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311、変な道を進もう

「もうすぐそこですね、お嬢様」


 おじさんのおふざけレベルが上がっている。

 ストレス値が上がる程、冗談が増えるタイプなのかもしれない。

 進む先に見える遊牧民の様な白いテント。あれが目的地なのだろうか?


 転生者のところで文明レベルが下がっていくのがちょっと面白い。

 下手にモノを渡せないし、施設の提供はしにくいのだろう。

 何より転生者の生産物を観察するのに、自分達の生産物が邪魔か。


 しかしこのおじさんは転生者の居住地に入れるというのが不思議だ。

 見つからないルートとかを確立しているのかもしれない。

 今通っているルートは監視カメラで見られる範囲の隙間なのだろうか?


「あれかしら?」


 いや、まとっている衣服が特徴的なのかもしれない。

 肉眼では普通の衣服に見えるけれど、カメラを通すと見えなくなるみたいな。

 緑の衣服を着て、天気予報を行うと、身体に天気が表示されてしまうTVみたいなネタかな?


 魔法的にそれと同じ現象が起きているのかもしれない。

 もしくは監視担当がこの犯罪組織の仲間で見逃されているとか。

 可能性だけならいくらでも出てくるな。


 隠し通路がけっこうちゃんと隠されているところからして、大手を振って練り歩く様な存在とはなってないのが分かるのだけ、儲けものだろうか?

 いざという時はあの通路に飛び込んで……あの通路から駅に戻れるのだろうか?

 通路に特徴とかはないし、通行手形か何かないと開かない扉を考えると微妙な気がする。


「あそこはカモフラージュでこっちですよ、お嬢様」


 おじさんの向かう先には草陰にそこそこ大きい穴が開いていた。

 匍匐前進すれば大人でも入れるだろうサイズの穴だった。

 人質を持ち上げていては入れない穴でもある。悩ましい。


 虎穴に入らずんば虎子を得ずとは言う。

 しかし虎児を得るがために、情報源になるこの男を捨てるのはアレだ。

 この人質おじさんを先行させればいいか。入るかな?


 胡散臭い方のおじさんは手招きした後、自分から穴に入っていった。

 人質おじさんの顔を穴に突っ込みながら降ろし、手で先へと進ませてみる。

 グボグハと変な声を出しているが、まぁ、気にしないでおこう。


 持ち上げ続けていた腕がなんか疲れた気がするので肩を回してみた。

 まぁ、分かり切っていたが、クルクルと軽く回る。本当に疲れていない。

 テントは皮で出来ていて、中は見えないが、物音もしないので、人はいなさそうだ。


 覗く?


 YES

 NO ←


 覗いていたら取り残される確率が高い。既に人質Aの足が消えかけている。

 今の俺のサイズでも屈んで入るのはちょっと難しい高さ40センチ。

 そんなに速くは動けない空間だ。いや、クロールする要領で動けばこの身体ならいけるか?


 物理的に動きを封じられている状態だと中に押し入ろうとする方が不利か。

 中から槍とかを突き出されれば、この身体じゃない場合、躱すこともできないだろう。

 外から制圧するなら、上から高火力で洞窟ごと埋めるべきか?

 いや、どこに抜け穴があるか分からない。どのくらいの広さかも分からない。

 取りこぼしが出るのは間違いないか。


 煙で燻したり、毒ガスでどうにかするみたいなのも対策はけっこうあるだろう。

 例えば通路を一部水没させるとかね。空気穴は竹筒とかを使えばいけるのだろうか?

 穴の形状的にアリの巣穴とかを想像する。アリの魔物の巣穴の流用かもしれない。


 アリの巣穴に近い場合、水没作戦とかも難しいだろう。

 幼少期にアリの巣穴にホースで水入れた子は割りかしいると思う。

 それでアリが壊滅したか? いやしなかっただろう。奴らの巣は水はけがいいから。

 熱湯をかければそこそこのダメージを与えられたが、根絶は難しかった。

 地下の巣穴というのはけっこう対策が難しいのだ。


 もしこの足を見失った場合、俺は人質を得る事も出来ず、成果0になる。

 あ、先に人質を行かせたのはちょっと失敗だったかもしれない。おじさんが見えない。

 でも人質を後ろにおいたら逃げられるに決まっている。

 おじさんは逃げ足が早そうだから、万一おじさんに逃げられた時のために、人質Aは手元に置いておきたい。

 適当な穴に潜まれて、人質Aに俺を先導させたら、適当な場所に誘導させて、いい感じにするとか考えられる。


 いい感じって具体的にどういい感じにするのだろう?

