゃない)


 分かってる。


(分かってるなら行けよ! 逃げるんじゃない!)


 うるさい。


「ちなみに聞いても大丈夫なところってある?」


(予防線を張っておくスタイルいいわね。相手が触られたくない分野は触らない方が無難だもの。さすが自分がされてやな事は分かってるわね)


 実況解説かな? いや、監督かもしれない。


(どちらでもいいわ! 関係ない。行け)


 いえっさー。


(私は女じゃ! マム!)


 ふーん。


「難しいね……。とりあえず王都では技術士官みたいな事してるよ。力は強いからね」


 リク君は笑う。力は魔力の事だろう。筋力的に言えばそこまでのモノには見えない。

 魔力で補助すれば重機みたいな事を出来るのだろうけど、それはまた別の話。

 魔力的な意味で頼られているという事だろうか?


(考えるな。感じろ……)


 ねぇ、君。長文考えて疲れたの?


(あは! 私わかんなーい! ぐぎゃあ!!!)


 そう。


(ナチュラルに潰さないでよ! もう!)


「他の人が出来ない出力で出来るから?」


 人間サイズでシャベルカー何台分の仕事が一瞬でできるからな。

 ネネの時の爆発を考えると、重機としての力はすごいだろう。

 クレーターが出来るくらいだし。


(なんですか……しれっとDVですか。こういうのが危ないヤツなんですね。分かります)


 あぁ、うん。そうね。


(ヒドい! バカ!)


 はいはい。バカですよー。


「そうそう。色々な所に顔を出すことになるから、あの飛行船とかも移動の時間短縮のために作ったくらいだしね」


 すごい規模が大きい。






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― 新着の感想 ―
[一言] 規模がデカいわ!
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