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322、なおリク君は歩き続けている

 一緒に過ごす。実のところ俺はこの概念がよく分かっていない。

 こういう部分が人間ではないんだなとは思う。

 普通の人間なら幼少期からの流れで諸々を理解しているはずだから。


(変な生き方しているんだ?)


 余計な事を思い出し過ぎなのである。

 推定敵対個体に思考を見られているのだ。

 推測材料を与えるのは良くない。


(ねぇ、教えてよー)


 うるさい。


 結局は全て俺の感覚が狂っているのが悪い。

 人間としてやっていけない精神だった。それだけの話なのだ。

 何か大きなトラウマ的な事があるわけでもないしな。


「普通に生きられるのが一番いい」


 それが出来ないのが俺なのだけど。

 必要以上に想像力を働かせて、無駄な行動をしてしまう。

 ほんとバカなんだよな。


(そうだね、バーカ)


 殺すぞ。


(ごめんなさい! ごめんなさい! ごめんなさい!)


 なんかこうイジメをしているとDV男のそれを考えてしまう。

 あまりこれを続けるのは良くない。俺の精神的に良くない。

 理由をつけて暴力をふるうのを癖にしてはいけない。


(そうだよ!)


 ……。


(ぎゃーっす!!! 無言でイメージを送りつけないでー!!!)


 敵だしな。容赦する必要はないな。やはりさっさと分解しないといけないだろう。

 内側の魔力だし、変な器をぶち壊すイメージでいけばたぶん壊せるな。

 さっさとやろう。それがいい。俺の精神衛生的にもいい事だ。


(いや、良くない良くない)


 攻撃的な気質が強くなるのは良くない事だろう。

 それに俺の頭は割かし戦うか戦わないかの選択から始まる戦闘民族なのだ。

 戦う相手がいる事が良くない。暴力を安易に頼るからな。


(暴力は良くないね)


 そうだ。暴力は良くない。

 戦う相手がいなければ暴力は発生しない。

 つまりお前はいない方がいい。


(ノー!!!)


「なんだかんだ楽しそうだね」


 ニッコリ。


 すごい怖いニッコリだわ。


 下から見上げているからだろうか?

 光の加減で前髪が目元に影をつくる様に見えているからかもしれない。

 ただなんかこう嫉妬の感情が見えている様な。


(いや、絶対そうでしょ!?)


 あ、やっぱりそう思う?


(ねぇ、どんな関係なのよ。あんたら?)


 わからん。そういう感情に踏み込まないのが俺だ。


(いや、少しは踏み込みなさいよ!)


 え、やだ。


(そういうところが友達できない理由なんでしょ!)


 なんでやねん。今それ関係なか。

 そういうのは不用意に踏み込んでも変な火傷して気まずくなるだけじゃん。

 誰がどんな思想だろうが、行動にしなければ問題はないんだわ。


(方言がテキトー過ぎ! そんな事言って自分が変な事になるのが怖いだけでしょ!)


 あぁ、それは怖いな。そういうのを踏む意味がないし。

 それをして何が得られる? 変な事に巻き込まれるだけだろ。

 好奇心は猫を殺す。色恋沙汰とか変な執念が発生する案件じゃん。


(そうやっていつも避けて来たんでしょ? 自称ヒトデナシさんや)


 ……どこまで思考を読めるのか。これはわかったものじゃない。

 やはり危険だな。この闖入者は。殺すべきだろう。

 とりあえず生かしてこの体から出す事はあり得ない。


(ノー!!!)


「ほんとズルいなぁ……」


 いや、怖いって。そういう闇のこもった目で見ないでくれよ。


(ねぇ、これはリク君がほの字なわけ?)


 色恋かどうかは分からない。たぶんそちらの方面はないと思うのだけど、確証がない。

 依存的な感情だとは思うのだけど、それが年月を経てどんな変化を遂げたのかも分からない。

 正直リク君の感情に関してはもとから分かっている部分が少ない。というか俺が知りたい。


(聞けよ!!!)


 やだよ!!! 怖い!!!


(うるせぇ! なら私が聞くわ!)


 やめろ! まじで! それだけはダメだわ!


(あぁ! 口が開かない! 本気の抵抗ね!!!)