 適当なところで穴に落として閉じ込めるとかだろうか?

 それをされたところで、この身体なら人質Aを捕まえるのは容易いな。

 適当に重力に逆らう方向へ穴を掘れば脱出自体は容易そうだ。

 余計な事を考えている間にもさっさと追わねば。


 人が這いずり回る関係か、小さな石も全て端に押しやられている。

 この穴は細かな砂しか手の当たる部分には残っていない。

 そこから考えると普段からよく使われている場所なのがわかる。


 天井も尖った石や大きな根っこなども見当たらない。

 背中で削られたというよりも、石は抜いて捨てて、粘土で叩いて横に流したというべきか。

 地味に細やかな気遣いが感じられる。手をついても土がくっつかないのもポイント高い。


 けっこうな期間使われている通路なのだろう。

 ここって作ってどれくらいの期間が経っているのか?

 初期の予想だとそこまで期間は経っていないと思ったんだが。


 いや、アリの魔物の巣を流用としているとしたら、転生者達は新参者の可能性があるか。

 通路が整えられているのはタマゴや幼虫を傷つけずに運ぶためかもしれない。

 日数もアリの魔物が居住していた期間を含んでいると思えば分かる。


 体に砂がつかないのはアリの魔物が体液でトンネルを補強したからと言えば説明がつく。

 穴の大きさを考えると体高が数十センチある大きなアリの魔物か。なんでいなくなったのだろう?

 安全を確保できなくなったから? 女王蟻が死んでこの巣から撤退したから?


 人間が退治するにはアリの地の理が良すぎる。この体勢で巨大なアリを相手に勝てると思えない。

 巣の状態がきれいなのも戦闘があったと思えない一因か。腐食した箇所とかも見当たらない。

 何かしらのトラブルがアリ側にあって、もぬけの殻になったそれを人間側が流用始めたというところだろうか?


 入り口からの光がなくなり、真っ暗になっていったので、前方の布が擦れる音を頼りに追いかける。

 これはどこまで進むのだろうか? というか暗いのに、何故迷いなく進めるのか。

 先頭のおじさんは光源を持っているのかもしれない。いや、でも地図がないと迷うよな。


 たまに横に脇道とかあるし、暗闇で何故迷わずに進めるかが分からない。

 いや、迷っている可能性とかは地味にあったりするのだろうか?

 その場合、俺はともかく、前2人は餓死するんじゃないだろうか?

 そんなアホな事はないか。そんなバカな事をするくらいなら、もっと早くボロを出している。


 視界の端に光が見えた。蛍光色。何だろう? キノコ?

 このキノコわざわざ生やしたのかな? どこで見つけたのだろう?

 いや、アリが運んできていたのかもしれない。農業するアリがいるとか聞いた事があるし。

 ハキリアリだっけ? キノコを育てるの。抗生物質まで使って細菌を駆除するんだったか。

 それを考えたら魔物のアリがそういう生態を持っていたとしてもおかしくないと思う。


 ハキリアリの農業は木の葉と自分達の糞尿を利用するモノだったっけ?

 人間がそれを工夫なく維持できるとは到底思えない。

 肥料の与え方とか水加減など、その加減をどうやって把握する?

 このトンネルの広い範囲で維持するのはムリだろ。手がどれだけあっても足りないわ。


「痛っ!」


 目的地に到達したのだろうか? 前を行くおじさんに手をぶつけてしまった。

 なお叫んだのはおじさんである。馬鹿力が足の裏にかかったのだ。

 前進のための力程度しかかかってなかったので、おじさんの骨はたぶん折れてない。


 きっとね。


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