 マジ殺すわ。


(ごめんなさい)


「大した事はしてないよ」


(自称ヒトデナシはまじめな顔をしてそう言うのであった)


 まずは半分に分けてどちらに自我が残るかを実験するところから始めようか。


(ひぇぇ)


 体内の異物を認識し1か所を抑えながら回転させるのがいいだろうか?


(あ、ちょ、真面目にやらないで! ごめんなさい! ごめんなさい! 痛い!)


 器に力が加わると握られる様な感覚が生じるのだろうか?

 神経もないのに痛いとか何故わかるのだろう?

 刺激を判断する機能が魂自体についている可能性がある?


(いや、その考察はいいから)


 いや、重要だ。それは魂のアプローチとも言える。

 機能などが想定ができるなら、それに向けての行動がとれる。

 望んだ反応がでればその範囲を調べる事で何で感知しているかを調べられるかもしれない。

 想定と違うなら違うで、知覚の仕方が想定が違う事を知る事が出来る。


(ユー、話を聞かない系ね?)


 ただ問題は想像で痛いとか言ってしまう場合がある事だろう。

 この場合、本当は痛くもないのに、痛いとか言ってしまう。

 これは全くもって参考にならない。ただのノイズだ。これが困る。

 注射とか実際は痛くもないのに、事前情報で無用に痛みを増幅させるくらいだ。


(すみませーん! 店員さーん! お会計ー!)


 ここは飲み屋じゃない!


「ふぅん」


(ごめんなさい。これはとても怖いですね)


 わかる? ねぇ、なんでこうなっているの? 理解ができないんだよね。


(私にもわかるか!)


 ちょっと離れていた間にどんな心境変化があったのか。

 憶測はたくさん建てられるが、それが正しいとは言えない。

 創作によくあるタイプの拗らせヤンデレだろうか?


(可能性は高そうだよね?)


 そんな分かりやすいタイプなら誘導が多少効きそう。

 でもそんな事ができる程の単純さがこの世界であるわけがない。

 そんな単純なら俺が苦労するわけがない。


(自分で複雑にしているだけなんじゃ?)


 そんな気はしている。


「別に大した事は本当にしてないよ?」


(本当に大した事をしていなくても好きな人が隠している様な態度をとったら気になるよね?)


 好き嫌いはおいといて、そういう態度をとられると気になるだろうな。

 そういう事にあっけらかんと対応できるタイプにリク君は見えないのが問題。

 俺自身は特定の誰かに特別な感情を抱く事ができないから起こりえないけど。


(そうやって自称ヒトデナシは予防線を張るのであった)


 うるさい!


(だって君、人に関わりたいと言いながら避けるじゃん)


 避けてはない。避けてはいないはず。


(少なくとも深入りしないよね。逃げるよね。面倒とか怖いとか言いながら)


 それはそう。人の内情に触れるのはあまりいい事だとは思えない。

 その内容にずっと関知し続けられるわけじゃないのだから。

 それに気持ち悪いだろ。俺みたいなのが触れようとするのが。


(少なくともリク君はそういう内容に触れられたい気がするね)


 だけど怖いだろ?


(君の中にない感情だから怖いんじゃない? 君はそれを作らない様にするみたいだし)


 作る事ができるとでも?


(できるでしょ? 少なくとも動物には近しい感情を抱けるんだから)


 性愛の類じゃないぞ。あれは。


(人の好き嫌いを全て性愛扱いするんじゃないわ)


「ねぇ、ちゃんと言葉にして欲しいな」


 怖い。


 既に自分の中に居られるならともかく。

 現在進行形で見られ続けているならともかく。

 壊れた感情を晒すのが怖い。


(そうやって怖がって逃げて。いつになったら人になるの?)


 知らない。人にならなくてもいい。

 なったところで友達など出来るわけがない。

 きっと寂しい思いをするだけだろう。

 余計な感情を持て余すだけだ。


(ま、いいけど。君の人生だし)


 あぁもう。すごい嫌だ。


 というかぶっちゃけ何を話したらいいかわからないのだわ。


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― 新着の感想 ―
[一言] リク君の嫉妬の視線が突き刺さる( ˘ω˘ )
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